1. 女性弁護士の法律コラム

女性弁護士の法律コラム

講演「離婚について」

 
(女性弁護士の法律コラム NO.235)
 
昨日、京都市ひとり親家庭支援センターで「離婚について」というタイトルで、お話してきました。
これまで、毎年、この時期に講演に行かせていただき、今回が3度目になります。
 
参加対象は、京都市在住のひとり親家庭の親となっていますが、現在、まだ離婚はしておらず、離婚を考えている人も参加は可能です。
 
離婚についての基礎的な知識などを、私が担当した事件の経験も織り交ぜてお話ししました。
2016年人口動態統計によると、2015年の離婚数は21万7000組で、これは2分25秒に1組の夫婦が離婚していることになります。
また、最近は、子どもの面会交流を求める調停が増加しており、これは、少子化や父親も育児に関わる機会が増えていることが背景にあると思われます。
 
終了後は、あらかじめ申込みをされた方の法律相談を行いました。
離婚を考えた時には、事前に正確な知識を得ておいた方が良いですね。
 
お気軽にご相談ください。
 
 
 

 
(女性弁護士の法律コラム NO.234)
 
今日から年賀はがきの受付が始まった。
今朝の京都新聞で、「お年玉付きくじ」付きはがきを国に提案したのは、京都の男性であったことを知った。
国は、提案には乗り気でなかったが、男性の熱意が勝って世界初のくじ付きはがきが1949年12月に発行されたという。
国が当初反対した理由の1つは「賭博的で射幸心をあおる」
 
それから67年後の2016年12月14日。
与党自民党や日本維新の党などの賛成多数により、カジノ法案が強行採決され、成立した。
 
カジノは、現行刑法の賭博罪(185・186条)に該当する。
そのカジノを、国が率先して導入したのである。
 
刑法の教科書(大塚仁著)には、賭博罪について「偶然的事情によって財物の獲得を僥倖しようとする行為を内容とする犯罪である」と書かれてある。
そして、「私有財産制度のもとでは、自己の財産を任意に処分することは、本来、各人の自由に委ねられているところであり、・・・別段、罪悪とするにあたらないようでもあるが、一面、これら偶然の事情によって財物の獲得を僥倖しようと争う行為を容認するときは、国民の射幸心を助長し、怠惰浪費の弊風を生じさせ、健康で文化的な社会の基礎をなす勤労の美風をそこなうばかりか、さらに、暴行、脅迫、殺人、傷害、窃盗、強盗、詐欺、横領その他の副次的な犯罪をも誘発し、ひいては、国民経済の機能に重大な支障をきたさせるおそれがある」と指摘されている。
 
競馬や競輪なども「賭博罪」に該当するが、「公設、公営、公益のため」「法令に因る行為」として違法性が阻却されてきた。
ところが、今回は、民営カジノが合法化されてしまうのである。
 
「カジノ」は、人が負けることによって潤うものにほかならず、刑法の教科書に書かれてあるとおり、勤労意欲を低下させ、挙げ句の果てには、犯罪にまで走らせる恐れがある。
 
30年以上も弁護士業をしていると、仕事柄、ギャンブルで人生を狂わせた人をたくさん見て来た。
破産申請をしても、免責(=借金支払が免除されること)決定が受けられないかも知れないことを悲観して、自殺した人。
競馬にはまって借金が増え、その借金を返そうとまた更に馬券を買う・・・そしてついには、会社の金にまで手を出して横領罪で処罰を受け、刑務所に入った人。
親がギャンブルに手をつけて負債を抱え、子どもと親子断絶してしまった人。
 
人は、強い意志を持つ人ばかりではない。
たとえ意思が弱い人でも、夢のある健全な人生を送ることができる社会にするのが、国の役目ではないだろうか。
 
もう、こんな政治は、ヤメにしよう。
 
 
 
 

自衛官の母、南スーダンへの派遣差し止め提訴

 
(女性弁護士の法律コラム NO.233)
 
自衛官の息子を持つ北海道千歳市の50代の母親が、自衛隊の南スーダンPKOへの派遣は憲法違反として、国に対し、派遣差し止めと撤退などを求めて、札幌地裁に提訴しました(2016年12月1日付け赤旗)。
 
南スーダンPKO派遣問題で、自衛隊員の家族が訴訟を起こしたのは初めてです。
 
安倍政権が新たに付与した「駆け付け警護」の任務は、12月12日から実施可能とされています。
原告である母親は、今回の派遣は、本来任務である「国土の防衛」から逸脱しており、一母親の立場から疑義を唱えるべく行動を起こすことにしたと提訴の理由を語っています。
「普通の母親なら自分の息子が危ない状況に立たされた時、だれもが持つであろう気持ち、その1点で行動しています」と。
 
稲田大臣のたった7時間の南スーダン滞在で、どうして「安定している」などと言えるのでしょうか。
11月に青森から自衛隊が南スーダンに出発して以降も、次々と南スーダンの現状の危険性、いつ戦闘となるかわからない状況が報道されています。
自衛隊員が他国の人を殺し、あるいは殺されてしまう危険性は極めて現実的になっています。
 
20万人の自衛隊員の命と家族の悲痛な思いの上に、「駆け付け警護」の新任務などの違憲性を問う重要な意義を持っている裁判です。
 
 

 
(女性弁護士の法律コラム NO.232)
 
2016年7月8日付けの当ブログ「雪山登山の失踪宣告(危難失踪)事件調査の旅(東北そして東京)」で紹介した、東北の雪山に平成27年1月一人で登り、そのまま還らぬ人となったKさんの失踪宣告事件。
原審の家裁が危難失踪を認めなかったので、高裁に抗告していましたが、昨日、危難失踪を認めるという決定が届きました。
 
普通の失踪宣告は、生死が7年間明らかでないとき、請求により家裁が行いますが、この「危難失踪」というのは、戦地に行ったとか、沈没した船の中にいたなどの危難に遭遇した者の生死が危難が去って1年間明らかでないときに行われます(民法30条)。
 
原審の家裁は、雪山に登って還らないことは「危難」にあたらないと判断しました。
 
高裁段階からこの事件を受任しました。
今年7月には、東北まで出かけて、捜索にあたった地元の方の話を伺ったり、同時に、Kさんが行った山にも雨が降る中登りました。
また、Kさんが勤務していた東京の会社関係者にも面談し、お話を伺うことができました。
その甲斐があったというものです。
「早く気持ちの整理をしたい」というご両親の気持ちにも応えられて良かったです。
 
Kさんが亡くなられて来年1月で丸2年が経過します。
来年早々には、再び、地元の方々への報告とお礼もかねてその地を訪れ、Kさんにも裁判の報告とお参りをしに行きたいと思っています。
 
なお、決定の内容などは、また「法律コラム」の方で紹介します。
 
 
 

またか!電通新入社員の過労自殺

 
(女性弁護士の法律コラム NO.231)
 
「また、電通か!」という思いで一杯です。
 
2016年10月7日のニュースで、広告会社大手の「電通」に勤務していた女性新入社員(当時24歳)が昨年12月25日自殺し、それが長時間の過重労働が原因だったとして労働災害が認められたことを知りました。
 
「電通」という会社は、日本でも最大の広告代理店です。
私たち過労死や過労自殺を扱う弁護士にとっては、2000年3月24日に最高裁が言い渡した「電通事件判決」はバイブルのようなすぐれた判決で、過労死事件訴訟では必ずと言ってよいほど、その判決の内容を書面に引用したりします。
 
実は、電通では、1991年にも入社1年5ヶ月の男性社員が長時間労働が原因で自殺しました。
年齢も今回と同じ24歳でした。
遺族が起こした裁判で、最高裁は、従業員の過労自殺に関わる民事上の損害賠償請求について、因果関係を初めて認めたのです。
最終的には、会社が約1億6800万円を払うとの内容で和解が成立したそうです。
 
そして、今回。
報道によると、亡くなった女性社員について労基署が認定した1ヶ月の時間外労働は、約105時間にものぼったそうです。
会社は、2000年の最高裁判決をどのように受け止めていたのでしょうか?
 
命の重みがわからない企業の体質に憤りを禁じ得ません。
 
折しも、同じ7日、厚生労働省は、過労死の実態や防止策の実施状況などを報告する「過労死等防止対策白書」を初めてまとめました。
過労による犠牲者を出さないよう、国はもっと指導監督や法的整備を行うべきです。
 
 

「広義の失業率」は、8.4%

 
(女性弁護士の法律コラム NO.230)
 
「完全失業率」という言葉を聞いたことがあると思います。
ちなみに、1~3月期の完全失業率は、3.2%です。
 
完全失業率とは、「完全失業者数」を「労働力人口×100」で割ったもので、総務省統計局が発表する雇用情勢を示す代表的な指標です。
簡単に言うと、働きたい人(労働力人口)のうち職がなくて働いていない人の割合を示すものです。
「完全失業者数」というのは、
①調査期間中(月末1週間)に就業していなかった
②就業する意欲がある
③調査期間中に就職活動や開業の準備をしていた
という3つの条件を満たしたものと言います。
よって、月末1週間に少しでも仕事をした人などは、それ以外の期間、仕事に就いていなくても完全失業者に含まれません。
また、仕事が見つからないため求職活動を断念した人や、育児や介護のため仕事に就けない人も除かれています。
従って、実際の失業者率は、もっと高い数値になることは明らかです。
 
ところで、先頃、内閣府は、不本意に非正規になっている労働者や求職活動を断念した人を含めた「広義の失業率」を試算した結果を発表しました。
それによると、1~3月期、8.4%にのぼることがわかり、わが国の雇用の実態は、はるかに深刻であることがわかりました。
この試算では、完全失業者に加え、過去1年間に求職活動をしたことがあるものの、適当な仕事がなかったり、出産、育児、介護などのたmねに仕事を続けられそうになかったりして、求職活動をやめた人も失業者に含めています。
さらに、正社員になれず、やむなく非正規の職に就いた労働者も加えて、「広義の失業率」を算出しています。
 
アメリカの失業統計では、「広義の失業率」が発表されています。
わが国も、雇用の実態を十分把握できるような統計を取るべきです。
 
 

 
(女性弁護士の法律コラム NO.229)
 
人が行方不明となり、その生死が7年間明らかでない時は、利害関係人の請求により、家庭裁判所は、失踪宣告をすることができる(民法30条1項)。
失踪宣告されると、その人は死亡したことになって、初めて戸籍に死亡の事実が記載されることになる。
これとは別に、戦地に行ったり、船が沈没したりなどの危難に遭遇した人の生死が、その危難が止んだ後1年間明らかでないときも、失踪宣告をすることができる(民法30条2項)。
これが「危難失踪」である。
 
Aさん(男性)は、平成27年1月に東北の冬山に単独で登ったまま帰らず、現在もその生死が明らかでない。
父親が危難失踪を申し立てたが、家裁は、危難に遭ったとは認められないとして、その請求を認めなかった。
そこで、父親は、不服申立を行い、抗告審からこの事件の依頼を受けて担当することになった。
 
調査のため、先週末から今週初めまで、東北と東京に出かけた。
東北では、実際に捜索にあたった地元の山の会の方々から話を伺うことができた。
Aさんが遭難した山は、私も過去に登ったことがある山だが、夏と冬とは状況が一変することや、この山は笹や木々が密集しているため、雪が溶けると、登山道以外の場所には侵入することもできず、捜索も困難であることなどがわかった。
また、1月に登山する人はほとんどいないとのことで、しかも、Aさんは、冬山についてはほとんど素人と同じくらいの経験しかなかった。
平成27年1月は、何年かぶりの大雪で、そのような雪の中をラッセル(道を造ること)しながら進むことは、かなり体力を消耗したであろうことが推測された。
 
そして、実際に山に登ってみた。
あいにくの梅雨の時期だったため、雨の中を歩くことになった。
晴れていれば、周辺の山々が展望できたのだが、全く視界はなく、途中で引き返したくなる気持ちを抑えて歩き、頂上に達した。
山の会の方々の言葉が実感として感じられた。
 
京都へ戻る途中、東京に立ち寄り、当時、Aさんが働いていた職場の関係者からも事情を聴くことができた。
会社の同僚にも「明日、山に行く」と話していたとのことで、遭難したことは間違いない。
 
家裁段階で、調査官による調査が若干されているが、調査官も裁判官も「山を知らない」としか言いようがない認定であった。
 
結論が覆るよう、頑張りたいと思う。
 
 

南阿蘇復興のために~國弘正樹弁護士~

 
(女性弁護士の法律コラム NO.228)
 
2016年6月14日付け京都新聞朝刊で、懐かしい弁護士の名前を目にした。
京都弁護士会の尾藤廣喜弁護士が京都新聞の連載コラム「暖流」」を執筆されているが、その中で、
「國弘正樹弁護士」
のことを書いておられた。
 
國弘弁護士は、長い間、京都弁護士会に所属されていたが、2000年に、日弁連が弁護士過疎地域に初めて開設した公設事務所「石見ひまわり基金法律事務所」の初代所長として島根県浜田市に移られた。
私が知っているのは、そこまでだった。
 
尾藤弁護士は、コラムの中で、今年5月17日に生活保護裁判の打ち合わせで熊本に訪れて知った、熊本の弁護士たちの被災者支援の奮闘を書かれ、そしてその中に、國弘弁護士のことも書かれていた。
 
國弘弁護士は、現在69歳。
2013年3月に、南阿蘇村の雄大な自然に感動して移住し、弁護士も辞めて悠々自適の生活を送っていたが、今年3月に弁護士再登録。村で唯一の弁護士になった。
そして、直後の震災。
被災者の相談にのりながら、再建に努めているという。
 
尾藤弁護士は、「まさに弁護士『魂』ここにあり」と書かれていた。
 
常に、社会的弱者の側に立って弁護士活動を続けられてきた國弘弁護士の生き方には、頭が下がる思いだ。
こんな弁護士の生き方に私も少しでも近づきたいと思う。
 

「第三者」の調査

 
(女性弁護士の法律コラム NO.227)
 
政治家の使う言葉には、時々、「エッ?」と思ってしまうことがある。
現在、渦中の人である舛添要一東京都知事の政治資金疑惑の中での発言もしかり。
記者会見で、「第三者」という言葉を40回も使ったらしい。
そして、その「第三者」というのは、舛添さんが依頼した元検事出身の弁護士。
彼らは、部分的には「違法ではないが不適切」と言っていたが、舛添さんに対する都民の不信感はぬぐえていない。
 
「第三者」というのは、当事者以外の独立した人のことを言う。
離婚相談の際、相談者から、時々「先生が、第三者として、私たち夫婦の間に入ってもらえませんか?」と言われることがある。
でも、私たち弁護士がその相談者から依頼を受ければ、その依頼者の代理人であって、第三者ではない。
「あくまで、あなたの代理人なんですよ」と申し上げる。
第三者に入ってほしければ、家裁の調停に申し立てるのが専門的な知識もあるので良いと思う。
 
さて、冒頭の舛添さんが依頼した「第三者」の弁護士。
舛添さんが金を払って頼んだ弁護士。舛添さんと十分「打合せ」をして記者会見しているんだもの、これは、誰がどう考えても「第三者」じゃないよね。
「第三者」という言葉の使い方が明らかに誤っている。
 
ちなみに、日本弁護士連合会は、2010年7月に「企業等の不祥事における第三者ガイドライン」を発表し、法人などの「内部調査委員会」と区別している。
※興味がある方は、公表されているので、検索してみてください。
 
 

リニアモーターカーは悪夢の乗り物

 
(女性弁護士の法律コラム NO.226)
 
JR東海が2027年開業をめざし一部で着工しているリニア新幹線事業に対し、5月20日、700人を超える原告が国に対し事業の認可取り消しを求める裁判を東京地裁に起こしました。
 
リニアモーターカーは、未来の夢のような乗り物・・・・
マスコミなどは、そのように報道していますが、知れば知るほど問題だらけで、まるで悪夢のような乗り物です。
 
リニアは、2027年に東京ー名古屋間の開通を目指し、その後、2045年には大阪まで延ばす予定です。
東京ー名古屋間のルートは約286㎞ですが、その86%、約246㎞は地下トンネルです。
 
まず、環境問題。
沿線の住民の不安や疑問はもとより、環境省も「環境影響は枚挙にいとまがない」と見直しを求める意見書を出しています。
東京から名古屋まで直線的なルートにするために、ほとんどの部分を地下トンネルにしています。
そのため、南アルプスの美しい山々に何十㎞もの穴が開けられることになります。
また地下トンネルを貫く工事によって大量発生する残土の処分先が決まっていません。
災害発生を拡大させる危険を警告する研究者も少なくありません。
 
深刻なのは、地震への対応をはじめとするリニア運行の安全性です。
リニアの走行ルートは、東海地震の地震対策防災強化地域内です。
多数の断層を横切っています。
時速500㎞という超高速走行中に、大地震が起これば、そのまま大事故に直結します。
仮に「安全停止」しても、1000人もの乗客をどう地上まで避難させるのでしょうか。
リニアは基本的には完全自動運転です。職員はほとんど乗っていません。
しかも非常口はおおよそ5㎞おきにしか設置されないようです。
どうやって地表にまで出るのでしょうか。
それに地下トンネルは密閉性が高く、煙や有毒ガスが発生した場合、乗客の声明が危険にさられます。
 
このほかにも多くの問題点を抱えています。
ところが、このようなリニアに9兆円もの巨費が投じられます。
リニア計画は、是非とも止めなければなりません。
 
 
 
 
 
 
 
 
 

自衛隊は兵士である前に市民です

 
(女性弁護士の法律コラム NO.225)
 
GW前の4月28日夜、「自衛官の人権弁護団・北海道」の佐藤博文弁護士の講演を聴いた。
 
安全保障関連法が今年3月29日から施行された。
集団的自衛権の行使が可能となり、自衛官の武器の使用が大幅に認められるようになるなど、自衛隊の活動の範囲や質はともに大きく変容した。
自衛隊員は海外で殺し、殺されるかもしれない。
そうした厳しい状況に置かれるのに、自衛隊員の人権や労働環境に関する議論が置き去りにされている。
 
北海道で、自衛隊員に関連する法律相談や訴訟を多数手がけている佐藤弁護士らは、全国でいち早く「自衛官の人権弁護団」を立ち上げ、自衛隊員や家族のための電話相談や元自衛官を招いた勉強会などを行っている。
 
佐藤弁護士は、私たちが知らない自衛隊の世界を生々しく語ってくれた。
自衛隊内のセクハラやパワハラ、退職強要、自殺。逆に、「辞めたい」と言っても辞めさせてもらえない、等々。
 
しかし、自衛隊員も、日本国憲法で人権が保障されている主権者である。
ドイツでは、「兵士である前に市民」という考え方があり、違法な命令や人間の尊厳を侵すような命令には従わなくていいとされている。また、労働組合のような組織があり、監視のため議会直属のオンブズマン制度もある。
また、アメリカには、戦死遺族の補償や帰還兵の治療支援に当たる体液軍人省があり、日本の防衛予算を上回る膨大な予算が付いている。
 
現役の自衛官が自ら声を上げることは難しい。
家族からの声を少しでもすくい上げることが求められている。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

 
(女性弁護士の法律コラム NO.224)
 
「不安がなくなるから死んでしまいたい」「長寿は罪」・・・
 
65歳以上の高齢者が3000万人を突破し、今もどんどん増え続けている日本社会。
「老後破産」「下流老人」「無縁社会」などの言葉が定着し、高齢者の貧困や孤立が大きな社会問題になっている。
長生きすることが罪・・・いつから日本はそんな国になってしまったのだろう。
 
今日は、NHKスペシャル「老人漂流社会」シリーズの担当プロデューサー板垣淑子さんの講演を聴きに行った。
成年後見センター・リーガルサポート京都主催で、専門職や福祉関係者対象の公開講座で、京都弁護士会にも案内が来たので、申し込んだ。
4月17日にNHKで同番組「老後破産」の衝撃的な映像を観ていただけに、今日の講演は是非とも聴きたかった。
板垣さんは、2010年「無縁社会」から始まり、2012年に「老人漂流社会」とタイトルを変えたNHKスペシャルの担当チーフプロデューサー。
 
板垣さんは、現在の日本社会で現実に起こっている、高齢者の非常に厳しい現状を映像を交えながら生々しく語られた。
 
月10万円の年金だけで、電気も止められ、素麺だけを食べて生活する一人暮らしの高齢男性。
行政の支援を拒否する、一人暮らしの認知症の高齢女性。
40代の息子が失職して一緒に住むようになったため、生活保護が廃止になってしまった高齢男性。
 
どれも現実の姿だ。
 
板垣さんが語った高齢者の現状は本当に悲惨なもので、高齢者が置かれているそのような生々しい現実の姿を伝えることは、すごく意義がある。
 
じゃあ、どうするのか?何ができるのか?
 
生活保護制度が権利であることを徹底することや、同制度の正当な運用の仕方で、少しの人は今より改善するかもしれない。
でも、それでも救われない人は少なくない。
 
その対策として、板垣さんが言われたのは、手元に生活費を一定額残すようにするというような制度間調整だけであり、彼女の本音は別として、やはりNHKの限界というものを感じた。
 
社会保障費が全く不十分なのだから、小手先の調整では、今後の超高齢化社会に対応できるはずがない。
 
アメリカの「フォーブス」誌の「日本長者番付2016」によると、日本の富裕層上位のたった50人が保有する資産の合計は、実に16兆4000億円にも上る。
政治を転換し、このような富裕層・大企業にメスを入れない限り、本当の問題解決、超高齢化社会への対応にはならないと思った。
 
 
 
 
 
 
 

 
(女性弁護士の法律コラム NO.223)
 
最近、あっちこっちで不倫が取り沙汰されている。
週刊文春に続き、本日3月24日発売の週刊新潮が、「『乙武クン』5人との不倫」と題して作家乙武洋匡氏の不倫の記事を掲載している。
 
不倫した芸能人らが、マスコミに対し、記者会見を開いて謝罪するのは、とても違和感を覚える。
貞操義務はあくまで夫婦の間の問題であり、マスコミが面白おかしく取り上げて騒いでいるだけで、世間に対し、謝罪する必要なんてない。
だから、乙武氏がホームページで早々に謝罪したことは、いくら有名人であっても変。
(ただ、記憶に新しい、宮崎元自民党国会議員の場合は、国民の代表である国会議員であり、育休宣言の裏に不倫があったり国会中にラブラブメールをしたりとか、これはダメね。謝罪は当然。彼が辞任したことによる補欠選挙に、2億円とか3億円とかかかるというから、明らかに税金の無駄遣い。)
 
ところが、それ以上に、今回の乙武氏の場合、本人の謝罪だけでなく、妻も謝罪のコメントを出している。
これは、きわめて異例。
 
「多くのみなさまにご迷惑をおかけしたことをお詫び致します」
「このような事態を招いたことについては、妻である私にも責任の一端があると感じております」
 
なんで、妻が謝るの?
妻の責任って? 夫に対する監督不行き届き?
妻は被害者じゃないの。
法律の上では、妻に責任はありませんよ。
 
乙武氏は、今夏の参議院東京選挙区に自民党の「目玉候補」として出馬予定と言われていた。
なんか、夫婦そろっての謝罪は、「自民党さん、ゴメンナサイ」と言ってるように聞こえてならない。
それとも国民向けの選挙対策?
こんなことがあっても彼は出馬するんでしょうか。
「国民の代表」としての政治家ではなく、別な道で頑張ってください。
 
 
 
 

待機児童問題

 
(女性弁護士の法律コラム NO.222)
 
「保育園落ちた 日本死ね」
子どもが保育園に入れず、国に不満をぶつけるインターネットの匿名ブログが大きな反響を呼んでいる。
 
待機児童問題が深刻であることは、私たち弁護士も身近に感じている。
夫と別居し離婚協議中の妻が、なかなか復職できないケースがある。
 
単に別居中で離婚協議しているというだけでは、なかなか保育所入所の優先順位は上がらない。
 
家裁に離婚調停が係属していることの証明書を発行してもらった。
 
それでもダメ。
 
その後、調停離婚が成立。
やっと、4月からの入園が決まり、彼女の復職も決まった。
 
共働きの普通の夫婦なら、もっと入園順位は低くなるはず。
 
大切なのは、待機児童問題は、女だけの問題じゃないってこと。
男性ももっともっと声を上げて!「保育園に落ちたのは、私だ」と。
 

 
(女性弁護士の法律コラム NO.221)
 
福島原発事故が発生して5年目となる2016年3月11日の直前の3月9日、大津地裁は、再稼働中の福井県高浜原発3・4号機の運転差し止めを命じる仮処分決定を下した。
 
翌日以降、新聞各紙が決定内容を詳細に報じているので、決定内容の紹介はしないが、とりわけ決定の中で「発電の効率性でもって、甚大な災禍と引き換えにすべきとは言い難い」と論じられているところが、すべての出発だと私は思う。
 
福島では、未だにふるさとに帰れず、否、ふるさとを失った被災者が多数存在する。
電気料金や地元経済という経済効率などと比べものにならないほどの多くのものを福島では失ってしまったのである。
 
「福島原発事故の原因究明は・・・津波を主な原因として特定できたのかも不明だ」
「災害が起こるたびに『想定を超える』災害だったと繰り返されてきた過ち」
「事故発生時の責任を誰が負うか明瞭にし・・・避難計画を含んだ安全確保対策にも意を払う必要がある」
 
この裁判の弁護団長である元裁判官井戸謙一弁護士は、「裁判所は被災者に希望を持って震災5年を迎えてほしいと信じたい」と語る(2016年3月12日付け京都新聞朝刊)。
 
この決定を書いた山本善彦裁判長は、直接、会ったことはないが、私の大学の後輩だと思う。
井戸弁護士は「裁判官の世界で無難に生きようとすれば却下しただろう。それがこれまでの体制だった。山本裁判長は正しいと思う決定を出し、批判も含め反響も折り込み済みだろう。」と続ける。
 
福島原発事故を経ても、なおも、「原発を再稼働する方針に変わりはない」と発言する政府。
原発事故後も再稼働を容認する裁判官もいる中で、勇気ある決定に大きな敬意を表したい。
 
 
 
 
 
 
 
 
 

 
(女性弁護士の法律コラム NO.220)
 
2016年3月5日、日本弁護士連合会主催で、シンポジュウム「公平な離婚給付を考える」が開催され、参加しました。
場所は、東京の日弁連会館。
とは言っても、東京まで出かけたわけではありません。
最近は、便利なもので、インターネットを通じたテレビ中継により、京都にいながら、東京のシンポジュウムを視聴することができます。
私は、京都弁護士会会館で、シンポジュウムのテレビ中継を観ました。
 
今回のシンポジュウムは、現在の実務における離婚に伴う財産分与が、本当に夫と妻との間の「公平を確保する」という要請に応えられているであろうか、という問題提起でした。
 
確かに、現在の実務での財産分与は、たとえ妻が専業主婦であっても、名義のいかんを問わず、婚姻中に形成され残っている財産について、原則2分の1での分配が認めらています。
 
しかし、例えば、夫の転勤などの理由により、やむなく妻が仕事を辞めたような場合、夫のキャリアは離婚後も継続しますが、妻の方の再就職はママなりません。
また、例えば、夫が自分の収入を自由に浪費し、他方妻が懸命にやりくりして貯蓄を作った場合、それも半分は夫に分与しなければならないのか、など、現実に離婚事件に関わっていると、単純に2分の1にするのでは納得できないケースも少なくありません。
 
今回のシンポジュウムでは、犬伏由子慶応義塾大学法学部教授による諸外国の財産分与制度に関する講演も交えながら「現実の財産分与は公平か」という問題提起がなされ、わが国の判例や学説の紹介などもありました。
 
実務の壁を破ることはなかなか簡単ではありせんが、今後、離婚事件において「公平な財産分与」という視点をもっと追及していこうと思いました。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

 
(女性弁護士の法律コラム NO.219)
 
今日は、京都市ひとり親家庭支援センターで「離婚について」というタイトルで、お話をしてきました。
対象は、京都市在住のひとり親家庭の親のようですが、現在、離婚を考えている方も参加されていました。
主催者からは「離婚の手続きや法律についての話をしてください」とのリクエストでしたが、一般的な説明以外に、統計数字や、私がこれまでの弁護士経験の中で感じたことなどを織り交ぜてお話しました。
 
2015年の離婚の推計値は22万5000組で、これは、2分20秒に1組の夫婦が離婚していることになります。
離婚って、全然珍しいことではないんですよね。
 
参加者の方と話をする中で、やはり、離婚を考えた時、離婚する前に、専門家に相談して、色々な知識を得ておいた方が良いと思いました。
 
どうぞ、お気軽にご相談ください。

男女雇用機会均等法施行30年

 
(女性弁護士の法律コラム NO.218)
 
男女雇用機会均等法が施行されたのが、1986年4月。
今年4月で、丸30年となる。
私が弁護士になった頃、雇用における男女平等を定める法律はなく、真の男女雇用平等法を作ろうと、女性労働者たちは全国で様々な運動を展開していた。
私も新米の女性弁護士として、それらの運動に関わり、講演なども多数行った。
 
しかし、その後1985年に成立した均等法は、採用などが努力義務となるなど、不十分な内容だった。
それでも、日本で初めて、雇用における男女平等を定めた法律ができたことは、女性運動の大きな成果だったし、成立後も、様々な分野で、均等法を活用した女性たちの闘いが展開されてきた。
 
そして均等法施行から30年。
日本の男女平等は進んだのだろうか。
 
2016年1月24日付け京都新聞朝刊の1面トップは、「女性総合職1期8割退社」という見出しだった。
均等法が施行された1986年に大手企業に入社した女性総合職のうち、昨年10月時点で約80%が退職していたという報道だった。
共同通信のアンケートによって、企業の基幹業務を担う幹部候補生である総合職となった大卒女性1期生たちが、長時間労働、育児と仕事の両立支援の遅れなどにより、現在50代前半で、多くが仕事から、当初の仕事から離れている現実が明らかとなった。
 
確かに、30年前とは職場の状況は大きく変化したと思う。
公務員はもとより、私たちに身近な法律事務所などの民間の職場でも、育児休暇などを取得する労働者も増えていることは事実だ。
しかし、均等法1期生の女性たちの8割もが職場から離れている現実は、30年経っても、雇用における男女平等が実は遅々として進んでいない現状を物語っているのではないだろうか。
そして均等法施行10年目や20年目の女性たちは、今、どうしているだろうか。
 
国は、女性の活躍推進を目玉政策として打ち出している。
単にかけ声だけでなく、均等法施行30年を機に、職場の実態を把握し、女性が本当に活躍できる制度や条件を作ってほしいと思う。
 
 
 
 
 

マイナンバー制度の問題点について

 
(女性弁護士の法律コラム NO.217)
 
昨年12月、私が所属している弁護士グループの主催で、「マイナンバー制度の問題点」の勉強会が開催されましたので、参加しました。
 
講師は、日本弁護士連合会情報問題委員会委員長の坂本団弁護士(大阪弁護士会所属)。
坂本弁護士は、マイナンバー制度の問題点を非常にわかりやすく解説され、勉強になりました。
 

 
マイナンバー法の正式名称は、「行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律」。
マイナンバーというのは、あくまで行政機関における事務を効率化するための制度で、民間の事業者や個人がそのために「お手伝い」をするという制度なんです。
ですから、現時点では、国民にはほとんどメリットはありません。
 
制度が始まる以前から、マイナンバーの流出事故が報道されていますが、番号や個人情報の不正利用や改ざんなどにより、本人に「なりすまし」て財産その他の被害を負うおそれも指摘されています。
アメリカでは、深刻ななりすまし被害が増大し、2006~2008年の3年間で1170万人、損害額が毎年約5兆円と報告されています。
もし、今後、マイナンバーの利用範囲が拡大されれば、逆に、不正利用の危険性も高まると言えるでしょう。
 
また、マイナンバー法は、定められた目的以外で、個人番号を他人に提供したり、他人の番号を収集したりすることを禁止しています。
ですから、例えば、いくら自分の番号だからと言って、ブログやtwitterなどに番号を掲載することはできません。
また、客が身分証明書代わりに個人カードを店舗に提示しても、店が個人カードの裏面をコピーしたり、番号を書き取ったりすることは許されません。
(2016年1月8日付け京都新聞夕刊)。
 
国は、個人番号カードの普及に全力をあげていますが、悪用された時のリスクを考えると、取得するか否かは慎重に判断した方が良いと思います。
 
 
 
 
 
 
 

 
(女性弁護士の法律コラム NO.216)
 
当時、厚生労働省事務次官であった村木厚子さんが最高検察庁によって逮捕されたのは2010年9月。
その後、大阪地検特捜部の前田恒彦検事(当時)が証拠のフロッピーを改ざんしたことが明るみとなり、村木さんは無罪となった。
他方、前田氏は、その後、実刑判決を受け、受刑者となった。
 
2014年5月、京都弁護士会は、前田元検事を招き、全面証拠開示・全面可視化のシンポジュウムを開催した。
前田氏服役後、初めての講演だった。
彼が語る捜査の実態は生々しくリアルで、被疑者・被告人にとって有利な記述の削除や不利な供述だけを調書にする方法が実際に行われていると語った。
 
そして、前田氏は、今年1月5日までに、共同通信の取材に応じた(2016年1月6日付け京都新聞朝刊)。
証拠改ざんについては「最低でも官僚の立件」という誤った方針が先にあって罪を犯したこと、証拠は「検察のもの」として不利なものは隠すという歴史の末に改ざん事件があるなどと回想した。
「独善的な正義感に酔いしれていた」と当時を振り返るとともに、全事件での取り調べの録音・録画(可視化)の義務づけや被告人・弁護側に全証拠開示する必要性を強調した。
 
前田氏の事件以後も、検事が取調室で被疑者にカッターナイフを示したり、自白と引き換えに便宜を持ちかけたりする問題が表面化し、検察庁の体質は変わっていないのではないかと思わざるを得ない。
 
前田氏には、様々な所から「圧力」があるようだが、それらに屈せず、どんどん発言し、検察機構を改革する力となってほしいと思う。
 
 

月別アーカイブ

弁護士紹介TOP