先週の朝ドラ「虎に翼」は、交際相手の星航一からプロポーズされた寅子(ともこ)が、結婚してどちらの姓にするか悩み、最終的に、航一は事実婚を提案するというストーリーであった。
ドラマは約70年前を描いているが、いまだに夫婦別姓選択制度のない日本において、これは、まさに今、現実に突きつけられている問題にほかならない。
法相の諮問機関である法制審議会は、既に1996年に夫婦別姓選択制度を導入した民法改正要綱案を政府に答申しているが、その後約30年経った今も、「家族の一体性」などを掲げる一部自民党国会議員の根強い反対により、法案が国会にも上程されず、夫婦別姓選択制度は実現していない。
現行民法(750条)は、夫婦は、夫か妻のどちらかの姓を名乗るとしている。
一見平等であるかのように見えるが、法律婚をするなら、どちらか一方が必ず姓を変更しなければならず、現実には、95%の夫婦が夫の姓を選択し、妻は姓を失っている。仮に、夫が妻の姓を選択したとしても、やはり夫は自分のそれまでの姓を失うのである。
ドラマで、寅子が「私が折れれば」と言ったことに対し、航一は「それでは君の僕への愛情を利用した搾取になってしまう」と答えたことはとても的を得た名セリフであり、こんな男性いるんかなあと思ってしまった。
史実においては、寅子のモデルの和田嘉子さんは、三淵乾太郎さんと法律上再婚し「三淵」姓を選択したものの、やはりそこには葛藤があったもののと推察される。ちなみに、嘉子さんの一人息子(ドラマでは娘だが)は、和田姓のままであった。
折しも、2024年6月経団連は政府に対し、選択的夫婦別姓制度の導入を初めて提言した。
朝ドラの1947年の民法改正案を巡る審議会の場面で、夫婦が妻の姓を名乗れる改正案に反対した教授に対し、寅子は「息子さんが結婚して妻の氏を名乗ることにされたら、息子さんへの愛情は消えるのですか?」と追及したように、夫婦別姓を選択したとしても、そのことで親と子の家族の愛情に変わることなどあるはずもない。
この機に是非とも、夫婦別姓選択制を実現したいものである。