1. 女性弁護士の法律コラム

女性弁護士の法律コラム

石破首相の最速解散により、来週の日曜日2024年10月27日が衆議院選挙投票日となりました。

この衆院選と同じ時に行われるのが、最高裁判所裁判官の国民審査です。

これは、憲法79条に定められている、憲法上の制度です。主権者である国民が、最高裁の裁判官が「憲法の番人」としてふさわしいか否かを審判する大切な審査です。

 

ところが、この国民審査は、長い間、海外に住む日本人は行うことができませんでした。18歳以上の在外邦人は100万人を超えるそうです。

2024年10月21日付け朝日新聞「天声人語」に紹介されていました。

セットで行われる衆院選については、2000年から、海外で暮らす有権者も投票できるようになりました。ところが、国民審査は対象外でした。在外邦人が裁判を起こすと、被告である国は、国民審査は、民主主義を育んでいくうえで、「不可欠の制度とは言えない」と主張しました。

憲法上の制度であるにもかかわらず・・です。

 

最高裁は、国の主張を退け、2022年5月25日、違憲判決を下しました。それで、今回初めて、海外の日本人も国民審査を行うことができるようになりました。

 

ところがです。

朝日新聞によると、投票の済んだ用紙を日本まで持ち帰る必要があるという理由で、ほとんどの在外公館は先週末で衆院選と国民審査の投票を打ち切ったそうです。各地での平均投票期間は4.29日。

短すぎます。開票方法は色々方策がありそうなのに・・・ここにも、おそまつな政治がありました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

児童手当の拡充~2024年10月から

児童を養育する子育て世代にとって、児童手当の支給は、家計にとって少なからぬ支援となっていると思われます。

この児童手当が、10月から、以下のとおり大幅に拡充されます(支給は12月から)。

 

①所得制限を撤廃

 これまで主たる生計者が一定額以上の年収の場合には受給に制限がありましたが、今後は所得にかかわらず全額支給されます。

②支給期間を延長

 これまでは中学生以下が支給対象でしたが、今後は高校生年代(18歳の誕生日以後の最初の3月31日まで)も支給対象となります。

③第3子以降の支給額の増額

 第3子以降は、年齢にかかわらず3万円に増額されます。

④支払回数を増加

 これまでの4ヶ月分ずつ年3回から、2ヶ月分ずつ偶数月年6回の支給に変更されます。

 

ただ、注意しなければならないのは、お住まいの自治体に申請が必要な人もいます。

①これまで所得制限の対象で支給がなかった人

②高校生年代の子のみを養育している人

③大学生年代の子どもを含めた3人以上の子どもがいる人

申請は2025年3月31日までに行う必要があります。

詳しくは「こども家庭庁 児童手当」及びお住まいの市区町村のホームページなどをご覧ください。

 

 

 

 

 

家政婦兼介護ヘルパーとして要介護者の家庭で住み込みで働いていた女性(当時68歳)が急死したのは、過重労働が原因として、東京高裁は、2024年9月19日、労災と認めました。

一審の東京地裁は遺族の請求を棄却しており、原告遺族の逆転勝利となりました。

 

実は、労働基準法には、「この法律は、同居の親族のみを使用する事業及び家事使用人については、適用しない」という条文があります(116条2項)。

この「家事使用人」というのは、住み込みの「女中」で家族も同然だから「労働者」ではない、という、なんとも時代錯誤な条文がまだ残っています。

 

本事案では、女性は、東京都内で訪問介護事業と家政婦の紹介あっせんを営む会社に登録。そこから派遣されて、2015年5月に要介護5の高齢女性宅に1週間泊まり込んで家事や介護に従事していましたが、勤務を終えた日に急性心筋梗塞で倒れ、翌日亡くなりました。

 

東京高裁は、家事と介護で、働く場所も労働時間や賃金も明確に分かれておらず、派遣元会社が女性に家事を指示していた実態もあったと認定。女性は、労基法の定める「家事使用人」にはあたらないと判断。女性が介護と家事で1日平均15時間の労働を1週間続け、週の労働時間が105時間に達したことを踏まえ、「短期間の過重業務」にあたるとして労災と認めました。

 

東京高裁は、労働実態を直視した判決でしたが、女性は2015年に亡くなっており、労災認定までに約10年もの年月が経過しています。あまりにも長すぎます。

 

国は、早急に、労基法116条2項の法改正を検討すべきです。

 

 

 

 

 

 

(離婚)離婚とペット

最近では、ペットを飼っている家庭も少なくありません。そんな家庭の夫婦が離婚する場合、ペットについてはどのように考えればよいでしょうか。

 

まず、そのペットがどんなに家族同様に過ごしていたとしても、法律上はあくまで「物」として扱われます。

夫婦のどちらかが独身時代から飼っていた場合には、原則として、独身時代から飼っていた方が引き取ることになります。

結婚後に飼うようになった場合には、財産分与の対象となりますが、離婚時にどちらが引き取るかなど条件が話合いで決まらない場合、裁判所が一切の事情を考慮して決めることになります。

 

離婚時にペットについて紛争になることはあまり多くはありませんが、下記のような裁判例(福岡家裁久留米支部令和2年9月24日判決)がありますので、参考にしてください。

 

夫婦は3頭の犬を飼っていました。夫が自宅を出て別居状態となり、その後は犬は妻(無職)が飼育し、夫は餌代を払っていました。

 

判決は、犬3頭が財産分与の対象となるとし、犬は妻が飼育することを前提として、双方の共有と定め、民法235条1項により持分に応じて飼育費用を負担するのが相当と判断しました。

犬を共有として、飼育されている環境の家賃の一部や餌代の一部の支払いを命じました。

 

 

 

 

 

 

最近、カスタマーハラスメント(カスハラ)による被害が深刻化しているとの報道をよく目にしますが、客から著しい迷惑行為を受けたカスハラなどで精神疾患を発症した男性社員(当時24歳)が2020年8月に自殺した事案で、千葉県柏労働基準監督署は、2023年10月、労災と認定しました(2024年7月23日付け読売新聞朝刊)。

 

この男性は、埼玉県の住宅メーカーに勤務し、注文住宅販売の営業を担当して千葉県内の住宅展示場で働いていました。

男性は、2020年2月、住宅新築中の客に追加費用が必要になったと説明したことをきっかけに、この客から叱責を受けるようになりました。8月には現場監督と一緒に顧客宅を訪問し、謝罪もしていました。

 

労基署は、精神障害の労災認定基準にある「顧客らから対応が困難な注文や要求を受けた」「顧客らから著しい迷惑行為を受けた」にあたると指摘し、強い心理的負荷がかかり、精神疾患を発症したと判断しました。

 

「著しい迷惑行為」(カスタマーハラスメント)については、厚生労働省が2023年9月、カスハラの類型に位置づけ、労災の新たな認定基準に加えています。

 

担当した弁護士は、今回は、男性の携帯電話に残されていた通話の音声記録があって、認定の決め手の1つとなったとのことです。やはり証拠を収集しておくことが重要です。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

2022年12月9日付け当ブログで御紹介した同年11月2日付け東京高裁判決。労災認定につき、事業主が不服申立をすることができるという酷い判決でした。

 

最高裁がどんな判断を下すか心配していましたが、2024年7月4日、事業主は不服申立てはできないという判決が下りました。

 

ホッとしました。

事業主の不服申立の権利が認められれば、一度、労災認定が下されても、確定までに時間がかかる上、後から取り消されるおそれもあって、労働者の早期救済という労災制度の趣旨が不安定になるおそれがありました。

 

最高裁は、労災保険には労働者の早期救済という目的があり、事業主の不服申立てを認めれば、この趣旨が損なわれると指摘しました。

 

国は、上記高裁判決後、労災認定があると保険料増額という不利益を受ける事業主側にも配慮し、2023年1月から、保険料の適否を争う手続の中で、労災認定への不服も主張できるように運用を変更しました。この対応については、最高裁は追認しました。事業主の不服申立てが認められれば保険料引き上げは取り消されますが、労災認定まではさかのぼらず、労働者が給付金を返金する必要はありません。

 

 

 

地方住宅供給公社が借主の合意を得ずに、一方的に家賃を増額できるかどうかが争われた訴訟で、最高裁は、2024年6月24日、公社物件であっても借地借家法が適用され、家賃の増減額について争うことができるという初めての判断をしました。

 

争ったのは、神奈川県住宅供給公社の賃貸住宅に住む住民ら8人。公社が行った家賃値上げについて、「適正賃料を超えている」と主張し、過払い分の返還を求めて2020年に提訴しました。

 

借地借家法は、住宅市場の変動などに応じて、貸主と借主双方が、家賃の増額・減額を争うことができると定めています。

一方、公社法施行規則は「近隣の同種住宅の家賃が上回らないよう定める」としており、神奈川県住宅供給公社は、訴訟で、借主の同意なく家賃を変更できると主張していました。

 

1審横浜地裁・2審東京高裁は、公社の家賃は一般の賃貸借とは異なるとして、借地借家法の適用を認めませんでした。

 

これに対し、最高裁は、施行規則は補完的な基準を示したもので、借地借家法の適用を排除する規定ではないと判断しました。

 

これによって、借主側が家賃の減額を請求することもできますし、公社の値上げに対して争えるようにもなりました。

 

 

 

 

 

2024年3月下旬、元依頼者のFさんから法律相談を受けました。

裁判所から債権差押命令が届き、年金が振り込まれていた銀行の預金口座が差し押さえられたとのことでした。Fさんは命令が届き、驚いて、すぐに事務所に来られました。

Fさんは、78歳の一人暮らしの男性で、無職で持病もあり、年金が唯一の生活の糧でした。

 

債権者は、債務者の公的年金自体を差し押さえることはできませんが、それが一度、債務者の銀行口座に振り込まれると、差し押さえることが可能となります。

 

ただ、民事執行法153条に、こういう場合における救済の規定があります。

差押えによって、一般的な生活水準と比較して債務者の生活に著しい支障が生じる場合(例えば、生活が成り立たなくなるような場合など)に、債務者の申立てにより、差押えの範囲を変更(減縮)するかどうかを裁判所が決定する制度です。

 

そこで、私は、Fさんに上記の申立をすることを勧めました。

申立ての方法は、さほど難しいわけではありませんが、債務者の生活状況などを書面にきちんと書き資料も付けて裁判所に提出しなければなりません。

 

Fさん一人に任せるのは心配だったので、翌日、再度、年金受給証明書や非課税証明書など生活状況がわかる資料を持参の上、事務所に来てもらいました。そして、生活状況などについては、私がFさんから聴き取って文書を作成しました。また、併せて、債権者への支払の一時禁止の申立てもすることにしました。

Fさんは、その足で、京都地方裁判所に申立書と資料を提出しに行きました。

 

申立てがあると、裁判所は、申立書などに不備がないかを審査し、不備がなければ、申立人(債務者)に必要な資料の提出を求めます。そして、次に、相手方(債権者)に反論などの提出を求め、その上で、裁判所は判断をします。

 

その後、時々、Fさんに電話をして状況を尋ねましたが、債権者への支払の一時禁止はすぐに決定されましたが、最終の結論は、なかなか出ませんでした。

 

4月下旬のGW前に、やっと裁判所から決定が届いたそうです。

決定主文は、「債権差押命令を取り消す」というもので、これでFさんの差し押さえられた預金は全部引き出せることになります。

 

しかし、すぐに引き出せるわけではなく、決定が債権者に届いてから不服申立がなく1週間経過すると、やっと決定が確定して、預金が引き出せるようになるのです。

 

GW明けに、Fさんの携帯電話に架電すると、つながらなくなっていました。

「電話代が払えなかったんだろうか」「持病が悪化して入院したんだろうか」などと心配しましたが、その後しばらくして、電話もつながるようになり、聞くと、やはり電話代が払えなくなっていたようでした。

 

決定も確定し、預金も引き出すことができたと聞き、とても安心した次第でした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

男女雇用機会均等法改正後、女性に対する「間接差別」を初めて認める画期的な判決が、2024年5月13日東京地裁で言い渡されました。

 

原告は、素材大手「AGC」の完全子会社に勤める一般職の女性で、同社では男性だけが大半を占める総合職だけに社宅制度を認めており、これが男女差別だとして提訴しました。

判決によると、同社の総合職はほぼ男性、一般職はほぼ女性が占め、家賃の8割を補助する社宅については転勤があることを理由に総合職に限定して適用。3000円などの住宅手当にとどまる一般職とは最大24倍もの差がありました。

 

判決は、社宅制度について、結婚に伴う引越や実家からの独立といった、転勤以外の自己都合でも認めている点などを踏まえ、「総合職に限定する合理的理由はない」と指摘。「事実上男性のみに適用される福利厚生を続け、女性に相当程度不利益を与えた」運用は均等法の趣旨に照らし間接差別に該当すると判断し、損害賠償金など計約380万円の支払を命じました。

 

男女差別について、「直接差別」は明かな性別を理由とした要件ですが、「間接差別」は一見性別とは関係がないと見えるものでも、実質的には一方の性に不利益を与える要件のことを言い、省令でその対象となる措置が定められています(均等法7条)。

 

社宅などの住宅の貸与については、上記の省令には挙げられていませんが、判決は「合理的な理由がなければ違法とされる場合は想定される」として判断の枠組みを広げました。

 

このような差別がまだ残っていたとは驚きですが、間接差別として違法となる範囲が広がった点でも女性差別是正にまた1歩道が開かれたと思います。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

不動産賃貸借や企業に雇用される場合などに、債権者から連帯保証人をたてることを求められることがあります(包括根保証契約)。

例えば、不動産賃貸借で連帯保証人になると、連帯保証人は、借主の滞納賃料や損害賠償債務などを支払わなくてはならなくなります。

これまでは、その保証債務に上限がなかったため、過大な責任の履行を求められる場合もありました。

そこで、民法が改正され、2020年4月から施行されました。

 

連帯保証契約というのは、債権者と連帯保証人との間の契約ですが、連帯保証人になってもらうには、債権者は「極度額」を明示しなければならなくなりました(民法465条の2)。

「極度額」というのは、連帯保証人が責任を負わなくてはいけない金額の上限のことです。

そして、もし、極度額を定めない契約を締結した場合には、その保証契約は無効となります。

 

法律は、単に「極度額」を定めると書いているだけなので、金額に制限はありません。債権者と連帯保証人になろうとする人との間で具体的な金額を決めることになります。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

夫婦別姓が実現しないと、500年後には、日本人は全員「佐藤さん」だけになる?という記事が掲載されていました(2024年4月1日付け朝日新聞)。

 

これは冗談ではなく、東北大学の吉田浩教授(経済学)が、別姓について考えるキャンペーンの一環として、このまま結婚時に夫婦どちらかの姓を選ぶ現行制度を続けると、2531年に日本人の姓は皆「佐藤」になる可能性があるという試算結果を公表しました。

 

国内で最も多い姓は「佐藤」で全体の1.5%を占めるそうです。

そして国内の人口の佐藤姓の占める割合は、2022~2023年の1年間で0.83%増加しており、毎年この割合で佐藤姓の占有率が伸びると仮定すると、2531年には「佐藤」の占有率が100%になると計算のようです。

逆に、選択的夫婦別姓制度が導入された場合には、多様な姓が保たれるという結果でした。

 

選択的夫婦別姓制度に強く反対されている保守層の皆さん、これで、いいんですか?

 

 

現在の民法では、離婚後300日以内に生まれた子は「前夫」の子と推定すると定められています(民法772条)が、2022年12月に民法が改正され、離婚後300日以内に生まれた子であっても再婚後に生まれた子については、父を「現夫」と推定する例外規定が設けられました。

この改正法が2024年4月1日から施行されます。同日以降に生まれた子に適用されます。

 

これは、離婚した前夫の子になるのを避けたい母が出生届を出さず、子が無戸籍となる問題を解消することが狙いです。

しかし、これで問題がすべて解決したわけではありません。再婚していない場合には、「前夫」の子と「推定」されて戸籍に入ってしまうからです。

ただ、これまでは、子どもや母親は、この「推定」を否認する訴えを提起することができませんでしたが、改正により、子どもや母親も嫡出否認の訴えを提起することができるようになります。

 

また、女性に限り離婚後100日間再婚を禁止していた規定も廃止されます。

相続が発生したにもかかわらず、不動産の登記名義の死亡した人のままにしていませんか?

 

これまでは、相続が発生しても、不動産の登記名義を変更するか否か(相続登記をするか否か)は任意でした。

しかし、相続登記がされないため、登記簿を見ても所有者がわからない「所有者不明土地」が全国で増加し、社会問題になっています。

そこで、この問題を解決するため、2021年に不動産登記法が改正され、2024年4月1日から相続登記が義務化されることになりました。

 

相続人は、不動産(土地・建物)を相続で取得したことを知った日から3年以内に相続登記をしなければなりません。正当な理由がないのに相続登記をしない場合、10万円以下の過料が科される可能性があります。

 

2024年4月以前に既に相続が発生している不動産も義務化の対象となりますので、注意してください。この場合、3年間の猶予期間(2027年3月31日まで)がありますので、早めに準備をしましょう。

 

相続人の間で遺産分割の話し合いがなかなかまとまらない場合には、今回新たに作られた「相続人申告登記」という簡便な手続をとることによって、義務を果たしたとみなされる方法もあります。

 

また、今回新たに、不動産の所有者名義について旧姓を併記することも可能となります。

更に、相続人がDVやストーカーの被害者あるいはこれらに準ずるような人で法務省令に該当する場合には、その住まいを加害者に知られないよう、第三者が閲覧できる証明書に被害者の代理人弁護士や支援団体・法務局の住所を記載できるようになります。

 

詳細については、お近くの法務局や司法書士にご相談ください。

 

 

 

 

 

網戸をひもで上下に開け閉めする製品があります。輪状のひもを引くと、窓枠上部に収納されている網戸が引き下ろせる構造です。

そのひもが首に引っかかって女児(当時6歳)が死亡した事故をめぐり、両親が製造元とリフォーム業者に対し損害賠償を求めた訴訟の判決が、2024年3月14日大阪高等裁判所でありました(2024年3月15日付け毎日新聞)。

 

1審の大阪地裁は、両親敗訴だったようですが、控訴審の大阪高裁は、製品に欠陥があるとして企業の製造物責任を認めました。

 

報道によると、その理由として、上記のような網戸は一般的ではなく「危険性が広く認知されているとは言えない」こと、子どもの手が届かない高さにひもを束ねられるクリップが付属されていたが出荷時にクリップはひもに装着されておらず取扱説明書も同封されていなかったことなどから「十分な指示や警告がなく、安全性を欠いていた」として製品の欠陥を認定しました。

 

またリフォーム業者についても、ひもの危険性などを説明することを怠った注意義務違反を認めました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

名古屋刑務所で2021~2022年にかけて、刑務官22人が受刑者3人に対し、暴行や暴言を繰り返し行っていたことについて、法務省の第三者委員会は「人権意識が希薄」などと指摘し、改善を求めていました。

 

それを受けて、法務省は、刑務所内の刑務官らが使っていた35の隠語(例えば、散髪を指す「ガリ」、食後の食器を下げる「空下げ」など)について、2024年2月9日、使用をやめるよう各施設に通知しました。

 

また、4月からは、受刑者の呼び捨てをやめ、名字に「さん」を付けた呼称に改める方針です。

 

小泉司法相は「言葉のゆがみは虐待を誘発しかねない。粘り強く改善する」と述べたそうです。

 

私の「ブログ マチベンの日々」でご紹介した小説「看守の流儀」と続編「看守の信念」には、それぞれ各物語毎に刑務所内で使用されている隠語がサブタイトルとして付されています。例えば、「看守の流儀」では第1話「ヨンピン」・第2話「Gとれ」など、「看守の信念」では第1話「しゃくぜん」・第2話「甘シャリ」など。

 

そもそも刑務所内で使用されてきた隠語がいくつあるのか、また使用が廃止される35の隠語が何なのかはわかりませんが、小説の中で使用されている言葉も含まれているかもしれません。

 

上記の扱いは、受刑者の人権尊重の観点からすれば当然のことです。ただ、単に言葉の問題にとどまらず、今後、どのような改善が具体的になされるのか、しっかり見ていく必要があるでしょう。

 

 

 

 

(労働)アマゾン配達員のケガ 労災認定

インターネット通販「アマゾン」の商品配達を委託されたフリーランスの男性運転手が配達中に負ったケガについて、横浜労働基準監督署は、9月26日付けで、労働災害と認定しました。

配達業務に携わる個人事業主が労災認定されたのは初めてということです。

 

この男性運転手は、アマゾンから委託を受けた横浜市の運送会社と業務委託契約を結んでおり、アマゾンからは「孫請け」でした。

しかし、この男性は、アマゾンが提供するスマホの専用アプリ「ラビット」で配達先や労働時間を管理されていたことなどから「労働者」と認めるべきと主張していました。

 

労基署は、男性の業務実態を検討した結果、自由な裁量で働いているのではなく、会社から指揮命令を受けている「労働者」であると判断し、労働災害と認定しました。

 

労働災害は、「労働者」が仕事が原因でケガや病気になった時に認められ、労基署から認定を受ければ、治療費や休業補償などが支給されます。会社に過失があるかどうかは関係ありません。

今回の認定は、会社が契約形式を請負や業務委託にして、労働関係法令などの規制を免れている多くの「偽装フリーランス」が救済されることにつながるものと思われます。

 

 

 

2023年10月から、地域別最低賃金が改定されました。

 

最低賃金とは、最低賃金法という法律にもとづくもので、これを下回る賃金で労働者を働かせてはならないという最低の賃金を定めるものです。

従って、仮に労使で最低賃金よりも安い賃金を合意しても無効となり、労働者は差額を請求することができます。また、法律違反の使用者には罰則も科せられます。

 

京都は従来の時給968円から1008円に(10月6日から)、滋賀は従来の時給927円から967円に(10月1日から)、大阪は従来の時給1023円から1064円にそれぞれ改定されました。

 

ご相談は、各都道府県の労働局まで。

 

仕事が原因でうつ病などの精神障害を発症した場合に、それが労働災害にあたるかどうかの認定基準は2011年に策定されましたが、それが、2023年9月1日、12年ぶりに改正されました。

 

主な改正点は、下記の4点です。

①心理的負荷(ストレス)の具体的出来事に、「顧客や取引先、施設利用者等から著しい迷惑行為を受けた」こと(いわゆるカスタマーハラスメント)が追加されました。

 

②心理的負荷(ストレス)の具体的出来事に、「感染症等の病気や事故の危険性が高い業務に従事した」ことが追加されました。

 

③心理的負荷の強度の具体例が明記されました。

 例えば、カスタマーハラスメントで、心理的負荷の強度が「弱」「中」「強」になる例がそれぞれ挙げられています。  

 

④精神障害が「悪化」した場合の業務起因性の判断が変更されました。

業務以外で既に発症していた精神障害が、業務によって「悪化」した場合の労災認定の範囲を見直しました。

 従来は、「悪化」前おおむね6ヶ月以内に「特別な出来事」(特に強い心理的負荷となる出来事)がなければ、業務と「悪化」との因果関係が認められませんでした。

 しかし、今回の改正では、「悪化」前おおむね6ヶ月以内に「特別な出来事」がない場合でも、「業務による心理的負荷」により悪化したと医学的に判断されるときには、業務と「悪化」との間の因果関係が認められます。

 ただ、「悪化」の基準は明確には示されていません。

 

この新しい認定基準は、厚生労働省のホームページに掲載されています。

 

 

 

 

戦後、唯一の自衛隊違憲判決~長沼一審判決~

「以上認定した自衛隊の編成、規模、装備、能力からすると、自衛隊は明らかに・・・憲法第9条第2項によってその保持を禁ぜられている『陸海空軍』という『戦力』に該当する」

 

1973(昭和48)年9月7日、札幌地裁(福島重雄裁判長)で言い渡された、この判決は、長沼第一審判決と呼ばれ、戦後、唯一の自衛隊違憲判決である。

 

大学の教養部の「憲法」の講義の中で初めて知り、その後、学部の「憲法」の講義でも聴き、更に、司法試験の受験勉強の中でも学んだ。

 

長沼事件とは、北海道夕張郡長沼町の馬追山にできる地対空ミサイル基地(現、航空自衛隊長沼分屯基地)の予定地について、国有保安林指定を国が解除したため、長沼町民が保安林指定解除処分の取消と自衛隊の違憲性を求めて争われた行政訴訟である。

また、札幌地裁の平賀健太所長(当時)が「農林大臣の裁量を尊重すべき」と、訴訟に介入する内容の書簡(いわゆる「平賀書簡」)を送ったため、「司法の独立」への侵害として問題化したことも、大学で勉強した。

 

判決言い渡しから今年9月7日で50年を迎えるということで、同日付け朝日新聞朝刊で、当時、裁判長であった福島重雄さんの記事が掲載されていた。

同記事によると、福島さんは、現在、93歳。郷里の富山県で弁護士をされているとのこと。

自衛隊は、憲法9条2項が禁じた「戦力」なのか。

採用した証人は、実に24人。

福島さんは、憲法76条が保障する司法の独立に従い、自衛隊を「戦力」と断じ、保安林指定解除は公益性がなく違法と結論づけた。

 

これに対し、控訴審の札幌高裁判決は、訴えを門前払いとし、最高裁も自衛隊の憲法判断には触れず、上告を棄却した。

 

これ以降、現在に至るまで、自衛隊についての憲法判断は1度も出されていない。

 

長沼地裁判決は、戦後唯一の自衛隊違憲判決として、国の政策に対し、大きな「重し」となっていることは間違いないものである。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(労働)ストライキは憲法上の権利です

2023年8月31日に、百貨店のそごう・西武の労働組合が池袋本店でストライキを実施したことは大きなニュースとして報道されました。

 

国内の百貨店では実に61年ぶりとのこと。親会社のセブン&アイホールディングスによる外資ファンドへの売却に対し、従業員の雇用の維持を求めてのストライキでした。

 

ストライキ(同盟罷業)とは、労働者が事業主に対し、労働条件の改善などを求めて、集団で仕事をしないことを言います。これは、憲法28条で労働者に認められている権利です。

憲法上の権利で、労働組合法にも定めがあり、業務の停止によって損害が生じても、労働組合や労働者が責任を負うことはありません。

 

私が子どもの頃は、毎年春闘の時期になると、旧国鉄(今のJR)の労働組合が全国的にストライキを行っていましたし、弁護士になった頃も、京都のタクシーの労働組合がストライキをしているところへ応援に駆けつけたこともありました。

しかし、労使協調路線が進み、次第にストライキは減少し、2001年以降は年間100件を下回るそうです。

 

ところで、このストライキという言葉は、英語の「ストライク」で、これは「打つ」という意味のほか、旗などを「降ろす」様子も表すそうで、18世紀、イギリスの港で船乗りたちが帆を次々と降ろし賃金の不満を訴えたことが語源のようです(9月5日付け京都新聞「凡語」より)。

 

そごう・西武の労働組合のストライキによって、国民の多くの眼が今後の成り行きを注目しています。労働者の雇用が守られる解決を図ってもらいたいものです。

 

 

 

 

 

 

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