1. 女性弁護士の法律コラム

女性弁護士の法律コラム

2022年12月9日付け当ブログで御紹介した同年11月2日付け東京高裁判決。労災認定につき、事業主が不服申立をすることができるという酷い判決でした。

 

最高裁がどんな判断を下すか心配していましたが、2024年7月4日、事業主は不服申立てはできないという判決が下りました。

 

ホッとしました。

事業主の不服申立の権利が認められれば、一度、労災認定が下されても、確定までに時間がかかる上、後から取り消されるおそれもあって、労働者の早期救済という労災制度の趣旨が不安定になるおそれがありました。

 

最高裁は、労災保険には労働者の早期救済という目的があり、事業主の不服申立てを認めれば、この趣旨が損なわれると指摘しました。

 

国は、上記高裁判決後、労災認定があると保険料増額という不利益を受ける事業主側にも配慮し、2023年1月から、保険料の適否を争う手続の中で、労災認定への不服も主張できるように運用を変更しました。この対応については、最高裁は追認しました。事業主の不服申立てが認められれば保険料引き上げは取り消されますが、労災認定まではさかのぼらず、労働者が給付金を返金する必要はありません。

 

 

 

地方住宅供給公社が借主の合意を得ずに、一方的に家賃を増額できるかどうかが争われた訴訟で、最高裁は、2024年6月24日、公社物件であっても借地借家法が適用され、家賃の増減額について争うことができるという初めての判断をしました。

 

争ったのは、神奈川県住宅供給公社の賃貸住宅に住む住民ら8人。公社が行った家賃値上げについて、「適正賃料を超えている」と主張し、過払い分の返還を求めて2020年に提訴しました。

 

借地借家法は、住宅市場の変動などに応じて、貸主と借主双方が、家賃の増額・減額を争うことができると定めています。

一方、公社法施行規則は「近隣の同種住宅の家賃が上回らないよう定める」としており、神奈川県住宅供給公社は、訴訟で、借主の同意なく家賃を変更できると主張していました。

 

1審横浜地裁・2審東京高裁は、公社の家賃は一般の賃貸借とは異なるとして、借地借家法の適用を認めませんでした。

 

これに対し、最高裁は、施行規則は補完的な基準を示したもので、借地借家法の適用を排除する規定ではないと判断しました。

 

これによって、借主側が家賃の減額を請求することもできますし、公社の値上げに対して争えるようにもなりました。

 

 

 

 

 

2024年3月下旬、元依頼者のFさんから法律相談を受けました。

裁判所から債権差押命令が届き、年金が振り込まれていた銀行の預金口座が差し押さえられたとのことでした。Fさんは命令が届き、驚いて、すぐに事務所に来られました。

Fさんは、78歳の一人暮らしの男性で、無職で持病もあり、年金が唯一の生活の糧でした。

 

債権者は、債務者の公的年金自体を差し押さえることはできませんが、それが一度、債務者の銀行口座に振り込まれると、差し押さえることが可能となります。

 

ただ、民事執行法153条に、こういう場合における救済の規定があります。

差押えによって、一般的な生活水準と比較して債務者の生活に著しい支障が生じる場合(例えば、生活が成り立たなくなるような場合など)に、債務者の申立てにより、差押えの範囲を変更(減縮)するかどうかを裁判所が決定する制度です。

 

そこで、私は、Fさんに上記の申立をすることを勧めました。

申立ての方法は、さほど難しいわけではありませんが、債務者の生活状況などを書面にきちんと書き資料も付けて裁判所に提出しなければなりません。

 

Fさん一人に任せるのは心配だったので、翌日、再度、年金受給証明書や非課税証明書など生活状況がわかる資料を持参の上、事務所に来てもらいました。そして、生活状況などについては、私がFさんから聴き取って文書を作成しました。また、併せて、債権者への支払の一時禁止の申立てもすることにしました。

Fさんは、その足で、京都地方裁判所に申立書と資料を提出しに行きました。

 

申立てがあると、裁判所は、申立書などに不備がないかを審査し、不備がなければ、申立人(債務者)に必要な資料の提出を求めます。そして、次に、相手方(債権者)に反論などの提出を求め、その上で、裁判所は判断をします。

 

その後、時々、Fさんに電話をして状況を尋ねましたが、債権者への支払の一時禁止はすぐに決定されましたが、最終の結論は、なかなか出ませんでした。

 

4月下旬のGW前に、やっと裁判所から決定が届いたそうです。

決定主文は、「債権差押命令を取り消す」というもので、これでFさんの差し押さえられた預金は全部引き出せることになります。

 

しかし、すぐに引き出せるわけではなく、決定が債権者に届いてから不服申立がなく1週間経過すると、やっと決定が確定して、預金が引き出せるようになるのです。

 

GW明けに、Fさんの携帯電話に架電すると、つながらなくなっていました。

「電話代が払えなかったんだろうか」「持病が悪化して入院したんだろうか」などと心配しましたが、その後しばらくして、電話もつながるようになり、聞くと、やはり電話代が払えなくなっていたようでした。

 

決定も確定し、預金も引き出すことができたと聞き、とても安心した次第でした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

男女雇用機会均等法改正後、女性に対する「間接差別」を初めて認める画期的な判決が、2024年5月13日東京地裁で言い渡されました。

 

原告は、素材大手「AGC」の完全子会社に勤める一般職の女性で、同社では男性だけが大半を占める総合職だけに社宅制度を認めており、これが男女差別だとして提訴しました。

判決によると、同社の総合職はほぼ男性、一般職はほぼ女性が占め、家賃の8割を補助する社宅については転勤があることを理由に総合職に限定して適用。3000円などの住宅手当にとどまる一般職とは最大24倍もの差がありました。

 

判決は、社宅制度について、結婚に伴う引越や実家からの独立といった、転勤以外の自己都合でも認めている点などを踏まえ、「総合職に限定する合理的理由はない」と指摘。「事実上男性のみに適用される福利厚生を続け、女性に相当程度不利益を与えた」運用は均等法の趣旨に照らし間接差別に該当すると判断し、損害賠償金など計約380万円の支払を命じました。

 

男女差別について、「直接差別」は明かな性別を理由とした要件ですが、「間接差別」は一見性別とは関係がないと見えるものでも、実質的には一方の性に不利益を与える要件のことを言い、省令でその対象となる措置が定められています(均等法7条)。

 

社宅などの住宅の貸与については、上記の省令には挙げられていませんが、判決は「合理的な理由がなければ違法とされる場合は想定される」として判断の枠組みを広げました。

 

このような差別がまだ残っていたとは驚きですが、間接差別として違法となる範囲が広がった点でも女性差別是正にまた1歩道が開かれたと思います。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

不動産賃貸借や企業に雇用される場合などに、債権者から連帯保証人をたてることを求められることがあります(包括根保証契約)。

例えば、不動産賃貸借で連帯保証人になると、連帯保証人は、借主の滞納賃料や損害賠償債務などを支払わなくてはならなくなります。

これまでは、その保証債務に上限がなかったため、過大な責任の履行を求められる場合もありました。

そこで、民法が改正され、2020年4月から施行されました。

 

連帯保証契約というのは、債権者と連帯保証人との間の契約ですが、連帯保証人になってもらうには、債権者は「極度額」を明示しなければならなくなりました(民法465条の2)。

「極度額」というのは、連帯保証人が責任を負わなくてはいけない金額の上限のことです。

そして、もし、極度額を定めない契約を締結した場合には、その保証契約は無効となります。

 

法律は、単に「極度額」を定めると書いているだけなので、金額に制限はありません。債権者と連帯保証人になろうとする人との間で具体的な金額を決めることになります。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

夫婦別姓が実現しないと、500年後には、日本人は全員「佐藤さん」だけになる?という記事が掲載されていました(2024年4月1日付け朝日新聞)。

 

これは冗談ではなく、東北大学の吉田浩教授(経済学)が、別姓について考えるキャンペーンの一環として、このまま結婚時に夫婦どちらかの姓を選ぶ現行制度を続けると、2531年に日本人の姓は皆「佐藤」になる可能性があるという試算結果を公表しました。

 

国内で最も多い姓は「佐藤」で全体の1.5%を占めるそうです。

そして国内の人口の佐藤姓の占める割合は、2022~2023年の1年間で0.83%増加しており、毎年この割合で佐藤姓の占有率が伸びると仮定すると、2531年には「佐藤」の占有率が100%になると計算のようです。

逆に、選択的夫婦別姓制度が導入された場合には、多様な姓が保たれるという結果でした。

 

選択的夫婦別姓制度に強く反対されている保守層の皆さん、これで、いいんですか?

 

 

現在の民法では、離婚後300日以内に生まれた子は「前夫」の子と推定すると定められています(民法772条)が、2022年12月に民法が改正され、離婚後300日以内に生まれた子であっても再婚後に生まれた子については、父を「現夫」と推定する例外規定が設けられました。

この改正法が2024年4月1日から施行されます。同日以降に生まれた子に適用されます。

 

これは、離婚した前夫の子になるのを避けたい母が出生届を出さず、子が無戸籍となる問題を解消することが狙いです。

しかし、これで問題がすべて解決したわけではありません。再婚していない場合には、「前夫」の子と「推定」されて戸籍に入ってしまうからです。

ただ、これまでは、子どもや母親は、この「推定」を否認する訴えを提起することができませんでしたが、改正により、子どもや母親も嫡出否認の訴えを提起することができるようになります。

 

また、女性に限り離婚後100日間再婚を禁止していた規定も廃止されます。

相続が発生したにもかかわらず、不動産の登記名義の死亡した人のままにしていませんか?

 

これまでは、相続が発生しても、不動産の登記名義を変更するか否か(相続登記をするか否か)は任意でした。

しかし、相続登記がされないため、登記簿を見ても所有者がわからない「所有者不明土地」が全国で増加し、社会問題になっています。

そこで、この問題を解決するため、2021年に不動産登記法が改正され、2024年4月1日から相続登記が義務化されることになりました。

 

相続人は、不動産(土地・建物)を相続で取得したことを知った日から3年以内に相続登記をしなければなりません。正当な理由がないのに相続登記をしない場合、10万円以下の過料が科される可能性があります。

 

2024年4月以前に既に相続が発生している不動産も義務化の対象となりますので、注意してください。この場合、3年間の猶予期間(2027年3月31日まで)がありますので、早めに準備をしましょう。

 

相続人の間で遺産分割の話し合いがなかなかまとまらない場合には、今回新たに作られた「相続人申告登記」という簡便な手続をとることによって、義務を果たしたとみなされる方法もあります。

 

また、今回新たに、不動産の所有者名義について旧姓を併記することも可能となります。

更に、相続人がDVやストーカーの被害者あるいはこれらに準ずるような人で法務省令に該当する場合には、その住まいを加害者に知られないよう、第三者が閲覧できる証明書に被害者の代理人弁護士や支援団体・法務局の住所を記載できるようになります。

 

詳細については、お近くの法務局や司法書士にご相談ください。

 

 

 

 

 

網戸をひもで上下に開け閉めする製品があります。輪状のひもを引くと、窓枠上部に収納されている網戸が引き下ろせる構造です。

そのひもが首に引っかかって女児(当時6歳)が死亡した事故をめぐり、両親が製造元とリフォーム業者に対し損害賠償を求めた訴訟の判決が、2024年3月14日大阪高等裁判所でありました(2024年3月15日付け毎日新聞)。

 

1審の大阪地裁は、両親敗訴だったようですが、控訴審の大阪高裁は、製品に欠陥があるとして企業の製造物責任を認めました。

 

報道によると、その理由として、上記のような網戸は一般的ではなく「危険性が広く認知されているとは言えない」こと、子どもの手が届かない高さにひもを束ねられるクリップが付属されていたが出荷時にクリップはひもに装着されておらず取扱説明書も同封されていなかったことなどから「十分な指示や警告がなく、安全性を欠いていた」として製品の欠陥を認定しました。

 

またリフォーム業者についても、ひもの危険性などを説明することを怠った注意義務違反を認めました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

名古屋刑務所で2021~2022年にかけて、刑務官22人が受刑者3人に対し、暴行や暴言を繰り返し行っていたことについて、法務省の第三者委員会は「人権意識が希薄」などと指摘し、改善を求めていました。

 

それを受けて、法務省は、刑務所内の刑務官らが使っていた35の隠語(例えば、散髪を指す「ガリ」、食後の食器を下げる「空下げ」など)について、2024年2月9日、使用をやめるよう各施設に通知しました。

 

また、4月からは、受刑者の呼び捨てをやめ、名字に「さん」を付けた呼称に改める方針です。

 

小泉司法相は「言葉のゆがみは虐待を誘発しかねない。粘り強く改善する」と述べたそうです。

 

私の「ブログ マチベンの日々」でご紹介した小説「看守の流儀」と続編「看守の信念」には、それぞれ各物語毎に刑務所内で使用されている隠語がサブタイトルとして付されています。例えば、「看守の流儀」では第1話「ヨンピン」・第2話「Gとれ」など、「看守の信念」では第1話「しゃくぜん」・第2話「甘シャリ」など。

 

そもそも刑務所内で使用されてきた隠語がいくつあるのか、また使用が廃止される35の隠語が何なのかはわかりませんが、小説の中で使用されている言葉も含まれているかもしれません。

 

上記の扱いは、受刑者の人権尊重の観点からすれば当然のことです。ただ、単に言葉の問題にとどまらず、今後、どのような改善が具体的になされるのか、しっかり見ていく必要があるでしょう。

 

 

 

 

(労働)アマゾン配達員のケガ 労災認定

インターネット通販「アマゾン」の商品配達を委託されたフリーランスの男性運転手が配達中に負ったケガについて、横浜労働基準監督署は、9月26日付けで、労働災害と認定しました。

配達業務に携わる個人事業主が労災認定されたのは初めてということです。

 

この男性運転手は、アマゾンから委託を受けた横浜市の運送会社と業務委託契約を結んでおり、アマゾンからは「孫請け」でした。

しかし、この男性は、アマゾンが提供するスマホの専用アプリ「ラビット」で配達先や労働時間を管理されていたことなどから「労働者」と認めるべきと主張していました。

 

労基署は、男性の業務実態を検討した結果、自由な裁量で働いているのではなく、会社から指揮命令を受けている「労働者」であると判断し、労働災害と認定しました。

 

労働災害は、「労働者」が仕事が原因でケガや病気になった時に認められ、労基署から認定を受ければ、治療費や休業補償などが支給されます。会社に過失があるかどうかは関係ありません。

今回の認定は、会社が契約形式を請負や業務委託にして、労働関係法令などの規制を免れている多くの「偽装フリーランス」が救済されることにつながるものと思われます。

 

 

 

2023年10月から、地域別最低賃金が改定されました。

 

最低賃金とは、最低賃金法という法律にもとづくもので、これを下回る賃金で労働者を働かせてはならないという最低の賃金を定めるものです。

従って、仮に労使で最低賃金よりも安い賃金を合意しても無効となり、労働者は差額を請求することができます。また、法律違反の使用者には罰則も科せられます。

 

京都は従来の時給968円から1008円に(10月6日から)、滋賀は従来の時給927円から967円に(10月1日から)、大阪は従来の時給1023円から1064円にそれぞれ改定されました。

 

ご相談は、各都道府県の労働局まで。

 

仕事が原因でうつ病などの精神障害を発症した場合に、それが労働災害にあたるかどうかの認定基準は2011年に策定されましたが、それが、2023年9月1日、12年ぶりに改正されました。

 

主な改正点は、下記の4点です。

①心理的負荷(ストレス)の具体的出来事に、「顧客や取引先、施設利用者等から著しい迷惑行為を受けた」こと(いわゆるカスタマーハラスメント)が追加されました。

 

②心理的負荷(ストレス)の具体的出来事に、「感染症等の病気や事故の危険性が高い業務に従事した」ことが追加されました。

 

③心理的負荷の強度の具体例が明記されました。

 例えば、カスタマーハラスメントで、心理的負荷の強度が「弱」「中」「強」になる例がそれぞれ挙げられています。  

 

④精神障害が「悪化」した場合の業務起因性の判断が変更されました。

業務以外で既に発症していた精神障害が、業務によって「悪化」した場合の労災認定の範囲を見直しました。

 従来は、「悪化」前おおむね6ヶ月以内に「特別な出来事」(特に強い心理的負荷となる出来事)がなければ、業務と「悪化」との因果関係が認められませんでした。

 しかし、今回の改正では、「悪化」前おおむね6ヶ月以内に「特別な出来事」がない場合でも、「業務による心理的負荷」により悪化したと医学的に判断されるときには、業務と「悪化」との間の因果関係が認められます。

 ただ、「悪化」の基準は明確には示されていません。

 

この新しい認定基準は、厚生労働省のホームページに掲載されています。

 

 

 

 

戦後、唯一の自衛隊違憲判決~長沼一審判決~

「以上認定した自衛隊の編成、規模、装備、能力からすると、自衛隊は明らかに・・・憲法第9条第2項によってその保持を禁ぜられている『陸海空軍』という『戦力』に該当する」

 

1973(昭和48)年9月7日、札幌地裁(福島重雄裁判長)で言い渡された、この判決は、長沼第一審判決と呼ばれ、戦後、唯一の自衛隊違憲判決である。

 

大学の教養部の「憲法」の講義の中で初めて知り、その後、学部の「憲法」の講義でも聴き、更に、司法試験の受験勉強の中でも学んだ。

 

長沼事件とは、北海道夕張郡長沼町の馬追山にできる地対空ミサイル基地(現、航空自衛隊長沼分屯基地)の予定地について、国有保安林指定を国が解除したため、長沼町民が保安林指定解除処分の取消と自衛隊の違憲性を求めて争われた行政訴訟である。

また、札幌地裁の平賀健太所長(当時)が「農林大臣の裁量を尊重すべき」と、訴訟に介入する内容の書簡(いわゆる「平賀書簡」)を送ったため、「司法の独立」への侵害として問題化したことも、大学で勉強した。

 

判決言い渡しから今年9月7日で50年を迎えるということで、同日付け朝日新聞朝刊で、当時、裁判長であった福島重雄さんの記事が掲載されていた。

同記事によると、福島さんは、現在、93歳。郷里の富山県で弁護士をされているとのこと。

自衛隊は、憲法9条2項が禁じた「戦力」なのか。

採用した証人は、実に24人。

福島さんは、憲法76条が保障する司法の独立に従い、自衛隊を「戦力」と断じ、保安林指定解除は公益性がなく違法と結論づけた。

 

これに対し、控訴審の札幌高裁判決は、訴えを門前払いとし、最高裁も自衛隊の憲法判断には触れず、上告を棄却した。

 

これ以降、現在に至るまで、自衛隊についての憲法判断は1度も出されていない。

 

長沼地裁判決は、戦後唯一の自衛隊違憲判決として、国の政策に対し、大きな「重し」となっていることは間違いないものである。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(労働)ストライキは憲法上の権利です

2023年8月31日に、百貨店のそごう・西武の労働組合が池袋本店でストライキを実施したことは大きなニュースとして報道されました。

 

国内の百貨店では実に61年ぶりとのこと。親会社のセブン&アイホールディングスによる外資ファンドへの売却に対し、従業員の雇用の維持を求めてのストライキでした。

 

ストライキ(同盟罷業)とは、労働者が事業主に対し、労働条件の改善などを求めて、集団で仕事をしないことを言います。これは、憲法28条で労働者に認められている権利です。

憲法上の権利で、労働組合法にも定めがあり、業務の停止によって損害が生じても、労働組合や労働者が責任を負うことはありません。

 

私が子どもの頃は、毎年春闘の時期になると、旧国鉄(今のJR)の労働組合が全国的にストライキを行っていましたし、弁護士になった頃も、京都のタクシーの労働組合がストライキをしているところへ応援に駆けつけたこともありました。

しかし、労使協調路線が進み、次第にストライキは減少し、2001年以降は年間100件を下回るそうです。

 

ところで、このストライキという言葉は、英語の「ストライク」で、これは「打つ」という意味のほか、旗などを「降ろす」様子も表すそうで、18世紀、イギリスの港で船乗りたちが帆を次々と降ろし賃金の不満を訴えたことが語源のようです(9月5日付け京都新聞「凡語」より)。

 

そごう・西武の労働組合のストライキによって、国民の多くの眼が今後の成り行きを注目しています。労働者の雇用が守られる解決を図ってもらいたいものです。

 

 

 

 

 

 

長年、弁護士という仕事についているので、若い頃は、刑事事件の弁護活動も何件も行いました。ただ、信条として、暴力団関連の事件と性犯罪の事件の弁護はしませんでした。

 

弁護士が性犯罪の弁護をする場合、「情状」として決まって使用されるのが「同意があると思った」や「被害者が派手な服装をしていた」などという内容です。

 

今の日本では、何を着ても服装は自由なはずなのに、なんで性犯罪が行われた時だけ、女性被害者の着ている服装が問題となり、それが犯行を犯した被告人の「情状」として主張されるのだろうと、ずっと疑問に思っていました。

 

8月、韓国の人気DJの「DJ SODA」さんが大阪の音楽イベントで受けたセクハラ被害を訴えたというニュースがありました。

それに対し、SNSでは、「露出度の高い服を着ている方が悪い」などという書き込みがあったそうです。なぜ、被害者に加害の責任を押しつけるのでしょうか。

DJ SODAさんは「どんな服を着ていても、正当化できない」と発言しました。

 

「DJ SODA」さんの発言は至極当然であり、被害者の服装によって、加害者の罪が軽減されるようなことはあってはならないと思います。

ちなみに、国連も「性的暴力のサバイバーが襲われた時、何を着ていたかは関係ありません」というメッセージを発信しています。

 

 

 

 

 

 

 

定年後に嘱託職員として再雇用されたものの、基本給などの賃金が大幅に減額されたのは不当だとして、名古屋の自動車学校に勤めていた男性2人が学校側に定年前との差額分の支給などを求めた訴訟で、2023年7月20日、最高裁は、定年時の6割を下回る部分は「不合理な格差」で違法と判断した名古屋高等裁判所判決を破棄し、審理を高裁に差し戻しました。

 

最高裁は、「基本給の差が『不合理な格差』にあたることはあり得る」とする一方、不合理かどうかは、基本給の性質や支給目的を踏まえて判断すべきとしました。

その上で、同学校の基本給は、勤続年数だけでなく、職務内容に応じた「職務給」や職務遂行能力に応じた「職能給」という性質もあり、基本給の性質や支給目的についての審理が不十分だとして、高裁に審理のやり直し(差し戻し)を命じました。

 

これまで再雇用者の賃金については、定年退職時の賃金の「6割」という数字が一人歩きしていた感がありますが、最高裁は、具体的に職場毎の基本給の性質や目的などを含めて決定することを求めました。

 

 

訪問販売などで義務付けられている契約書の交付を、書面(紙)ではなく、電子データで行うことを認める改正特定商取引法が、2023年6月1日から施行されました。

 

特定商取引法とは、旧訪問販売法を改正、改称して、2001年から施行されています。

消費者が悪徳商法(訪問販売や電話勧誘、マルチ商法など)等の被害に遭わないよう、一定の規制によって、消費者の保護を図る法律です。

 

今回の改正は、これまで、訪問販売などの一定の取引を行う場合、契約書については、消費者に対し書面を交付することが事業者に義務付けられていました。これは書面という紙によって行われなければなりませんでした。これが電子データで行うことが認められるようになったのです。

 

しかし、事業者が契約書の電子交付を行うにはルールがあります。

 

消費者の事前の承諾が必要です(法4条2項、5条3項)。

 

電子メールやSNSで送ってもらうのか、専用サイトからダウンロードするのかなど、事業者が提供する方法から消費者が選択します。

 

事業者は、クーリングオフやパソコン等の操作ができることなどの重要事項について説明する必要があります。

 

また、事業者は、消費者がパソコン等で自ら必要な操作ができるかどうかを確認しなければなりません。

 

その上で、消費者から書面による承諾を得る必要があり、承諾を得ると、事業者は消費者に対し、その承諾を得たことを称する書面(原則は紙で)を交付しなければなりません。

 

なお、消費者は1度電子交付を承諾した場合でもあっても、その承諾を撤回することもできます。

 

今回の改正は、電子データを駆使できる消費者には便利かもしれません。

しかし、電子メールなどでは家族など第三者の目につきにくく、クーリングオフの期間が過ぎてしまうリスクも懸念されます。

慎重に判断しましょう。

 

(労災)「胃潰瘍で死亡」労災認定

富山市の電気設備工事会社に勤める男性(当時62歳)が出血性胃潰瘍を発症して死亡したのは長時間労働などが原因だとして、富山労働基準監督署は、2023年5月、労働災害と認定しました(2023年6月4日付け朝日新聞朝刊)。

 

国の労災認定基準では、長時間労働や業務による心理的負担などとの因果関係が医学的に確立したものとされているのは、脳・心臓疾患あるいは精神障害に限られています。

これら以外の病気には認定基準がありません。従って、消化器系の病気で労災が認められるケースは極めてマレです。

 

本件では、富山市の男性Aさんは、電気設備工事会社の技術者でしたが、2020年8月の定年退職後も再雇用されていました。血圧が高く、糖尿病の持病もありました。

放送局の建設現場の責任者となり、残業が増え、深夜帰宅・早朝出勤が増えました。

2021年12月に死亡する直近1ヶ月間の時間外労働時間は、過労死ラインを大きく越える約122時間だったそうです。

国が定年後の再雇用などを推し進める中で起こった労災でした。

 

脳・心臓疾患や精神障害以外でも、業務の過重性が認められれば、労災認定される可能性はあります。これまでも、喘息・てんかん・十二指腸潰瘍などの事案で労災認定がされています。

 

また、国は、高齢者の再雇用のみを推し進めるのではなく、高齢労働者が安全で働くことができるような環境対策が求められています。

DV防止法(正式名称は「配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護等に関する法律」)の改正が2023年5月12日成立しました(施行は2024年4月1日)。

 

DV防止法は、被害者からの申立てにもとづき、裁判所が相手方配偶者に対し、被害者の身辺へのつきまといや住居等の付近の徘徊などの一定の行為を禁止する命令を出す制度です。

 

今回の改正では、DV被害に「自由、名誉、財産に対する脅迫」が追加され、「精神的DV」が保護命令の対象に加わりました。

また、接近禁止命令等の期間を6ヶ月から1年間に伸長しました。

禁止する連絡手段には、電話やメールだけでなく、緊急時以外の連続した文書の送付やSNSの送信も加えられました。

更に、命令違反の場合の罰則も強化され、現行の「1年以下の懲役または100万円以下の罰金」から「2年以下の懲役または200万円以下の罰金」となりました。

 

被害者保護が保護が強化された内容となっています。

 

ただ、神奈川大学井上匡子教授が指摘されるように(2023年5月13日付け京都新聞夕刊)、日本のDV防止法は、被害者が逃げることが前提とされており、海外のような「DV罪」の新設や加害者の更生プログラムの導入も検討されるべきと思われます。また、自治体毎で被害者支援の内容が異なるため、全国どこでも充実したサポートを受けられる体制を国が作ることが求められます。

 

 

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