1. 2025年10月

2025年10月アーカイブ

(最新法令)公正証書のデジタル化

公正証書って、ご存知ですか?

公証人が作成する文書のことで、裁判をしなくても強制力があったり、単なる私人間の契約書よりは証明力が高かったりする文書です。

例えば、公正証書で消費貸借契約(金銭の貸借)を締結しておけば、借主が返済を怠った場合には裁判を起こさず借主の財産に対し強制執行をすることができます。

また、離婚する夫婦の間で、子どもの養育費について公正証書で定めておけば、これも、養育費が不払いとなった場合には、裁判を起こさずに支払い義務者の財産に対し強制執行をすることができます。

あるいは、公正証書で遺言を作成しておけば、遺言者の死後、家庭裁判所に遺言を提出して「検認」手続きを経る必要はありません。

 

このような公正証書は、これまでは紙で作成されていましたが、2025年10月1日から改正公証人法が施行され、今後は、原則としてデジタル化され、電子データで作成・保存されるようになります。

10月1日以降、国が指定する「指定公証人」が在籍する公証役場から順に導入されていきます。ちなみに、京都公証役場では、2025年11月25日から開始されるそうです。

 

では、デジタル化になると、どのような作成手続きになるのでしょうか。

①公証役場への出頭が不要となり、インターネットからメールを送信して嘱託(申請)することが可能となります。

②嘱託人から申し出があり、公証人が相当と認めた場合に限られますが、ウェブ会議を利用して公正証書を作成することが可能となります。

③公正証書は原則として電子データで作成され、嘱託人等は電子サインのみ(押印不要)になります。

④電子データで作成された公正証書は、紙でも電子データでも閲覧・受け取りが可能になります。

 

本人確認書類やパソコン等の機器など従来とは異なるものが必要となりますので、詳細は公証役場でお尋ねください。 

 

なお、公正証書遺言についてもウェブ会議(リモート)で行えるようになるとのネットや新聞の記事も見られますが、先日、京都の公証役場に問い合わせたところ、デジタル化が実施された後も、公正証書遺言については、これまでのどおりの対面を原則とするという回答でした。

 

権力者も心酔した香木「蘭奢待」

2025年10月25日から第77回正倉院展が始まった。

以前、何度か行ったことがあるが、ここ何年かは行っていない。

 

その正倉院展に、「蘭奢待」(らんじゃたい)の雅名をもつ香木「黄熟香」(おうじゅくこう)が出展されている。織田信長・足利義政・明治天皇の3人の権力者がこの香木から数片切り取ったことは有名である。

 

実は、今年10月初めに集った、大学卒業以来の同級生数名の中に、農学部出身で林産工学を専門とする京大名誉教授のTさんがいた。

Tさんとは、学部は違っていたが、大学時代の下宿が近所だったこともあって、時々、部屋に寄ったこともあった。

卒業後は、年賀状のやりとりすらしていなかったが、ある時、インターネットで京大に教授として在籍されていることを知り、京大を退官される時に初めて連絡を取った。しかし、その後も会うことはなかったが、ようやく今年数十年ぶりの再会となった。

 

会った時、Tさんから専門分野の興味深い話をたくさん聞かせてもらったが、最近は、正倉院から依頼を受け、宝物の木について調べているという。宝物を移動する際に落ちる、ほんの小さな破片から調査するそうである。

その中に「蘭奢待」調査の話もあった。

2025年10月25日付け読売新聞夕刊に「蘭奢待」の記事が掲載されていたが、蘭奢待は、ベトナムからラオスにかけての山岳地帯で生えていたジンチョウゲ科の木が原木で、772~885年頃に伐採されたか倒木したことが判明した。それ以降、正倉院に納められた。

こういうことも、Tさんが調査されて判明したんだろうな。

 

その後、NHKが「フロンティアで会いましょう」という番組で「蘭奢待の謎」を放映し、Tさんもその番組に出演することを知ったので、もちろん観た。

 

「蘭奢待」はどんな匂いがするんだろう・・・?

テレビ番組出演者は、「甘い」とか「杏仁豆腐のよう」とか言っていた。想像できない!

他方、毎年のように正倉院展を訪れている奈良在住の友人に聞くと、「以前に展示されていた時と比べると、今年の展示は、なぜか、あまり良く匂わなかった」と言っていた。匂いは「言葉では表現できない」とも。

 

私自身は、「匂い」や「香」にはさほど興味はないが、「蘭奢待」の匂い、1度くらいはかいでみたいものである。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「僕には鳥の言葉がわかる」(鈴木俊貴 著)

私が今年読んだ本の中で、ダントツ、面白い!と思った。

 

2025年10月21日付け当ブログで畠山重篤さんのことを書いた時と同じように、鈴木俊貴さんの本のことも以前に読売新聞コラムに掲載されており、なぜかその記事も残してあった。

そして、先日会った高校時代の同級生が、これも偶然にその本を持っていることを知り、貸してもらった。とてもわかりやすい文章だったので一気に読んでしまい、更に一層興味を持った。

すると、またまた偶然にも、鈴木俊貴さんが2025年10月27日放映のテレビ「徹子の部屋」に出演と知り、Tverを観て鈴木さんの話を聞くこともできた。

 

鈴木さんは、1983年生まれで、現在、東京大学准教授。専門は動物言語学だが、この「動物言語学」という学問は、2023年に鈴木さん自身が命名した新しい学問である。

鈴木さんは、幼い頃から動物を観察することが好きだったが、大学生の頃に、シジュウカラの鳴き声に興味を持ち、「餌皿を置く→観察する→片づける」という単純作業をひたすら繰り返し、シジュウカラの仲間を呼ぶための鳴き声を発見する。

また、ある時は、バッタ採集のアルバイトでお金を貯め、それでシジュウカラ用の巣箱40箱を作り、巣箱の天井に小型カメラを設置して親鳥とヒナの様子・行動などを観察した。

まさに、「シジュウカラ・オタク」だ。

 

鈴木さんは、大学卒業後研究者となり、ずっとシジュウカラの研究を続けた。

そして、古代ギリシャ時代から現代まで、言葉を持つのは人間だけで、動物たちの鳴き声は感情表現だと決めつけられてきたが、鈴木さんは、シジュウカラにも言葉があることを発見そして証明し、彼の論文は世界で認められた。

証明するための実験過程もまた実に面白い。科学者・研究者というものは、こういうもんなんだなと思わせる工夫と忍耐力だ。

 

山に登ると、鳥の鳴き声も聞こえるが、これまで関心を持ったことがなかった。

鈴木さんによると、シジュウカラは街中でも頻繁に見られる鳥だそうだ。

私は早速、カバンの中に、双眼鏡を入れて持ち歩くことにした。

とりあえずは、京都御所に行ってみよう・・・

 

 

 

 

どんな言葉がセクハラになるのか、わからん・・・という言葉が聞かれます。

 

東京地裁は、2025年10月23日、年上の同僚男性からセクシュアルハラスメントを受けたとして佐川急便の元従業員の女性が損害賠償を求めた訴訟で、男性に22万円の賠償を命じました(2025年10月24日付け毎日新聞)。

この事件では、男性が女性の名字を「ちゃん付け」で呼んだことや、「体形いいよね。俺なんかガリガリだよ」という体形などに関する発言が違法なハラスメントに該当すると判断されました。

 

「なんで、『ちゃん付け』がセクハラなんだ?」と思われる方もおられるかもしれません。

判決は、一般的に「ちゃん付け」の呼称が使われるのは子どもや交際相手など親密な関係の場合だが、女性と加害男性は勤務先が同じ従業員同士にすぎないと指摘しました。

 

何がセクハラに該当するかは「言葉探し」ではありません。互いの人間関係の上下・遠近や親密さに配慮して言葉を使うということが大切です。

2025年10月24日午後5時過ぎから、京都弁護士会主催の毎年恒例のパレードが行われ、参加してきました。

当事務所からも弁護士や事務局員も多数参加しました。市民の皆さんの参加もありました。

 

例年は、夏にパレード終了後のビアパーティーと同時に行われてきましたが、ここ数年の猛暑のため、秋に行われるようになりました。

 

今年のテーマは、「再審法改正」と「選択的夫婦別姓制度」で、いずれも日本弁護士連合会の重点課題となっています。秋に開催される予定の臨時国会において実現させるべく、パレードのテーマとなりました。

 

本年度の弁護士会の会長・副会長の皆さんです。

パレードの先頭を歩きます。

 

 

パレードは、京都弁護士会から検察庁・京都府警本部前まで。

「再審法改正」については検察庁や府警本部前では、一段とシュプレヒコールの声が高まりました。

 

 

「森は海の恋人」~故畠山重篤さん~

事務所では、新聞4紙を購読しているので、毎朝、新聞各紙にざっと目を通した後、4紙とも新聞1面下段のコラム欄を音読している。

なんのことはない、声の老化防止のためである。

 

単に老化防止のための音読だが、これらコラム欄には、歴史、人、自然、政治などなど、実に様々な分野の内容がコンパクトに書かれており、元新聞記者の知人に尋ねると、数人で分担執筆されているそうだが、その博識には敬服するし、とても勉強になる。

 

「畠山重篤(はたけやましげあつ)」さんのことも、2025年4月に81歳で亡くなられたことに触れた新聞コラム記事で初めて知った。

「森は海の恋人」という素敵な言葉とその言葉の持つ意味の深さに興味を持ったので、それ以降、彼に関する新聞記事をコピーして保存しておいた。

 

そんな折り、名古屋で環境問題に取り組んでいる高校時代の友人が京都に来てくれたので、久しぶりに出会い、彼女から「センス・オブ・ワンダーを語る」という本をいただいた。

この本は、レイチェル・カーソンの遺作「センス・オブ・ワンダー」の出版60年を機に、レイチェル・カーソン日本協会が開く講演会などで語られた4名の方の生命をめぐる話を集めた記録である。

偶然にも、その中に「畠山重篤」さんの講演と対談が掲載されていた。

 

「森は海の恋人」という素敵なフレーズそのものが、畠山さんの活動を見事に示している。

畠山さんは、宮城県気仙沼市舞根湾(もうねわん)でカキを養殖する漁師でありながら、1989年から気仙沼湾に注ぎ込む川の上流にある室根山に植樹を始めた。カキを育む海の養分は川がもたらす。森の土に含まれる養分が川から海に注がれるからだ。ならば水源の森を豊かにしなくては、と。

 

畠山さんの講演録を読んで、新たに知ったことがあった。

カキを育む海の養分は、植物プランクトンだ。その植物プランクトンを増加させるのは、1つには川から海に流れてくる腐葉土があり、その中に植物プランクトンの肥料になる成分も含まれている。そして、もう1つ。腐葉土のほか、地質に含まれている成分のうち鉄分は植物プランクトンの繁殖に不可欠であることがわかったという。広島のカキも宍道湖のしじみも鉄分と関係があった。

 

また、2011年3月の東日本大震災後の様子も気になったところだった。

畠山さんは、津波で母親を失い、カキの養殖場は流され、被害額は2億円。生き物が消えた海に絶望しかけた。だが、気仙沼の海に流れ込む大川にはダムがなく、それによって、震災後もカキの餌である植物プランクトンが潤沢にあり、カキ養殖は復活した。

 

学問の世界も政治の世界も、海、川、農地、山と、分野が分かれているが、本当は、それらはすべてつながっていることを知ることが大切であることを教えられた。

畠山さんは、子どもたちに環境教育を実践したり、執筆活動を行ったりと、多彩な活動を展開した。

そして畠山さんの言葉、「大切なのは、人の心に木を植えることです」

 

 

 

 

 

2024年1月1日16時10分、能登半島に震度7(マグニチュード7.6)の巨大地震が襲いました。

そして、地震からまもなく2年が経過しようとしています。

そんな今、2025年10月13日、ようやく自分の目で能登の被災地の現状を垣間見ることができました。

 

阪神淡路大震災が起きたのが1995年1月17日。発生後しばらくして、まだ交通機関も十分復旧していない中、青年法律家協会京都支部の有志約10名余で神戸を訪れました。私も参加して現地を見、被災者の方々との交流等を行いました。

でも、2011年3月11日に起きた東日本大震災については、震災後、現地に足を踏み入れることができませんでした。

だから、能登半島地震が起きた後、京都からの距離が比較的近いこともあり、何らかの形で是非足を踏み入れてみたいと思っていました。

今般、京都弁護士会内の四一会(よんいちかい)という会派の結成50周年として「能登半島地震被災地の視察&支援旅行」が企画されたため参加し、私の中で、ようやく能登被災地訪問が実現しました(当事務所からは、金杉弁護士と秋田弁護士も参加)。

 

能登半島地震の現状については、京都の(株)きかんしコムで働いておられた庄見二三男さんが2024年3月定年退職後の4月に能登に行かれ、それ以降は、「能登半島地震被災者共同支援センター」を拠点に現在も活動しながら被災地の状況の発信を続けられています。

そんな庄見さんの発信記事を読むにつれ、地震そしてその後襲った豪雨によって被害が広がり、にもかかわらず復旧が一向に進まない奥能登の現状がとても気になっていました。

 

今回の1日わずか数時間の調査で、私たちが見たものは、おそらく被災地のほんの一部だと思います。最近では、新聞報道もあまりない中で、能登が「見捨てられている」感を強く感じました。

調査については、共同支援センターの黒梅事務局長から案内・説明をしていただきました。

 

私たちは、前日、石川県羽咋(はくい)市に宿泊し、13日は、そこから「のと里山海道」を北上した後、珠洲市の東海岸と西海岸、輪島などを回りました。

私は、これまで能登半島は、中間辺りの能登島までしか行ったことがなく、最北まで行くのは初めてでした。

2024年秋、石川県金沢市に短時間立ち寄ったことがありました。金沢市は京都と同様たくさんのインバウンド客が訪れ、街には地震があったことなど全く感じさせないほどの活気がありました。

しかし、私たちが羽咋市から北に進めば進むほど、景色が一変しました。別世界でした。

屋根に青いビニールシートがかけられた住宅も目立ち、道路の至るところが陥没したままだったり、工事中だったりでした。道路も奥能登まで道はつながっているものの、ドライバーから「道路が波打っていて、車酔いするかもしれない」と言われるほど杜撰な工事による道路状況でした。

 

車の中で黒梅さんの説明を聞きながら、しばらく被災地を進んだ後、最初に下車したのは、珠洲市の東海岸の見附島(みつけじま)が見える場所でした。

 

 

能登半島では、東海岸では沈降と津波が、西海岸では隆起(2~4m)が起きたそうです。

見附島は能登半島の東側の景勝地で、軍艦のような形をしていたところから「軍艦島」と呼ばれていましたが、目視では島の先が崩落していました。

 

また、付近には、たくさんの仮設住宅が建ち並んでいました。

さすがに道路上に流木などはありませんでしたが、道路脇の電柱は倒れたり傾いたりしたままとなっているものもあり、解体もされず荒れたままになっている民家もたくさんありました。

 

 

西海岸の曽々木海岸(そぞぎかいがん)です。珠洲市との境に近い輪島市にあります。洞門や奇岩が続く景勝地でしたが、窓岩は崩れ、海岸には岩が隆起し流木やゴミなどが放置されたままでした。

 

 

名舟(なふね)漁港です。海底が隆起したため、岸壁に船が接岸できなくなったり、港に船が出入りできず、放置されたままになっています。

 

 

白米(しろよね)千枚田です。輪島市白米町にある棚田で、日本の棚田百選にも選ばれています。地震で水が引けなくなって稲作ができなくなりました。それでも修復を続け、少しだけ田植えも行われているようです。

 

 

西海岸の景勝地付近は、元々簡易水道で、復旧が難しく、集落自体は人が居住できない状態だそうです。空き屋が多く見られました。

 

輪島の朝市があった場所は、跡形もなく、雑草が生い茂っていました。

 

鹿磯漁港。ここは4mも隆起したそうです。水面がかなり下なので、船が接岸できません。

 

 

たくさんの仮設住宅がありました。現実にたくさんの人が生活されています。防音も断熱もなく劣悪な住居環境だそうです。そんな仮設住宅でも、原則2年で退去しなくてはなりません。

なんとか自宅建物が残っていても、遠方の役所まで出向かないと公費解体の申請ができない、資材高騰や大工不足、水道がいまだ復旧していない、そもそも金がない、などなど、国や自治体がもっと力を入れなくてはならないところが、「見捨てられたまま」となっています。

大阪万博によって能登に建設業者や職人が不足し、能登全体の復旧が著しく遅れたことは明らかだと思いました。

 

実際に被災地に行かないとその現状は伝わらないと強く感じましたが、私たちが見たものは、能登被災のほんの一部だったと思います。

 

10月17日付け京都新聞の朝刊では、石川県外に身を寄せる人達の避難生活が長期化し、生活再建の目処がたたない上に、避難先の京都府・京都市の公営住宅の無償提供期限が12月末に迫り、不安を募らせている人も少なくないという記事が掲載されました。

 

私たちが弁護士として何ができるのか、考えなくてはいけないと思いました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

拍手、両手ぶつかる音じゃなかった

こんなタイトルの記事が、2025年9月9日付け朝日新聞朝刊に載っていました。

 

「拍手」の練習ってしたこと、ありますか?

実はダンスの中で、おそらくフラメンコだけには、手拍手(スペイン語でパルマと言います)が伴います。

ですから、私がフラメンコを習っていた時は、パルマの練習もしました。

低い音と高い音とでは、手をたたく場所もたたき方も異なっています。良い音を出すのはなかなか難しく、一生懸命練習しました。

 

朝日新聞の記事には、「拍手の音の正体は、両手がぶつかりあう音ではない」「空きびんに息を吹き込んだときに音が鳴るのと同じ現象」という米日の研究チームの成果が米科学雑誌に掲載された書かれていました。

 

人の手というやわらかいもの同士の衝突と音波の伝わりがからんだプロセスは複雑で、音が出る仕組みや音の特性は詳しくわかっていなかったようです。

米コーネル大などの研究チームによると、手と手とぶつかった瞬間はほぼ音がせず、両手の間の空洞の空気が、親指と人差し指の根本のすき間から噴き出す時に音が出ることがわかりました。

そして、その音の周波数は、「ヘルムホルツ共鳴」と呼ばれる現象の理論式から導かれるものと一致しました。

空きびんの容器に息を吹き入れた時、「ぼーっ」と音が出るように、拍手では、「両手の空洞」が容器、「親指と人差し指の付け根にできるすき間」が開口部に対応するそうです。

 

面白いですね。

 

 

 

 

 

 

月別アーカイブ

弁護士紹介TOP