文部科学省が、紙の教科書の「代替教材」としているデジタル教科書を正式な教科書に位置づけた上で、紙とデジタルのどちらを使うかは各教育委員会が決める「選択制」の導入を検討していることがわかった。来月中にも中間報告をまとめる予定。(2025年1月19日付け読売新聞)。
デジタル教科書は、紙の教科書と同じ内容をデジタル化したもので、生徒は一人1台の学習用端末で見ることができる。「当面は紙と併用」する方針を定め、2024年度から小学5年生以上の英語と算数・数学の一部で導入している。
しかし、学校現場では、デジタル教科書が導入された後も、ほとんどの学校は紙の教科書で授業を行っており、浸透していない。そこで、文科省は、デジタル教科書の使用拡大を図るため検討を行っているようだ。
学校教育法は、検定を経た紙の教科書を正式なものとし、デジタル教材は、検定の対象外で、必要があると認められる教育課程の一部に使用することができると定めている(34条)。
従って、デジタルを正式な教科書として使うには学校教育法の改正が必要となる。
他方、2024年10月22日付け読売新聞では、IT先進国のスウェーデンでは、2006年からデジタル教材への移行が進んだが、2023年には学習への悪影響があるとして紙の教科書や手書きを重視する「脱デジタル」に大きくかじを切ったとの記事が掲載された。スウェーデンでは近年子どもの学力を図る国際調査で成績の落ち込みが目立つようになった。子どもたちの集中力が続かない、考えが深まらない、長文の読み書きができないなど画面ばかりに目が向く弊害が生じているという。
デジタル教科書を正式な教科書とするには、他国での前例や研究も踏まえ、長時間かけた実証研究をする必要があることは研究者が指摘するとおりである。
くれぐれも教育現場において子どもたちがその実験台にならないように。