1. 2025年5月

2025年5月アーカイブ

宇多田ヒカルと夫婦別姓

自民党が今国会に夫婦別姓に関する法案提出を断念したという報道があり、野党も足並みがそろっていない。

1996年に法制審議会が夫婦別姓選択制を導入する民法改正要綱案を答申してから既に約30年が経過しようとしている。

この国では、いったい、いつになったら法制化が実現するのだろう・・・

 

そんな中、宇多田ヒカルの新曲が物議をかもしていることを、2025年5月21日付け毎日新聞夕刊の中森明夫氏のコラムを読んで初めて知った。

ネットで調べてみると、宇多田ヒカルの新曲「Mine or Yours」の中で、「令和何年になったらこの国で/夫婦別姓OKされるんだろう」という歌詞が確かにあった。

 

上記コラムによると、「夫婦別姓」のワードを歌詞にしたのは、我が国ポップスで初とのこと。この問題に関心の薄い膨大な数の若者たちが「夫婦別姓」という言葉を一斉に検索した、と中森氏は続ける。どんな政治家や社会運動家よりも宇多田は「この国を前に進めた」と思う、とも。

 

私は昭和世代だから、宇多田ヒカルよりは、母親の藤圭子の方に親しみを感じる。

でも、宇多田ヒカルが1998年末に15歳でデビューした時の印象は強烈で、デビュー曲の入ったCDは購入してよく聴いていた。

現在は、ロンドンに在住するシングルマザーで、4年前にノンバイナリーであることを公表したとのこと。

 

多様性が叫ばれる今日、夫婦の姓についても当然選択の自由が尊重されるべきであり、人気のアーティストがこのような新曲を発表してくれたことは、とても嬉しい。

ホセ・ムヒカ元ウルグアイ大統領死去

ホセ・ムヒカ南米ウルグアイ元大統領が、2025年5月13日、89歳で亡くなった。

 

ムヒカさんは、2010~15年に大統領を務めた。大統領時代、豪華な公邸には住まず、畑の中の古屋から通い、収入の9割を貧困層に寄付、生活費は毎月約15万円相当だった。

「世界で最も貧しい大統領」と呼ばれたが、来日した2016年の朝日新聞のインタビューでは、「質素なだけで、貧しくはない」と語った。

「何もかも持って満たされている人が、さらに『これが欲しい』『あれが欲しい』というのが貧しさだと思う」とも語ったという。

「私たちは経済発展をするために、この地球にやってきたわけではありません」とも。

 

ムヒカさんの半生を描いた映画が日本で上映されたこともあり、私も観に行った。

 

「裏金」にまみれ、新人議員1人につき10万円もの商品券を配布するような総理を輩出する政権政党には、ムヒカさんの爪の垢でも煎じて飲んでほしいものだ。

 

私自身はムヒカさんの足元にも及ばないが、ムヒカさんの遺志を常に頭の片隅に置いて生きていきたい。

 

 

2025年5月11日付け京都新聞の1面「天眼」に載っていた上野千鶴子さんの「トイレに月経用品を必置に」という論稿を読み、あらためて「月経」「生理」について考えてみた。

 

まず、上野さんも冒頭で「驚いた」と書いているように、今から半世紀以上前の1973(唱和48)年に東北大学の女子学生たちがトイレに生理用品無料設置要求運動をやったということを上野さんの論稿で知り、私も驚いた。

「資料集:50年目の生理用品 東北大学生理用品無料設置要求運動の記録1973-1976」という本が出版されていることを知った。是非、読んでみたいと思った。

 

振り返ると、「月経」「生理」は、私が子どもの頃は、その言葉すら、あまり口にできないものだった。

女だけ、なぜ毎月こんなに苦しい思いをしなくてはいけないんだろうと思った。

「生理」日と試験や体育・スポーツ、旅行などに重なると、なんて不公平なんだろうと思った。

 

高校生くらいからは女友達同士の間では話題にすることはあったが、成人しても男性との間では夫以外とは話題にすることすらなかったように思う。

いわば「タブー」視するものだった。

弁護士になってからは、職業柄、労働基準法に定められている「生理休暇」の権利が取得しずらいという労働実態との関係で、「生理」を含め母性保護の講演等する機会を持ってきた。

 

コロナ禍をきっかけに、ここ数年、経済的な理由等で生理用品を購入することができない女性がいるという「生理の貧困」が社会的な問題となり、内閣府男女共同参画局や自治体のホームページなどでも取り上げられ、「生理」「月経」の話題がようやくネットなどでも割とフランクに語られるようになってきた。

「生理の貧困」が社会問題になるのは、それだけ女性が困窮していることを物語っている。

最近では駅のトイレでさえ、トイレットペーパーが備え付けられ、温水便座が設置されている。ならば、生理用品の無料設置ももっと広がってほしい。経済的な理由でなくても、突然の生理で困った経験のある女性は少なくないと思う。

 

とても驚き感動したのは、NHK朝ドラ「虎に翼」で主人公寅子が生理痛で大学を4日間も休む場面が丁寧に描かれていたことだ。過去のドラマで主人公の月経のことが描かれたことを観たことがなかったからだ。

 

「生理」についてフランクに語れる機会や情報発信の場がもっと広がることを願う。

 

 

 

 

 

「バリ山行」(松永K三蔵 著)を読んで

松永K三蔵さんの「バリ山行」(ばりさんこう)は、2024年第171回芥川賞受賞作品である。

 

今年直木賞を受賞した伊与原新さんのことを書いた、2025年1月26日付け当ブログでも、私はこれまで芥川賞も直木賞もいずれの受賞作品にも注目したことがなかった、と書いた。

「バリ山行」も、その描かれている題材が登山、しかも「バリ」であることから読んでみようと思ったにすぎない。

 

「バリ山行」とはバリ島の山のことではない(笑)。

「バリ」は登山用語でバリエーションルートまたはバリルートと呼ばれるもので、整備された登山道ではなく、地図上に点線となっていたり、そもそも載っていなかったりする難所ルートのことを言う。

長年登山を趣味としてきたが、私の山仲間の中にもバリルート好きがいる。

でも、私自身は、基本、地図に載った登山道しか歩かない。地図に載った登山道でも、薮が覆い繁って道が見えず薮をかき分けて進まなければならない場合もあるが、でも確かに道は存在する。バリールートはそもそも道がない所や踏み跡を探しながら歩く。

 

本書は、内装リフォーム会社に転職した主人公波多(はた)が、同僚に誘われてレクリエーションとして六甲山を歩いたことをきっかけに山に登るようになる。他方、社内では業績不振によるリストラの噂も持ち上がっている。そんな中、同じ会社のベテラン社員妻鹿(めが)が単独で毎週のように山に行きバリルートを歩いていることを知った波多は、バリ山行に興味を持ち、妻鹿に一緒に連れて行ってほしいと頼む。波多も六甲山のバリルートに挑むが・・・

 

普段は登山道しか歩かない私でも、バリルートを知らないわけではない。それは、過去、何回か道迷いをして、その時は、まさに薮をかきわけバリルートを進まざるを得なかったからだ。

作者の松永さんは登山を始めてからまだ5年程しか経っていないようだが、本書の中でのバリルートの描写はとてもリアルで臨場感があり、私自身もその場面を具体的に想像できてしまうので、読みながら恐怖感がわいてくる。

歩きながらも会社のリストラのことが頭から離れない波多に対し、妻鹿は「会社がどうなるかとかさ、そういう恐怖とか不安感ってさ、自分で作り出してるもんだよ。・・・それは本物じゃないんだよ。まぼろしだよ」「バリやってると・・・確かなもの、間違いないものってさ、目の前の崖の手掛かりとか足掛かり、もうそれだけ。それにどう対処するか。これは本物。」と言い切る。

 

きっと妻鹿は、バリルートを歩くことによって、人生の生きる意味や喜びを感じるんだろうなと思った。

 

人がなぜ山に登るのかは人それぞれに理由は異なる。

でも、山への挑み方のどこかにその人の人生観や価値観が反映されるものと思えてならない。

「登山道」は、自由気ままさと引き換えに、安全が保障された場所だ。

私は、これからも決して「バリ山行」することなく、登山道だけを歩くだろうと思った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

初めての「茶摘み」

5月5日快晴。今日は、山仲間のHさん、そしてその知人の皆さんとで宇治へ「茶摘み」へ。

昨年、Hさんから「茶摘みに行った」という話を聞いて、次回は是非誘って欲しいとお願いしていた。

長年、京都に住んでいても「茶摘み」は初体験。

 

子どもたちも含め総勢9人。JR黄檗駅で待ち合わせて、徒歩で茶園に向かう。

 

茶園

 

黒い覆い(「寒冷紗」=かんれいしゃ)の下に茶畑がある。

日光を遮ることで、渋味の成分であるカテキンの発生を抑える。一方で、うま味成分のテアニン(アミノ酸)が茶葉に行き渡り、甘みとともに凝縮される。

覆いがあるので、日焼けは気にしなくてよく助かる。

茶摘み用の大きな籠と摘んだ葉を入れる網を渡されて、摘み方の説明を聞く。

柔らかい新芽だけを摘み取る、他の硬い葉は一緒に混ぜたらダメと。

うまくできるかなあ・・・

 

覆いの中の茶畑

 

作業風景

 

午前2時間(10~12時)、午後2時間(12時半から15時)。ただただ無心に摘み取っていく。葉にさわった感触で、摘むべき葉がわかる。

午前と午後の最後に、摘んだ茶葉を計量し、そのグラムに応じて、後日、作業代金が届くとのこと。

 

いやあ、ひたすら摘むべき葉を探し摘んでいく作業は、日常生活のあれやこれやを何も考えることもなく集中できて、とても楽しいひとときだった。

 

はまりそう・・・

 

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