1. 2022年11月

2022年11月アーカイブ

軍隊を持たない国コスタリカ

昨夜(2022年11月27日)のサッカーW杯カタール大会での、日本vsコスタリカ戦は、0:1という残念な結果となった。ドイツ戦に勝利しただけに、落胆感は強い。でも、次を目指して頑張ってほしい。

 

ところで、コスタリカは、中南米にある共和制国家で、人口は約500万人。

そして私たち法律家の間では、「軍隊を持たない国」として有名である。

 

戦争をしないという平和憲法がある点では日本と同じだが、コスタリカは日本の自衛隊のような組織もないのである。

1949年から憲法で常備軍を廃止し、軍事予算をゼロにした分は、教育や医療に振り向けられた。内線という悲しい過去から、すべての軍事費用を教育に充てる方が幸せになれるという考えからだ。戦争をしないばかりか、米国の基地設置を拒否し、警察官が銃を持たないなど、徹底して平和を守っている。

更にコスタリカは、1983年に積極的永世非武装中立を宣言。近隣国の紛争終結を仲介して1987年にノーベル平和賞を受賞したオスカル・アリアス元大統領は、「無防備こそ最大の防御です」と強調する。

「侵略されない努力をずっとしてきていること」「周辺の国からも平和の国としてみとめられていること」などを理由に、国民は、戦争を仕掛けられることはないと自信を持って暮らしている。

 

一方、同じ平和憲法を持つ日本における現政府は、今、ロシアのウクライナ侵攻などで危機感をあおり、「反撃能力(敵基地攻撃能力)」の保有や大軍拡計画によって防衛予算を膨大化させ、それを国民に対する増税でまかなおうとしてる。そして、教育・医療・福祉など、国民にとって重要かつ基本的な政策がどんどん改悪されている。

 

私たちは、コスタリカに学び、もう1度、戦争を放棄した平和憲法の持つ意味を考える必要がある。

 

 

 

 

 

最近、よく街で見かけるウーバーイーツの配達員。

リュックのようなおおきな鞄を背負い、自転車やバイクで、

飲食店の料理などを運んでいます。

 

この配達員は、ウーバー側と雇用関係を結ばず、

「個人事業主」として、アプリを通じて飲食宅配代行の

仕事を請け負っています。

全国で13万人以上いると言われています。

 

このウーバー配達員について、東京都労働委員会は、

2022年11月25日、労働組合法上の「労働者」と

認める判断をしました。

配達員らは、2019年に「ウーバーイーツユニオン」という

労働組合を結成しました。

配達中の事故の補償や報酬決定の透明性などについて

団体交渉を求めましたが、会社は配達員が個人事業主で、

団交に応じる必要はないと主張していました。

働委員会は、

①配達員は、飲食宅配事業に不可欠な労働力

②契約内容は会社が決め、配達員は個別に交渉できない

③配送料は配達員の労務の対価である

などとして、労働者にあたると判断しました。

 

待遇改善に1歩道が開かれましたが、

立法的な保護も求められています。

 

 

 

 

 

 

 

 

「人間の証明」(森村誠一 著)の旅

田中陽希さんの日本300名山人力踏破のテレビ番組を観て、群馬県にある、まるで軍艦のような山容の荒船山(1423m、日本200名山)に登ってみたくなり、山仲間4人で11月5~7日、群馬県を旅した。

 

いつも登山計画を立ててくれるA弁護士から、11月6日荒船山下山後に、森村誠一の小説「人間の証明」の舞台の1つとなった霧積温泉(きりづみおんせん)の金湯館(きんとうかん)に泊まる計画を立てたとの連絡が来た。

 

小説「人間の証明」は、昭和52年初版で、映画やテレビドラマにもなった作品である。

作品のモチーフとなった西条八十の詩はあまりにも有名である。

 

母さん、僕のあの帽子、どうしたでせうね?

ええ、夏碓氷から霧積へいくみちで、

渓谷に落としたあの麦藁帽子ですよ・・・

 

 

 

私も大学生の頃に読んだことがあったが、「霧積温泉の金湯館」なんて出てきたかな?とほとんど忘れている状態であった。

そこで、古い文庫本を出してきて、読み直して旅にそなえた。

さすが、森村誠一の小説は、1度読んだものでも面白い。どんどん読み進み、まる1日で読み終えた。確かに、「霧積温泉の金湯館」はストーリーの重要な舞台の1つだった。

 

「霧積温泉の金湯館」は、電車では信越線の横川駅で下車。そこから霧積までは歩くと4時間くらいはかかるらしい。

金湯館には一般車は入れないので、山の中のヘアピンカーブを何度も反復した先にある無料駐車場に車を駐車して宿の車で迎えに来てもらうか、駐車場から約30分の山道を歩いて登っていくしかない。

私たちは、神奈川のN弁護士の車に乗り、午後5時を過ぎて日もとっぷり暮れた暗闇の中のヘアピンカーブを走行し、駐車場で宿の送迎車に乗り換えた。

金湯館は山小屋の趣を残す宿だった。

 

 

霧積温泉は、古くから湯治場として知られ、明治21年の開発以後は、多数の別荘や商店などが開業し、明治の政界人・文士・外国人などが人力車で来遊したと言われ、一時期大発展したそうである。

伊藤博文が明治憲法を起草するため宿泊したことがあり、その部屋には今も泊まることができる。

作家森村誠一は、大学3年生の時、山道を歩いて金湯館までたどりついて1泊し、翌朝、鼻曲山(はなまがりやま、1654m)という山を通って浅間高原に抜けた。森村は、鼻曲山の手前で宿が用意してくれたおにぎり弁当を食べたが、その包み紙に刷られていたのが、冒頭の「麦わら帽子」の詩であった。

その詩に激しく感動した森村は、20数年後、その詩をモチーフにして代表作「人間の証明」を執筆するに至ったのであった。

 

翌日、私たちは、森村が浅間高原に抜けるために通過したという鼻曲山に登った

 

 

 

当初11月7日は妙義山(表)に登る予定であったが、旅の前日の11月4日、A弁護士から急遽「鼻曲山に変更する」という連絡が入った。

こんな機会でもない限り、鼻曲山に登ることはないから、という理由だった。

A弁護士は森村誠一と「人間の証明」の世界にどっぷりと浸りたかったに違いない。

 

霧積温泉は10月末頃が紅葉の見頃らしいが、登山口に近い登山道脇には、まるで錦絵のような美しい紅葉の樹林が広がっていた。

 

 

鼻曲山山頂では、森村と同じように、宿で作ってもらったおにぎり弁当を食べた。

そして包み紙には今でも西条八十の「麦藁帽子」の詩が印刷されていた。

 

 

次に金湯館を訪れる機会があれば、伊藤博文が明治憲法を起草した部屋に泊まり、西条八十が帽子を落とした渓谷のある場所まで行ってみようなどと話しながら、霧積温泉をあとにした。

 

 

 

 

 

 

 

 

土曜日午後10時からNHKで放映されているドラマ「一橋桐子の犯罪日記」。

毎週楽しく観ているが、今週土曜日(11月5日)でもう最終回らしい。

 

かつて恋愛ドラマのヒロインだった女優松阪慶子が、太った体格と年齢を生かし(?)、コミカルに老女「一橋桐子」を演じている。

同居していた友人が亡くなり、家賃も支払えなくなった桐子は、家賃はタダで三食付きの刑務所に入りたいと考え、様々な「犯罪」に挑んで「ムショ活」するというストーリー。

桐子のような独居老人が置かれている状況は、単にドラマの世界だけではなく、現実だ。

 

そして、生活が苦しく、刑務所に入りたくて犯罪を犯すというのも現実に存在する。

 

かつて国選の刑事事件で、万引きをした初老の男性の弁護をしたことがある。

スーパーで数百円の品物を万引きしたということで逮捕勾留され起訴された。彼には前科がいくつかあった。

彼は、仕事をクビになり、刑務所に入りたいと今回万引きをしたと語った。

 

刑事裁判では、保護観察付き執行猶予という判決だったので、生活保護という制度があることを説明し、保護観察所まで送っていった。その時は、立ち直ると約束してくれた。

しかし数年後、彼がまた万引きで検挙され裁判になったと、その時に国選弁護を担当してくれた弁護士から連絡を受けた。彼は実刑となった。

 

刑務所内の受刑者の高齢化も深刻とのこと。

これが今の日本社会の現実である。

 

 

容認できない「マイナ保険証」

政府は、2022年10月、健康保険証を2年後に廃止して、マイナンバーカードに切り替えるとの方針を発表した。

新聞各紙は、一斉に、この「マイナ保険証」は「事実上の義務化」だと報じた。

 

マイナンバーカードは、本人の申請によって交付されるもので、法律上は任意である(17条1項)。

仮に、岸田首相が言うように、カードを持たない人には健康保険証に変わる何かが出来ても、カードの有無によって医療費の金額が異なるようなことになれば、それこそ事実上の強制であり、法の下の平等にも反する。

 

このように政府が強硬的な政策をとるのは、6年かけて、そして2万円ものマイナポイントを付与するとしても、やっと5割にしか普及していないという事実が背景にある。逆に言えば、ポイントという「エサ」で釣っても、5割にしか達しなかったのである。

 

そもそもなぜ普及が進まないかを考えるべきである。

私たちの行動履歴情報などの個人情報を国に把握されたくないという意識のほかに、個人情報漏洩に対して心配や危惧する声が大きい。

政府の個人情報保護委員会が2021年度分の管理状況の報告を2022年10月にまとめたところ、約45%の自治体が業務委託をしており、マイナンバー管理の不備が目立ったという(2022年10月30日付け朝日新聞朝刊)。また、委託業務のうち20%が別の会社に再委託されていることもわかった。更に、今年6月には、委託業者が発注者とは別の自治体にデータを納品したという「重大事案」ケースも発生している。自治体が個人データを誤送付したり、第三者が閲覧できる状態にしたりしていた例もあった。

これでは国民は安心してマイナンバーカードなど作成できない。

 

マイナンバーカードが出来た当初は、秘密とすべきものとされ、保険証などのように日常的に持ち歩くことなど全く念頭に置かれていなかったはずである。

 

「マイナ保険証」など断じて容認できない。

 

 

 

 

 

 

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