1. 2023年5月

2023年5月アーカイブ

DV防止法(正式名称は「配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護等に関する法律」)の改正が2023年5月12日成立しました(施行は2024年4月1日)。

 

DV防止法は、被害者からの申立てにもとづき、裁判所が相手方配偶者に対し、被害者の身辺へのつきまといや住居等の付近の徘徊などの一定の行為を禁止する命令を出す制度です。

 

今回の改正では、DV被害に「自由、名誉、財産に対する脅迫」が追加され、「精神的DV」が保護命令の対象に加わりました。

また、接近禁止命令等の期間を6ヶ月から1年間に伸長しました。

禁止する連絡手段には、電話やメールだけでなく、緊急時以外の連続した文書の送付やSNSの送信も加えられました。

更に、命令違反の場合の罰則も強化され、現行の「1年以下の懲役または100万円以下の罰金」から「2年以下の懲役または200万円以下の罰金」となりました。

 

被害者保護が保護が強化された内容となっています。

 

ただ、神奈川大学井上匡子教授が指摘されるように(2023年5月13日付け京都新聞夕刊)、日本のDV防止法は、被害者が逃げることが前提とされており、海外のような「DV罪」の新設や加害者の更生プログラムの導入も検討されるべきと思われます。また、自治体毎で被害者支援の内容が異なるため、全国どこでも充実したサポートを受けられる体制を国が作ることが求められます。

 

 

2023年5月9日付け朝日新聞夕刊に面白い記事が掲載されていた。

黒部峡谷にある宇奈月温泉で「権利ノ濫用除お守り」ができた。

権利を振りかざしてあなたを害する人物や出来事を除(よ)け、良い縁を結ぶお守りだという。

 

私たち法律家は、法学部の大学生時代、「民法総則」という法律を学び始める最初の頃にこの「権利の濫用」という言葉を学ぶ。れっきとした法律用語だ。

その時に出てくる事件が「宇奈月温泉木管事件」。1935(昭和10)年10月5日に大審院の判決が下されている。

当時、宇奈月温泉は、黒部川上流の黒薙温泉から引湯管(木管)で湯を運んでいた。その際、約2坪の土地について利用の許諾を得ていなかったところ、この土地を購入した所有者が、温泉を運営する黒部鉄道(当時)に対し、木管の撤去と立ち入り禁止を求めて訴えたという事件である。

大審院は、双方の利益を比べ、土地所有者の主張を「権利の濫用」として訴えを退けた。

大審院が「権利の濫用」を初めて明示した判決であった。

 

そして、現行民法1条3項に「権利の濫用は、これを許さない」という規定が設けられた。

 

更に、上記新聞記事を読み進めると、宇奈月ダム湖の湖畔には、事件の舞台であることを示す石碑があるとのこと。宇奈月温泉には何度か訪れたことがあるが、これは知らなかった。1度訪れてみたいものだ。

 

そして、訪れた人に喜んでもらえる土産ができないかと議論の末に生まれたのが宇奈月神社の「お守り」だった。今年4月初めから発売されて1週間で欠品になるなど予想以上の反応で、全国から取り寄せ希望もあるとのこと。

 

「権利の濫用」が思わぬ町起こしに役立っている。

 

 

 

 

 

久須夜ヶ岳から蘇洞門へ(海を眺める山歩き)

今年のGW前半の天気はあまり良くなく、GW後半も少し前までは雨予報だった。だから、登山計画をなかなかたてることができなかった。

しかし、直前になって、5月3・4日が晴れ予報に変わったので、5月4日、山仲間のA弁護士に誘われ、4人で福井県の山歩きに出掛けた。

 

A弁護士は、最近「海を眺める山歩き」にはまっている。

「海を眺める山歩き」という本が出版されており、著者の草川氏はA弁護士の知人とのこと。

今回は、福井県小浜市の内外海(うちとみ)半島にある久須夜ヶ岳(くすやだけ。618.7m)から蘇洞門(そとも。0m)まで下るというコースだ。

 

蘇洞門は、内外海半島の先端にある景勝地で、約6キロに渡り奇岩が続く。

通常は、若狭フィッシャーマンズ・ワーフから観光船に乗り、海側から景観を楽しむ。その蘇洞門まで、山側から下ろうという山歩きだ。

 

5月4日は快晴。

久須夜ヶ岳山頂までは、エンゼルラインという自動車道を車で上がった。

駐車場からの景色は、360度の展望で絶景である。「すごい!」という言葉しか出ない。

この絶景を見られただけでも、ここまで来た甲斐があった。

 

 

 

駐車場近くに蘇洞門への入り口があった。駐車場が標高約600mだから、蘇洞門がある海抜0mまで600mの標高差を往復することになる。

エ~ッ5時間もかかるの!?

 

 

 

登山道はほぼほぼ下る一方。滑らないよう慎重に下るが、道幅は広く歩き易い。海は見えないが、木々の新緑が美しい。

「泊乗越」(とまりのっこし)という分岐を過ぎると、片斜面の細いトラバース道となり、傾斜が緩やかなので、なかなか下っていかない。

 

トラバース道が終わると、また、急坂を数カ所下る。

 

 

 

最後はコンクリートの階段となり、突然、眼の前が開け、海・断崖・岬などの景色が飛び込んできた。そして蘇洞門に到着した。

蘇洞門は陸側からでも感動的な素晴らしい景色だった。

 

 

 

入り江に観光船が入ってくる。船着き場はあるが、今は、観光客は下船はできないとのこと。

 

 

 

蘇洞門と日本海を眺めながら、久しぶりに焼き肉の昼食。

 

 

蘇洞門の入り江で約1時間半程のんびりする。

 

名残はつきないが、蘇洞門を後にして、下山してきた道をひたすら登り返す。先に下山したせいか、上りの苦手な私はいつもよりは快調に登ることができた。

 

下り約1時間半、上り約2時間、合計約3時間半だった。

 

初めての「海を眺める山歩き」を堪能した。

 

 

 

 

映画「不思議の国の数学者」を観て

高校時代、「数学は美しい」と語っていた数学の先生がいた。

この映画にも同じセリフが出てきた。

 

GW前に、新聞記事の映画評を読み、GW中に絶対観に行こうと思ったのが韓国映画「不思議の国の数学者」。

GW最終日の7日、大雨の中、映画館に足を運んだ。

 

私は、高校時代、理系教科が苦手だったが、前記の恩師の影響か、なぜか数学だけは好きだった。

ただ、その時は、恩師が言っていた「数学が美しい」という意味はわからなかった。いや、今もわかっていないかもしれない。

大学に進学し法学部生となった私は、大学1回生の教養部の時、どうしても数学の授業を受けたかったが、教養部には数学の授業がなく、わざわざ農学部のクラスの数学の授業を受講させてもらったこともあった。

それも遠い昔・・・今では、「数学」からは縁遠い生活を送っている。でも、「数学」という言葉を聞くと、なぜか心惹かれてしまう。

 

主人公ジウは、秀才が集まる名門私立高校の学生だが、数学が苦手で、貧乏で塾にも行けず、担任からは普通高校に転校せよと迫られている。

そんな彼が、高校の夜間警備員をしている脱北者ハクソンと出会い、数学を教えてもらうことになる。実は、ハクソンは、北朝鮮の著名な数学者であったが、北では数学が戦争に使われることを嫌い、学問の自由を求めて脱北し韓国にやってきた。しかし、韓国では、数学は大学入試の道具としか見られず、失望して、正体を隠したまま警備員として過ごしていたのだ。

 

ハクソンは、ジウに対し、数学は答えが正解がどうかではなく、そこに至る過程が大切だと語る。ジウはハクソンから数学を教わる中で、学ぶことの意味や人生で何が大切かなどを学び成長していく。

他方、ハクソンの過去も徐々に明らかになっていく・・・

 

数学と音楽との融合もあった。ハクソンとジウの同級生がピアノで連弾する円周率の曲は素晴らしかった。

そして、試験問題を盗んだという嫌疑をかけられたジウを助けるために会場に乗り込んだ、ハクソンの演説は最高だった。

 

世代を超えた友情だけでなく、南北問題そして韓国社会の教育にも言及した、とても感動的な作品だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

月別アーカイブ

弁護士紹介TOP