1. 女性弁護士の法律コラム

女性弁護士の法律コラム

 
(女性弁護士の法律コラム NO.181)
 
昨夜(9月25日)のNHKクローズアップ現代のテーマは、「おなかいっぱい食べたい~緊急調査・子どもの貧困~」だった。
 
実は、11月に学校給食費の未納・滞納問題についての講演を依頼されている。
ずっーと、どんな話をしようかと思案を重ねているところであるが、この問題を語る場合には、現在の日本社会における貧困問題には必ず触れないといけないと思っていた。
その意味でも、昨夜の番組はとても参考になった。
 
7月に発表された厚生労働省の調査では、相対的貧困状態にある子どもの割合は、6人に1人と過去最悪の値となった。
番組では、貧困問題に取り組むNPOと新潟県立大学とが共同で、支援世帯の調査を実施したところ、「子ども一人当たりの食費が一日329円」で、ほとんど主食のみの家庭が8割以上あったという。
子どもの成長に必要な栄養が取れないほどにまで食費が圧迫されている実態がある。
 
食の貧困は、子どもの身体の健康だけでなく、自己肯定感を喪失させ、友達が作れないあるいは不登校になるなど学校生活や日常生活にも大きな影響を及ぼす。
 
そんな中で、小中学校の給食費を無料化した栃木県大田原市のとりくみや、東京都豊島区のNPO法人の地域の子向け食堂のとりくみは、注目される。
 
国は、今年1月に子どもの貧困対策推進法を策定したが、食に対する具体策はない。
国としては、緊急に、食に対する踏み込んだ政策を提言してほしい。

 
 
(女性弁護士の法律コラム NO.180)
 
8月26日夜、京都弁護士会で「後見制度信託支援」についての研修があったので参加しました。
京都家裁から、講師として裁判官と書記官が来られ、第2会場も設けられるほどの盛況ぶりでした。
(なお、後見制度信託支援の概要については、2014年8月27日付け「法律コラム:その他」を参照してください。)
 
2012年2月から始まった制度ですが、開始以前から、弁護士会その他の関連団体などが反対の意見書を提出しており、今回の研修は、単に制度の手続きを弁護士に説明するという内容でしたが、あらためて色々問題を感じてしまいました。
 
実際、今後の高齢化社会を見通すと、後見事件は増加する一方で、確かに、現在の家裁の人員では不正事例を見抜くなどの「監督」は困難であろうと思われます。
でも、本来であれば、事件数増加に見合う人員を配置するなり、法定後見監督人との連携を強化するなどの方策が検討されるべきではなかったでしょうか。
 
この制度の最大の問題点は、その「解決」の方策を、民間の大企業である信託銀行に委ねてしまっていることです。
信託銀行にとっては、顧客を確保する手間や努力の必要なく、契約が取れるということになるのです。
しかも、信託契約する際には、原則として、市中銀行の預金などは解約した上で、信託銀行に入れることになるというのだから、信託銀行に移る財産は相当な規模になることが予想されます。
 
また、選任された専門職後見人は、選任後数ヶ月間で、本人の日常生活に必要な支出の見通しと適切な生活支援のプランを計画し、信託財産に入れない必要金額を算出しなければなりませんが、はたして、就任されたばかりの専門職後見人にわずか数ヶ月で本人にとって適切な判断ができるでしょうか。
 
制度はまだ始まったばかりですが、制度の運用を注意深く見守っていかなければならないと思いました。
 
 
 
 

母と子の面会交流

 
(女性弁護士の法律コラム NO.179)
 
Nさんは、事情があって、3人の子どもを置いて、夫と別居した。
子どもは3人共まだ幼く、とりわけ一番下の子どもはまだ1歳だった。
 
Nさんから離婚調停を受けてほしいと依頼された時、何はさておき、子どもとの面会交流は求めなくていいのか尋ねた。
Nさんは、夫との間で面会交流については揉めないと思うと言ったので、面会交流を別事件として申立てなかった。
 
しかし、いざ離婚の調停が進み、その中で面会交流の話し合いが始まると、Nさんの予想に反し、夫は、別居後、子どもが神経質になっているからすぐには会わせられないとか、当面は隔月でしか会わせられないとか言い始めた。
 
そこでNさんと相談し、あらためて面会交流の調停を申し立てた。
その手続きの中で、Nさんは面会条件についてずいぶんと譲歩したが、最後、夫は、子どもの受け渡し場所をどうしてもNさんの自宅にすると言い張った。
しかしNさんは、いくら子どもとの面会交流とは言え、別れた夫に自宅に来られるのは嫌だと言い、その気持ちは私も十分理解できた。
裁判官も夫を説得してくれたようだが、一時は、審判に移行せざるを得ないと覚悟した。
 
その後、急転直下、夫は自宅以外の場所で受け渡しを行うことを了解し、面会交流の調停が成立した。
調停が成立した時、Nさんは、子どもと約9ヶ月間会えていないので、日々成長していく子どもと久しぶりに会うことは嬉しいけど不安だと語っていた。
 
先日、Nさんが事務所を訪れた。
1回目の面会交流日が過ぎた後だったので、「どうだった?」と尋ねると、一番下の子はさすがにキョトンとしていたが、上の二人は「ママー!」って駆け寄ってくれたと嬉しそうに話してくれた。
 
色々あったけど、元夫にも感謝。
 
離れていても良い親子関係をはぐくんでいってほしいと心から思う。
 

 
(女性弁護士の法律コラム NO.178)
 
国連人種差別撤廃委員会は、2014年8月29日、日本政府に対し、ヘイトスピーチ(憎悪表現)問題に「毅然と対処」し、法律で規制するよう勧告する「最終見解」を公表した(2014年8月30日付け朝日新聞朝刊)。
 
裁判所(京都地裁と大阪高裁)もヘイトスピーチについて損害賠償を認める判決を下している。
 
ところで、自民党。
8月28日にヘイトスピーチ対策のプロジェクトチーム初会合が開かれたが、議論は、国会周辺のデモや街頭宣伝活動にまで及んだ。
「(大音量デモで)仕事にならない状況がある。仕事ができる環境を確保しなければいけない。批判を恐れず、議論を進める」(高市早苗政調会長)。
 
国会周辺での原発反対や秘密保護法反対などの国民の声が彼らにとっては、仕事にならないほど、非常に耳障りのようだ。
 
デモや街頭宣伝で政治的な意見を表明することは、憲法で保障されている重要な「表現の自由」である。
それを、国会議員や政府与党が「仕事にならない」「うるさい」という理由で規制を検討するなど、憲法無視もはなはだしい。
 
ヘイトスピーチ対策を口実に、本来の「表現の自由」まで規制されないよう、しっかりと監視していかなければいけない。
 

法廷を学生がチェック!(コートモニター)

 
(女性弁護士の法律コラム NO.177)
 
京都府立大学の学生たちが、京都地裁で裁判を傍聴し、裁判官、検察官、弁護士の振るまいや言動を評価する「コートモニター」活動に取り組んでいる。
内容をまとめた報告書を日弁連のシンポジュウムで発表し、今後、地裁にも届けたいとしている(2014年8月28日付け京都新聞夕刊)。
 
裁判員制度が定着する中、市民と法廷の距離を縮め、市民目線で裁判の改善策を提示するのが狙い。
 
モニターを経験したある学生は、裁判官の居眠りや、法曹三者のそれぞれで原告、被告、証人に対して気遣ったり突き放したりする態度の差が印象に残るという。
 
司法が国民に開かれ、身近であることは、とても大切なこと。
私たち弁護士も、このような市民目線・市民感覚からの評価に対し、真摯に耳を傾けていかなければいけないと思った。
 

元依頼者との嬉しい再会

 
(女性弁護士の法律コラム NO.176)
 
今週水曜日、事務所の他の弁護士のピンチヒッターで区役所の無料法律相談に行った。
 
午後1時に区役所の市民窓口に行くと、既に何人かの相談者が待っておられた。
その中から「村松先生!」という声がした。
声の方に振り向くと、なんとそれは、元依頼者のFさんだった。
 
Fさんとは、私が弁護士になって数年経った頃に子どもさんの交通事故事件を担当してからのつきあいで、その後、子どもさんの離婚やご自身の近隣トラブルの相談を受けたりし、ずいぶん長く関わらせていただいた。
でも、私が今の事務所に変わってからは、子どもさんは来られたことがあるが、ご本人とはお目にかかっていなかったので、久しぶりの再会になった。
 
順番を待って相談室に入って来られたFさんの話によると、Fさんは、たまたま区役所に書類を取りに来て、その書類の書き方がわからなかったので無料相談を受けようと思った、担当弁護士が村松先生だったらいいなあと思っていたら、本当に村松がやって来たのでとてもビックリしたとのこと。
 
へぇ~、そんなことあるんやね。運命の再会かしらね。
束の間、そんな会話がはずんだ法律相談だった。

 
(女性弁護士の法律コラム NO.175)
 
昨日夕方、京都弁護士会では、「集団的自衛権行使容認反対」「取調べの全面可視化」を求めるパレードを、弁護士・事務員さんそして市民の方々と一緒に行いました。
 
京都弁護士会の会館前から堀川御池まで歩きました。
 
向かって、左が松枝会長、右が平尾副会長です。
 

 
堀川御池までパレードした後、多くの弁護士は、弁護士会主催のビアパーティーへ。
 
私は、そのまま、久しぶりに祇園祭の山や鉾を眺めながら、自宅に帰りました。
「役行者山」です。

 
 

日本の教員の仕事時間は最長

 
(女性弁護士の法律コラム NO.174)
 
長時間労働の最たる職業の1つが、教員である。
 
経済協力開発機構(OECD)は、6月25日、中学校を対象に教員の勤務環境や指導状況を調査した国際教員指導環境調査の結果を公表した。
それによると、1週間の仕事時間は日本が53.9時間で、参加した34カ国・地域で最も長かった。
授業時間は参加国平均と同程度だったが、部活動の指導や事務作業に費やした時間が大きく上回った。
「日本の教員は忙しい」と指摘されて久しいが、今回の調査で国際的にも多忙が裏付けられた格好だ。(2014年6月26日付け京都新聞)。
 
私は、これまでに教員の過労死の公務災害事件にいくつか関わった。
小学校教師のケースが2件(心不全、脳内出血)、中学校教師のケースが1件(脳内出血)あった。
 
教員の場合、そもそも所定の勤務時間内では、授業の準備やテストの採点、資料作りなどをする時間はなく、学校に残って残業するか、自宅に持ち帰って処理しているのが常態化している。
また、学校内外の会議への参加、校務分掌や校内の事務処理などもあり、放課後や休日さえも部活の指導や試合の付き添いなどの仕事がある。
しかし、それに見合った残業手当さえ支払われない。
 
それでも、裁判になると、それが「通常の仕事」「他の教員もしている」「命令していない。自分が好きでしている」などと主張して、公務災害と認めようとしない。
 
教員自身がブラック企業で働いているようなもの。
過労死が社会問題化してから既に20年以上の歳月が経過している。
でも、教育現場は、ますます教員にとっても過酷になっているのではないだろうか。
教員自身が過重な仕事でフラフラになりながら仕事をしており、そんな中で、子どもに対し、きめ細かい豊かな教育はできないと思う。
 

 
(女性弁護士の法律コラム NO.173)
 
憲法9条の解釈変更によって集団的自衛権を認めようと急ぐ自民党・安倍首相の姿を毎日ニュースで見て、本当に嫌になる日々です。
 
与党の公明党に淡い期待を抱きましたが、やはり所詮は公明党。
与党の座から下りたくない公明党は、結局、自民党に取り込まれそうな気配です。
 
皆さんの子どもや孫達が、人を殺しに行ってもいいんですか?
皆さんの子どもや孫達が、殺されてもいいんですか?
 
そんな中で、去る6月10日、京都弁護士会は「安全保障を巡る憲法問題と立憲主義の危機に関する会長声明」を発表しました。(内容は、京都弁護士会ホームページに掲載されています)
 
「九条を守ろう!」という声をもっともっと大きくしていきましょう。
 
 

 
(女性弁護士の法律コラム NO.172)
 
まだ記憶に新しい、厚生労働省の村木厚子さんの無罪。
その決め手となったのは、当時、大阪地検特捜部の前田恒彦検事が証拠のフロッピーを改ざんしたことが明るみとなったからだ。
彼は、その後、取り調べる側から取り調べられる側となり、被疑者・被告人を体験し、あるいは他の事件の参考人・証人ともなり、最終的には受刑者となった。
 
昨日、京都弁護士会主催で、全面証拠開示・全面可視化のシンポジュウムが開催され、第1部は、前田氏の講演だった。
服役後、初めて公の場での講演だった。
 
冒頭、村木事件については、「証拠や事実に対して謙虚さを欠いた卑劣な行為だった」と謝罪し、検察改革が進まない現状に「(改革のきっかけの)張本人である自分が問題点を語る必要があると思った」と話した。
 
彼が語る捜査の実態は、生々しくリアルだった。
被疑者・被告人に有利な記述が警察の捜査報告書に書かれてあれば削除させる「差し替え」、被疑者や被告人に不利な供述だけを調書にして、その他は「聞くだけ」の「つまみ食い」など、私たち弁護士がおそらく警察や検察で行われていると「確信」する方法が実際に行われていることが、取り調べ側にいた人間の口から語られた。
 
検察庁は、検察官や警察の不祥事が起こると、それをその個人の個性や問題にすりかえようとしてきたが、実際は、検察や警察全体の体質から生まれているのだ。
今のままでは、また第2、第3の前田検事が生まれてしまう。
 
刑事裁判で「真実を発見」するには、絶対に、全面的な証拠の開示や取調べの可視化が必要とあらためて実感した。
 
失敗しない人間は、いない。
前田氏は、検察官の特捜部というエリートコースから転落しただけでなく、犯罪者となり、刑も受けた。
でも、人間にとって大切なのは、その失敗した後の人生をどのように生きるかということだと思う。
 
前田氏が服役後、FACEBOOKなどを通じて検察改革を主張していることに対し、それをやめるよう様々な所からの圧力があるとのこと。
でも、彼自身が、取り調べる側から取り調べられる側まですべてを体験した人が語る言葉は重いし貴重だ。
 
是非、圧力に屈せず、検察改革を進める力となってほしいと思う。
 
 
 
 

PC遠隔操作事件と弁護人

 
(女性弁護士の法律コラム NO.171)
 
記者会見まで開いて「無罪」と言っていた被告人が、一転して「すいません。私が真犯人です」ということになったPC遠隔操作事件。
 
私たち弁護士にとって、「絶対にやっていない」と言っていた被疑者や被告人が、途中から「実は、やっていた」とくつがえすことは、そんなに珍しいことでもない。
一生懸命「無罪」として弁護活動をしていたのに、それが事実ではなかったことを知ったときは、正直、ショックを感じる。
若い頃は、その若さ故に、特にショックが強かった記憶がある。
被疑者・被告人との信頼関係が破壊されたと感じれば、私撰であれば、弁護人をやめることもありうる。
 
今回のPC遠隔操作事件の主任弁護人である佐藤博史弁護士は、記者会見で、「全く裏切られたような否定的な感情はない」「私自身は、否認している被疑者が『実は、やってました』と告白することに何回か遭遇している。それをもとに弁護するのが弁護士だ。裏切られたと非難するものでもない」と言っておられた。
そして、被告人には、即座に「あなたを見捨てない」と言われたそうだ。
 
佐藤弁護士は、再審無罪を勝ち取った足利事件の主任弁護人であった。
長年の刑事弁護活動に裏打ちされた経験で、被告人を「見捨てることはできない」と判断されたのであろう。
 
被告人にとって、多くの善良な人々を巻き込んだ罪の重さは、はかりしれない。
 
 

依頼者との「縁」

 
(女性弁護士の法律コラム NO.170)
 
約10年前の離婚事件の依頼者Aさんが久しぶりに法律相談に来てくれたのは、昨年の夏だった。
1週間後にガンの手術をするということで、遺言などについての法律相談だった。
私よりずいぶん年下のAさんのガン手術の話は、とても衝撃だったが、淡々と語るAさんは、冷静で落ち着いているように思われた。
 
そして、最近、またAさんが相談に来られた。
私の気持ちのどこかにAさんの手術の予後が気がかりだったこともあり、再び会えたことは本当に嬉しかった。
でも、Aさんの口からは、手術はしたが、ガンは転移しており、余命はあまりないという言葉が発せられた。
悲しかった。
 
今回、相談に来られたのは、そんなAさんに新たな事件が起こったからだ。
弁護士がつかないと解決できない事件ではないと思われたが、私はこんな状態のAさんを一人で裁判所に行かせるわけにはいかないと思い、受任することにした。
 
これも縁。
Aさんの負担を少しでも少なくしてあげられるよう、力を尽くしたい。
 

 
(女性弁護士の法律コラム NO.169)
 
集団的自衛権行使容認の論拠として、1959(昭和34)年の砂川事件最高裁判決を援用している政府、自民党。
 
砂川事件というのは、1957(昭和32)年7月、東京都砂川町(現、立川市)の米軍基地に立ち入った、基地拡張に反対するデモ参加者7人が刑事特別法違反罪で起訴された事件です。
この砂川事件は、1959年3月、第一審の東京地裁が日米安保条約に基づく駐留米軍は憲法9条が禁じた「戦力」にあたるとして無罪を言い渡しました(いわゆる伊達判決)。
しかし、その後同年12月、最高裁は、安保条約や駐留米軍を「司法審査の範囲外」として、一審判決を破棄差し戻し、後に有罪が確定しました。
 
私たちは、この砂川判決について、大学生の時、憲法の講義で学び、また、法律家を志した後は司法試験の受験勉強でも勉強しました。
 
内閣総理大臣らの「解釈」によって憲法9条に集団的自衛権を認めるのは立憲主義に反するという国民の批判に対し、最近になって、政府・自民党は、砂川事件最高裁判決が「わが国が存立を全うするために必要な自衛措置を取り得ることは国家固有の権能の行使として当然」としており、集団的自衛権を否定していないと主張するようになりました。
 
それに対し、当時の砂川事件を担当した弁護士や一審の無罪判決に関わった元裁判官が批判の声を上げています(2014年5月10日京都新聞朝刊)。
 
5月9日、弁護士らは、東京都内で記者会見し、裁判の主要な争点は日米安保条約に基づく米軍駐留の憲法9条適否であって、わが国固有の自衛権の問題ではなかったことなど、最高裁判決のとらえ方を説明し、集団的自衛権行使の可否について判断も示唆もしていないと指摘しました。
 
また、一審を担当した元裁判官の松本一郎独協大名誉教授は、「自衛隊は1954年に発足したばかりで、よちよち歩き。米軍を守るといった集団的自衛権は議論にもならなかったし、自衛権と言えば、個別的自衛権だった」と当時を振り返っています。
 
立憲主義を踏みにじる政府・自民党のやり方は絶対認めることはできません。
私たち弁護士も、大きな反対の声を上げていきたいと思います。

 
(女性弁護士の法律コラム NO.168)
 
新聞報道によると、2013年4月1日に施行された改正労働契約法20条を根拠に、非正規労働者が正規労働者との格差是正を求めた裁判が、あいついで2件東京地裁に提訴されました。
 
労働契約法20条は、有期雇用契約の労働者について、期間の定めのあることによる不合理な労働条件を禁止しています。
この規定は、民主党政権下での数少ない成果(?)の1つと言えるでしょう。
 
●東京メトロコマース訴訟
東京メトロコマースは、駅構内の販売店等を経営する会社で、正規・非正規合わせて約840人の従業員がいます。
今回、駅販売店で販売を担当する4名の有期雇用社員が労働条件の格差は違法として損害賠償請求訴訟を提訴しました。
販売店では、正社員と同じ時間、同じ仕事内容で働いているにもかかわらず、基本給・手当・賞与・退職金いずれも大きな労働条件の差があるとのことです。
 
●日本郵便訴訟
日本郵便株式会社は、誰もが知っている「郵便局」です。
従業員は全体で約39万人、正社員以外の有期雇用社員は約19万人で49%を占めてします。
原告3名は、時給制契約社員で、正社員と同じ勤務シフト制に組み込まれ労働時間も同じです。
しかし、例えば、年末年始の繁忙期に正社員にはつく手当が有期社員には支払われなかったり、夏季冬季休暇や病気休暇などが取得できないなどの格差があるとのことです。
そこで、病気休暇を取得する地位、諸手当の支払いを求めて提訴しました。
 
このような正規と非正規とで大きな格差のあるような労働条件の職場は、今の社会にたくさんあると思います。
でも、立場の弱い非正規労働者は、声を上げると雇止めとなったりするので、じっと我慢を強いられています。
今回の2件の裁判は、非正規労働者とそれを支援する労働組合が立ち上がって提訴に至りました。
 
是非、頑張ってほしいと思います。
 
 
 
 

メールが夫婦の愛情を裏付ける!?

 
(女性弁護士の法律コラム NO.167)
 
現在、過労自殺(労災認定されている)により死亡された労働者の遺族の代理人として、会社に損害賠償を求めて提訴した事件を担当している。
 
会社側は、長時間労働が自殺の原因であることを認めず、「夫婦の不和」が原因だと主張している。
証拠として、亡くなられた本人のメールを多数提出しているが、会社側の代理人弁護士は、準備書面の中で、夫婦のメールの内容が「今から帰る」「仕事」などといった素っ気ないものが多いので、愛し合っている夫婦なら、もっと愛情を裏付けるメールがあるはずだと反論している。
 
会社側の代理人弁護士が本当にそう思っているのか、あるいは、会社側の立場に立って心にもないことを書いたのかは定かではないが、私が会社側代理人だったら、このような準備書面は書けないなあ。
夫婦の「愛の表現」など多種多様である。
およそメール上の言葉だけで判断できるはずがない。
メールではないが、昔よく言われた、家では「メシ」「風呂」「寝る」しか言わないおとーちゃんにもきっと夫婦の愛情はあるだろう。
私自身、メールでゴチャゴチャ書くのがあまり好きではなく、誰に対しても、用件のみの素っ気ないメールを書くことが多い。
 
長時間労働で自殺にまで追いやられた挙げ句、メールの表現から「夫婦に愛情がなかった」とまで言われたら、遺族の無念な思いや怒りはより一層増すばかりである。
 
 
 
 

残業代ゼロより残業ゼロに!

 
(女性弁護士の法律コラム NO.166)
 
昨日は、所属している法律家団体の例会があった。
「労働政策の動向と労働者保護の法的課題」と題して、弁護士でもある吉田美喜夫立命館大学教授にご講演いただいた。
 
4月22日、経済財政諮問会議・産業競争力会議合同会議(議長・安倍晋三首相)が労働時間規制の撤廃する制度導入の検討を求める文書を提出するなどの動きもあり、タイムリーな企画だった。
 
労働基準法で、労働時間は「1日8時間、週40時間」と定められ、それ以上働いたら残業代を払わなくてもならないにもかかわらず、どんなに長く働いても残業代はゼロにする企てが進んでいる。
第1次安倍内閣の時、財界から「ホワイトカラーエグゼンプション」が提言され、法案化までされたが、国民世論の激しい批判を受け、国会で審議すらできなかった。
それが、またしても、第2次安倍内閣で浮上してきた。
今回は、対象として、年収1000万円以上の高収入社員のほか、高収入でなくても、労働組合との合意で認められた社員を検討するという。
 
吉田先生は、使用者が労働者から労働力を買うのが労働契約で、その労働力は何ではかるかというと「指揮命令が及ぶ労働時間」である、従って、何時間働いても残業代を払わないことは、もはや「労働力」を買うのではなく、「人間そのもの」を買う=奴隷労働と同じだと語られた。
 
また、解雇に関する規制もどんどん緩められていこうとしているが、解雇が自由にできれば、労働者は結局、有給休暇や育児休業などの様々な権利を行使したくても、解雇を怖れ、結局、権利行使もできなくなる。
 
派遣法もどんどん改悪されていっている。
 
こんな労働者の使い捨ては絶対許してはならない。
 
 
 
 
 
 
 

 
(女性弁護士の法律コラム NO.165)
 
2010年7月31日付けの当ブログで、自衛隊内のセクハラ及び退職強要で原告女性が勝訴したことを書きましたが、今度は、自衛隊内の「いじめ」による自殺です。
 
2004年、先輩の暴行や恐喝などの「いじめ」を苦に自殺した海上自衛隊護衛艦「たちかぜ」乗組員の1等海士(当時21歳)の遺族が国などに約1億5000万円の損害賠償を求めた訴訟で、東京高裁は、2014年4月23日、いじめと自殺との因果関係を認め、1審の東京地裁が認定した440万円を大幅に増額する約7300万円の損害賠償を認めました。
 
1審は、「自殺は予測できなかった」として先輩による暴行と恐喝について賠償責任を認めただけでした。
 
いじめと自殺の因果関係を認める決め手となった文書は、3等海佐による「乗組員アンケートが存在する」という内部告発から明らかになりました。
文書隠し発覚後、海上幕僚監部の訟務専門官がこのアンケートを破棄するよう現場に指示していたことも判明。
結局、廃棄には至らず、2012年9月、国側から高裁に提出されました。
 
大津市のいじめ自殺事件でも、生徒のアンケートについて、当初、教育委員会は一部を隠蔽するということがありました。
また、私が過去に関わった京都市立小学校の教務主任の教師の過労死事件では、なぜか、死亡年度だけの職員会議の議事録が「なくなって」いました。
「不都合な事実」隠しは、企業だけでなく、国や自治体などどこにでもあるということを痛感します。
 
内部告発した3等海佐は、2013年12月11日、「信念で告発した」と証言したそうです。
ところが、報道によると、この3等海佐は、現在、規律違反の疑いで懲戒処分の手続きが進められているとのことです。
国が今すべきことは、内部告発者の責任追及ではなく、「隠蔽」体質の改善や自衛隊内部のハラスメント対策ではないでしょうか。
 
 
 
 
 
 

金融機関の不当な扱いに屈しない

 
(女性弁護士の法律コラム NO.164)
 
ある人が亡くなり、遺言は、相続人の一人である私の依頼者には一切遺贈なしという内容でした。
そのため、他の相続人に対し遺留分減殺請求(民法1031条)を行ったのは言うまでもありません。
 
次に、心当たりの金融機関に、亡くなった人の口座があったかどうか調べ、口座が存在した金融機関から死亡時の残高証明を取りました。
ただ、一般論で言うと、他の相続人が生前に出金している場合もあったりするので、入出金の状況がわかる取引履歴を入手したいと考え、3月6日、その金融機関に申請の文書を送りました。
 
ところがです。
 
3月14日、その金融機関の担当者が「共同相続人全員の同意がないと出せません」「あるいは弁護士会照会という手続きを取ってください」と電話をかけてきました。
「最高裁の判例で、相続人が単独でもできるとなっているじゃないですか」と言っても、「本店の法務部の指示なので」という返事。
京都でも有数の金融機関なのに、なんで最高裁判決に従わないの!!と私は内心怒りまくりました。
 
すぐに支店長と担当者宛てに、最高裁判例が存在すること、もしあくまでそれに反する取り扱いをするなら損害賠償訴訟を起こすと書いてFAXしました。
 
次に、担当者から来た返事は「決して協力しないわけではない」「『お願い』です」というものでした。
それで、再度「『お願い』には応じられない」ことと最高裁判例も添付してFAXを入れました。3月18日のことです。
すると3月20日、開示すべき理由を明らかにすれば応じるとの回答が返ってきました。
 
そして、本日、やっと取引履歴が私の手元に届きました。
 
最高裁判決が存在しても、それに従わない金融機関があることに驚きました。
弁護士会照会で手続きするのは、簡単ですが、費用も時間もかかります。
また、せっかく、どこかの弁護士が最高裁まで争って最高裁判決を勝ち取ってくれたのに、私たちが安易に最高裁判決に反する金融機関の扱いに応じるのは、法律家としてあるべき姿ではないと思いました。
 
本当に、カリカリ頭に来た約20日間でした。
 
 

生活保護を受けて良かった・・・

 
(女性弁護士の法律コラム NO.163)
 
昨日の日曜、ランニングしがてら、元依頼者の方の自宅に初めて寄ってみた。
 
事件の依頼を受けていた時、一人暮らしで身体も弱く、しかもわずかな年金以外には定まった収入がないことを知ったので、私はしきりに生活保護の受給を勧めた。
しかし、「絶対に生活保護は受けたくない」、「受けるくらいなら車の中で寝泊まりしてもいい」などと言って強く拒んでいた。
 
生保は受けたくないという気持ちは固かったが、病弱で、年齢も60代後半になっていたので、どうしても放っておけなかった。
そこで生活相談をしておられる元市会議員の方の所へ同行し、生活保護とはどういうものなのかなどを説明してもらい、住まいも探してもらうよう頼んだ。
 
その後、生活保護を受けることにしたと連絡があり、ホッとした。
 
昨日、半年以上ぶりに会ったが、しみじみと「生活保護を受けて良かった」と言ってくれた。
また、生保を受けていることで嫌な思いもすることもあると率直に語ってくれた。
生保の悪用事例が新聞に載ったりするが、その元依頼者の方のように「税金で生活させてもらってるんだから」と何度も語る真面目な人もいることを知ってほしいと思う。
 
つつましく生活されているようで、自宅もとても整理整頓され、私の部屋などと比べると、ずっと綺麗に使っておられた。
 
これからも、時々、立ち寄りたいと思う。
 
 
 
 
 
 

 
(女性弁護士の法律コラム NO.162)
 
NHKの籾井会長が、NHKの理事10人全員から辞表を取り付けていたことが発覚し、世間を驚かせた。
籾井会長は、国会で「一般社会ではよくあること」と答弁したが、こんなこと、一般社会でよくあるはずがない。
 
「一般社会でよくあること」ではないが、しかし、全くないわけではない。
ずいぶん前に関わった、ある事件のことを思い出した。
 
京都のある企業で働いていた労働者。
不当解雇ということで解雇無効の裁判を起こすと、会社側から、その労働者の自筆の退職届が提出され、会社の言い分は「解雇じゃない、自分で退職したんだ」とのこと。
実は、その企業は、労働者を雇用する時、全員から日付欄を空白とした退職届を取っていたことが判明した。
 
経営者が労働者を解雇するには「正当な理由」が必要だ。
だから、解雇しても、正当な理由があるか否か、争いとなる可能性がある。
それを避けるために、経営者は、あらかじめ日付欄空白の退職届を取っておき、労働者を解雇したいと思った時、その日付欄を勝手に記入し、労働者が自分の意志で退職した扱いにできるようにしていたのだ。
 
もちろん、そんな退職届は無効に決まっている。
出すこと自体、拒否すれば良いが、雇用される時、労働者がそんなこと言う力関係にない。
出してしまうと、その会社では労働者からあらかじめ退職届を出させているという慣行があるなどと同僚が証言してくれないと、証明は難しくなる。
 
籾井会長の言う「一般社会」ってどんな所だろう。
どこにしても、そんな所はブラックだよね。
 
 

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