今まで、毎年発表される芥川賞や直木賞の受賞作品に注目したことがなかったが、今回は違う。
2024年10月21日付け当ブログで紹介した「宙(そら)わたる教室」の作者伊与原新氏が2025年1月、第127回直木賞に選ばれた。
私が今、一番「推し」の作家である。
受賞作品は「藍を継ぐ海」。
受賞作品はまだ読んでいないが、昨年のNHKドラマ放映と並行して原作「宙わたる教室」を読み、その後、F弁護士の勧めもあって、文庫本で「月まで三キロ」と「八月の銀の雪」という短編集を2冊読んだ。
伊与原氏は、大学で地球惑星科学を専攻した科学者で、教員になった後に作家に転向した。
そういう経歴の持ち主であるからか、どの作品も、科学と文学とが融け合っていて、とても面白い。そして、自分の専門分野ではない科学の分野についても、よく調べ、それを作品のモチーフとして人間ドラマに仕立てて書かれてあることが一層面白さを増している。
2025年1月26日付け朝日新聞に伊与原さんのエッセーが掲載されていたが、それを読むと、そんな伊与原さんも、編集者からの助言を受け科学などを題材にした作品を書くようになって以降も、新刊を出してもほとんど話題にならない状態が続くと、世に根強く「科学アレルギー」が存在するせいにしていたとのこと。
その状況が変わったのは、「月まで三キロ」を出してからだという。
「月まで三キロ」は6編から成る短編集だが、一言で科学と言っても色々な分野をモチーフとして人間模様が描かれており、どの作品も興味がわいた。
子どもの頃から、物理や化学の分野が苦手で、科学に「負い目」やコンプレックスがある私にも、本当に楽しめる作品である。
「藍を継ぐ海」も読むのが楽しみである。