1. 厚労省村木事件の元検事、前田恒彦氏の初講演(主催 京都弁護士会)
女性弁護士の法律コラム

 
(女性弁護士の法律コラム NO.172)
 
まだ記憶に新しい、厚生労働省の村木厚子さんの無罪。
その決め手となったのは、当時、大阪地検特捜部の前田恒彦検事が証拠のフロッピーを改ざんしたことが明るみとなったからだ。
彼は、その後、取り調べる側から取り調べられる側となり、被疑者・被告人を体験し、あるいは他の事件の参考人・証人ともなり、最終的には受刑者となった。
 
昨日、京都弁護士会主催で、全面証拠開示・全面可視化のシンポジュウムが開催され、第1部は、前田氏の講演だった。
服役後、初めて公の場での講演だった。
 
冒頭、村木事件については、「証拠や事実に対して謙虚さを欠いた卑劣な行為だった」と謝罪し、検察改革が進まない現状に「(改革のきっかけの)張本人である自分が問題点を語る必要があると思った」と話した。
 
彼が語る捜査の実態は、生々しくリアルだった。
被疑者・被告人に有利な記述が警察の捜査報告書に書かれてあれば削除させる「差し替え」、被疑者や被告人に不利な供述だけを調書にして、その他は「聞くだけ」の「つまみ食い」など、私たち弁護士がおそらく警察や検察で行われていると「確信」する方法が実際に行われていることが、取り調べ側にいた人間の口から語られた。
 
検察庁は、検察官や警察の不祥事が起こると、それをその個人の個性や問題にすりかえようとしてきたが、実際は、検察や警察全体の体質から生まれているのだ。
今のままでは、また第2、第3の前田検事が生まれてしまう。
 
刑事裁判で「真実を発見」するには、絶対に、全面的な証拠の開示や取調べの可視化が必要とあらためて実感した。
 
失敗しない人間は、いない。
前田氏は、検察官の特捜部というエリートコースから転落しただけでなく、犯罪者となり、刑も受けた。
でも、人間にとって大切なのは、その失敗した後の人生をどのように生きるかということだと思う。
 
前田氏が服役後、FACEBOOKなどを通じて検察改革を主張していることに対し、それをやめるよう様々な所からの圧力があるとのこと。
でも、彼自身が、取り調べる側から取り調べられる側まですべてを体験した人が語る言葉は重いし貴重だ。
 
是非、圧力に屈せず、検察改革を進める力となってほしいと思う。
 
 
 
 

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