1. 国の証拠隠蔽を認定~海自いじめ訴訟(東京高裁判決)
女性弁護士の法律コラム

 
(女性弁護士の法律コラム NO.165)
 
2010年7月31日付けの当ブログで、自衛隊内のセクハラ及び退職強要で原告女性が勝訴したことを書きましたが、今度は、自衛隊内の「いじめ」による自殺です。
 
2004年、先輩の暴行や恐喝などの「いじめ」を苦に自殺した海上自衛隊護衛艦「たちかぜ」乗組員の1等海士(当時21歳)の遺族が国などに約1億5000万円の損害賠償を求めた訴訟で、東京高裁は、2014年4月23日、いじめと自殺との因果関係を認め、1審の東京地裁が認定した440万円を大幅に増額する約7300万円の損害賠償を認めました。
 
1審は、「自殺は予測できなかった」として先輩による暴行と恐喝について賠償責任を認めただけでした。
 
いじめと自殺の因果関係を認める決め手となった文書は、3等海佐による「乗組員アンケートが存在する」という内部告発から明らかになりました。
文書隠し発覚後、海上幕僚監部の訟務専門官がこのアンケートを破棄するよう現場に指示していたことも判明。
結局、廃棄には至らず、2012年9月、国側から高裁に提出されました。
 
大津市のいじめ自殺事件でも、生徒のアンケートについて、当初、教育委員会は一部を隠蔽するということがありました。
また、私が過去に関わった京都市立小学校の教務主任の教師の過労死事件では、なぜか、死亡年度だけの職員会議の議事録が「なくなって」いました。
「不都合な事実」隠しは、企業だけでなく、国や自治体などどこにでもあるということを痛感します。
 
内部告発した3等海佐は、2013年12月11日、「信念で告発した」と証言したそうです。
ところが、報道によると、この3等海佐は、現在、規律違反の疑いで懲戒処分の手続きが進められているとのことです。
国が今すべきことは、内部告発者の責任追及ではなく、「隠蔽」体質の改善や自衛隊内部のハラスメント対策ではないでしょうか。
 
 
 
 
 
 

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