1. 女性弁護士の法律コラム

女性弁護士の法律コラム

コンビニの「見切り販売」

 
(女性弁護士の法律コラム NO.141)
 
2013年8月30日、コンビニエンスストア最大手「セブンーイレブン・ジャパン」から、販売期限の迫った食品を値引きする「見切り販売」を妨害されたとして、加盟店主4人が計約1億4000万円の損害賠償を求めた判決で、東京高裁は、計約1100万円の支払いを命じました(毎日新聞)。
 
公正取引委員会は、2002年に「フランチャイズ・システムに関する独占禁止法上の考え方について」という指針で、値引きの制限を禁止しています。
そして、公取委は、値引きを認めなかったセブンーイレブンに対し、2009年6月、妨害を禁じる排除措置命令を出していました。
セブンーイレブンは、表向きは「加盟店の判断」としているとのことですが、実際には、本部への報告や相談義務があり、値引きが行いずらい状況になっていたようです。
実際、公取委が排除措置命令を出してからの4年余りの間で、見切り販売を実施しているコンビニは、セブンーイレブンでは加盟店舗の1%にも満たない状況です。
 
判決は、「店主は社員から『見切り販売したら店は続けられない』などと言われて取りやめを余儀なくされており、事実上、強制的な妨害があった」と認定しました。
 
いわゆるコンビニ会計という、売れ残りによる商品廃棄や万引きによる損害は、その大半を加盟店がかぶる処理方法が問題です。
更に、日本では、世界の食糧援助量の3倍以上、年間2000万トン近い食品廃棄物が生み出されています。
コンビニでは、1店あたり年間20~30トンが廃棄されているとも言われます。
 
「24時間営業」でも、弁当などの食品に「賞味期限」がある以上、「見切り販売」はあってしかるべきです。
他方で「餓死」事件が後を絶たないこの日本で、大量の食品を廃棄するなど、とんでもない話です。

 
(女性弁護士の法律コラム NO.140)
 
7月26日、京都弁護士会の両性の平等に関する委員会で、大阪ファミリー相談室の見学に行ってきました。
 
大阪を含め全国10カ所にあるファミリー相談室(FPIK=エフピック)は、元家庭裁判所の調査官が中心となって平成5年3月に設立された民間団体で、現在は、とりわけ、子どもの面会交流の援助機関として利用されています(有料です)。
 
両親が離婚した場合、子どもと非監護親との面会交流は、父親と母親との共同作業と言えますが、DVなどが原因で離婚したような場合、自分たちだけで面会交流を行うことが困難な場合もあります。
そのような場合に、FPIKの援助を得て、面会交流を行うことができます。
 
援助の期間は、原則1年で、その間に、両親が自分たちだけで面会交流が実現できるようになることを目指しています。
 
大阪の場合には、ビル内に3室のプレイルームがあり、そこや外部の公園などを利用して面会交流を実施します。
FPIKの援助者が付き添う場合と面会交流の始まりと終わりに子どもの受け渡しだけを行う場合とがあります。
 
担当者の方からお話をお伺いしましたが、経験豊富な元調査官の方々だけあって、離婚した親同士が子どもの面会交流をスムーズに行えるよう努力されていることを実感しました。
 
京都の人でも気軽に利用できると良いのですが、大阪まで行かなければならないという難点があります。
京都でも面会交流に適当な部屋があれば、大阪から援助者が来てもらえるという話もあり、是非、京都にもそのような場所ができればと思いました。

 
(女性弁護士の法律コラム NO.139)
 
ミニバイクの速度超過で運転免許を減点されたのは誤りだったとして、京都の男性弁護士が京都府を相手取りゴールド免許の交付を求めた訴訟の控訴審判決が6月27日大阪高裁であり、「測定されたのが他の車両の速度だったという可能性も十分ある」などとして、訴えを棄却した1審判決を取り消し、逆転勝訴の判決を言い渡した(2013年6月28日付け朝刊各紙)。
 
すごい!
当事者である弁護士とその代理人の弁護士に大きな拍手を送りたい。
 
警察のレーダー式速度測定器による取り締まりに不満を持っているドライバーはきっと全国にたくさんいるだろう。
先日、古屋国家公安委員長が指摘したように、警察が最重点ではない場所や危険のない場所で速度取り締まりを行っている、という取り締まりの場所の問題が1つ。
 
それと、そもそもレーダーというのは、本当に正確に測定できるんだろうか?ということ。
 
測定原理は、路側に置いた測定機からマイクロ波を走行車両に投射し、車両からの反射波が車両の速度に比例して偏移するという「ドップラー効果」を応用したものである。
 
この測定で誤差が生ずる原因として様々なことが考えられる。
機器そのものについて言えば、測定機内部の雑音、測定用電波でない外部の電波・雑音によるもの、測定用電波の性質そのものがあげられる。
また、そのほかにも、警察の取り扱い方法上のミス、対象車両の誤認などが考えられる。
 
機器そのものの原因を論ずる能力は私にはないが、実は、警察がレーダーのしくみを知らないまま操作することによる誤測定はかなりあるのではないかと思っている。
 
複数車両が走行している場合、レーダーに表示されるのは速度の数字だけであるから、その数字がどの車両から跳ね返ってきた数字かを特定するのは、人間である警察官なのである。そして警察官は往々にしてレーダーのビームは1本の直線で投射されていると思いこんでいる場合が多く、実はレーダービームには幅があることを認識していない。
 
だから、レーダーの取扱説明書には、複数車両が集団で走行してくるような場合には、測定してはいけないと書かれてある。
そのため、裁判になると、実際には複数車両が存在したような場合でも、警察官は「単独走行だった」と口裏を合わせて証言するのである。
 
今回の裁判でも、警察官はバイクの前後50メートルには車両はなかったと証言したようだが、裁判所はその証言を信用せず、「超過とされた速度は、近くを通過した別の車の車両の速度である可能性も十分ある」と指摘した。
 
実は、私は、弁護士になって5年くらいの時期に、当時、タクシーの労働組合の顧問をしていたこともあって、何件かの速度違反の刑事事件で無罪を争ったことがあった。実際に路上で現場検証したこともあった。
文系出身の私にはかなり難解なレーダーのしくみにぶち当たったため、元レーダー開発の技術者の方などの協力も得て取り組んだが、無罪判決は取れなかった。
 
今回は、民事事件とは言え、立証は決して容易ではなかっただろうと想像する。
京都府は、おそらく上告しない気がするが、もし上告されたら、大弁護団を作って、徹底的に争ったらよいと思う。
 
 

 
 
(女性弁護士の法律コラム NO.138)
 
久しぶりに映画を観て泣いた。
「約束」。
三重県名張市で1961(昭和36)年3月に起きた毒ぶどう酒殺人事件の死刑囚奥西勝さんの生涯を追った映画。
京都シネマでの上映は6月13日までなので、急いで観に行って来た。
 
名張毒ぶどう酒事件は、未だ再審の扉があかない死刑冤罪事件として有名である。
映画「約束」は、事件発生から現在までの奥西さんの生涯を、俳優による演技と、長年にわたり東海テレビが取材し保有していた実際の映像などを織り交ぜて構成された作品で、事件そして裁判の流れがよく理解できた。
 
奥西さんを演じた仲代達矢、その母を演じた樹木希林の演技は、セリフは少ないものの、思いがあふれていて圧巻だった。
また、支援者の川村さんを演じたのは天野鎮雄。アマチンは、私が中学生の頃は、東海ラジオの深夜番組の人気DJだった。彼の演技も川村さんの実直な人柄をよく出していた。
 
自白以外の物証は何ひとつなし。
1964年一審の津地裁は無罪を言い渡したが、続く名古屋高裁で逆転の死刑判決、1972年最高裁で死刑判決が確定した。
第7次再審請求では弁護側が重要な新証拠を提出したにもかかわらず、2006年12月名古屋高裁は、「自ら極刑となることが予想される重大犯罪について進んでうその自白をするとは考えられない」と述べて、自白の信用性を認めた。
 
事件当時35歳だった奥西さんは、現在、86歳。高齢で体調もすぐれないという。
タイトル「約束」の意味・・・・
奥西さんと支援者川村さんとが、「(無罪を勝ち取るまで)しぶとく、しぶとく生きましょう」という固い約束。その川村さんも今はいない。
 
司法が生身の人間の人生を奪ったことに大きな怒りを感じる。
でも司法にすがるしか方法がない奥西さん。
最高裁は1日も早く奥西さんを助けてあげてほしい。
 
 
 
 
 
 

遠方からの法律相談

 
 
(女性弁護士の法律コラム NO.137)
 
先週、京都府外の、しかも、とても遠方から来られた方の離婚の法律相談を受けました。
電話で申し込みがあった時、「今週中で」という指定があり、電話があったその翌日しか時間が取れそうになかったので「明日夕方であれば」と返事をすると、本当に翌日飛んで来られ、恐縮してしまいました。
結局、地元の弁護士を依頼した方が良い案件と思われましたので、知り合いはいない県でしたが、地元弁護士の情報を提供させていただきました。
 
全国に支店があるような会社の顧問をしている法律事務所であれば、弁護士が全国各地を飛び回ることもあるでしょうが、一般には、近畿県以外の遠方の裁判所に赴くことは、あまり多くありません。
私が30年余り弁護士をしている中で、最南は沖縄(日帰りしました)でしたが、最北は埼玉までしか行ったことがありません。
 
でも最近は、遠方の裁判所の訴訟でも、準備書面で主張を述べる手続きの間は、電話会議による裁判の方法もあり、裁判所まで出向かなくてもよいので、受任しやすくなりました。
ただし、このようなケースは、少なくとも当事者の方がいつでも事務所に打ち合わせに来れることが前提となります。
 

夫婦別姓、国賠訴え棄却(東京地裁)

 
 
(女性弁護士の法律コラム NO.136)
 
夫婦別姓を認めない民法の規定を国会が改正しないのは憲法違反だとして、計600万円の国家賠償を求めた初めての訴訟の判決で、5月29日、東京地裁は、「別姓を名乗る権利は、憲法上、保障されていない」という合憲判断を下し、原告の請求を棄却しました。
 
夫婦別姓については、ブログの中でも何度も書き、この裁判のことも紹介しました(右の検索欄で「夫婦別姓」と入力してご覧ください)。
 
国は、1996(平成8)年、法制審議会が改正要綱案まで策定したにもかかわらず、法案として国会には提出していません。
夫婦同氏を強制するのは世界でも日本くらいだと言われています。
国連の女性差別撤廃委員会は、2003年8月と2009年8月の2度にわたり、是正するよう勧告を出しています。
 
判決は「姓名は人格の象徴で、人格権の一部と言えるが、夫婦が共に結婚前の姓を名乗る権利まで憲法で保障されているとはいえない」と判断。
他方「結婚後の改姓で人間関係やキャリアに断絶が生じ、不利益が生じる恐れがあるため、選択的夫婦別姓制度を求める声は多い」とも判示しています。
 
かつて、NHKが在日韓国人の名前を日本語読みしたことについて争われた裁判で、昭和63年2月16日、最高裁は「氏名は、社会的にみれば、個人を他人から識別し特定する機能を有するものであるが、同時に、その個人からみれば、人が個人として尊重される基礎であり、その個人の人格の象徴であって、人格権の一内容を構成するものというべきである」との判断を下しました。
「氏名」というのは、人間にとってとても重要な権利なのです。
民法における非嫡出子の相続分差別については、近く最高裁が違憲判断を下すと言われています。国は、イヤでも相続分差別については改正を迫られるでしょう。
合憲判断にあぐらをかかず、是非、夫婦別姓の導入も真剣に検討してほしいと思います。
 
 
 
 

養育費の支払い2割に低迷

 
(女性弁護士の法律コラム NO.135)
 
離婚による母子家庭が増える中、父親から養育費を受けているのは約20%と低迷している(2013年4月23日付け京都新聞)。
 
厚生労働省の調査によると、母子世帯は、1983年に約71万世帯だったのが、2011年には約123万世帯まで増加した。平均年収はわずか291万円。
一方、離婚母子家庭で養育費を受けている割合は1983年の11.3%から1998年は20.8%まで増えたが、その後は横ばいで2011年は19.7%だった。
 
これまで、何件も離婚事件に関わり、未成年の子どもがいる場合で生活保護を受給していなければ、たいていのケースで養育費の取り決めも合意の中に盛り込んできた。
 
しかし、離婚後、「養育費が支払われていません」という相談は案外少ない。
相談が少ないからと言って、どのケースも合意どおり払われているとは、思っていない。
別れた元夫とはもう関わりたくないとか、父親がサラリーマンではないため強制執行したくても差し押さえるものがないとあきらめているケースもたくさんあるだろう。
 
仮に差し押さえる財産がなくても、養育費を家裁の調停などで取り決めた場合には、家裁が履行勧告や履行命令を出してくれるので、最低、そのような手続きは取ってみてはどうかと考える。
 
 
 
 
 
 

89歳の女性の所へ(遺言の法律相談)

 
(女性弁護士の法律コラム NO.134)
 
元依頼者Hさんの紹介で「89歳の叔母が遺言の相談をしたいと言っています。タクシーでなら事務所へ行けると思いますが、できれば自宅まで来てほしいのですが」との依頼があり、昨日、その89歳の女性Kさん宅へ行ってきました。
Kさんは今も一人暮らしで、時々、姪が様子を見に行かれているとのことでした。
 
89歳の女性ってどんな方だろう?、遺言を書く場合の能力とかは大丈夫だろうか?など少し心配しながら、前もって親族の方からKさんの情報を伺って訪問しました。
でも、実際にお目にかかると、「89歳?」と思うほど元気でしっかりされており、親族の方から伺っていた昔の話題などスラスラと話されました。
 
「89歳って、何年生まれですか?」と尋ねると、「大正13年」との答えが返って来て、そうか、私の亡くなった父親と同じ年なんだと、なにか感慨深いものがありました。
 
話の内容からは遺言を書かれた方が良いと思われましたが、誰にどうしたいのか迷っておられるようなので、「遺言を作ろうと思われた時にはまた来ますから」と言って帰りました。
 
 

銀行の遺産整理業務の「ぼったくり」

 
(女性弁護士の法律コラム NO.133)
 
最近の銀行というのは、昔なら無料だったものが、どんどん手数料がかかるようになっている。
例えば、時間外のATMによる出金、枚数の多い両替などなど・・・・
 
でも、こんな「ぼったくり」があるとは知らなかった。
銀行は、預金業務や貸付業務以外に「遺産整理業務」というのも行っている。
内容は、相続財産の調査や相続財産目録の作成、遺産分割協議書の作成そして相続財産の運用計画の助言など。
最終的には、最後の「相続財産の運用計画」が目的なんだろうと思う。
 
その遺産整理業務に関し、次のような相談を受けた。
 
夫を亡くした80代のAさんは、ある大手銀行にこの遺産整理業務を依頼した。
その後、相続税申告手続きを税理士に依頼し、税理士が相続財産目録を作成することになったので、税理士がAさんを伴い銀行を訪れた際、口頭で「相続財産目録の作成はうちの方でするから結構です」と断った。
ところが、しばらくして、銀行は、相続財産目録を作成し、高齢のAさんに交付してしまった。
Aさんの税理士は、「口頭で断ったではないか」と抗議したものの、銀行側は「そのような記録はない」「Aさんは、何も言わずに目録を受け取った」と強気の姿勢。
 
「ぼったくり」と思ったのは、その手数料の金額である。
 
委任契約書によると、中途解約の場合、相続財産目録を交付する前なら「定額30万円」、相続財産目録交付後であれば、「相続財産に一定の料率を架けて算出された合計金額の50%+30万円」となっており、結局、Aさんは、相続財産目録を受け取ってしまったばかりに数百万円の解約手数料の請求書が届いた。
つまり契約後、目録交付前であれば、仮に財産調査に着手していなくても、銀行は30万円の手数料を請求することができる。
また、目録さえ交付してしまえば、(相続財産の額にもよるが)その手数料はグンとはねあがる。
しかし、相続財産目録というものは、弁護士でなくても、たいていの法律事務所の多少の経験ある事務局であれば、作成できるものである。
実際Aさんが交付を受けた目録も、うちの事務所の事務局なら作成できるような内容であった。
 
消費者契約法は、たとえ契約してしまっても、その条項が消費者の利益を不当に害する場合には、その条項を無効にすることができる。
私としては、このような「ぼったくり」は消費者契約法により十分争える気がした。
しかし、最終的にAさんは、銀行との紛争は望まないとして手数料を払われたようである。
 
それにしても、このような大企業の「ぼったくり」は許せない。
銀行に「遺産整理業務」を委任する場合には、十分慎重に検討してほしい。
 
 
 

「暴力」を容認してきた日本社会

 
(女性弁護士の法律コラム NO.132)
 
大阪の高校のバスケット部で起きた体罰による生徒の自殺や柔道女子の五輪代表選手らによる指導者に対するパワハラの告発をきっかけに、学校やスポーツ界における「体罰」や「暴力」などが社会問題となっている。
 
でも、これは、学校やスポーツ界だけの問題なのだろうか。
 
私たち弁護士が日常的に扱う「暴力」問題には、夫婦間の家庭内暴力(DV)、親の子どもに対する虐待、セクシュアルハラスメントあるいはパワーハラスメントなどがある。
 
例えばDV法が施行されたのは2001年だが、これらの問題は決してその頃から始まったものではなく、古くから日本社会で起こってきたのが、表面化・社会問題化したものにすぎない。
家庭内で言えば、夫が妻に暴力をふるうのは「仕方がない」、父親や母親が子どもに暴力をふるうのは「しつけ」だとして、ずっと容認されてきた。
法ができた現在でさえ、「多少の暴力ならいいじゃないか」という風潮が法の世界でもあるのが許し難い。
以前扱ったDVによる離婚事件で、婚姻中、夫は妻や子に暴力をふるっていたが、実は、その夫は自分の親から幼い頃から暴力をふるわれていた。
まさに暴力の連鎖である。
 
学校での体罰やスポーツ界での暴力も根は同じ。
 
ところで、第1次安倍内閣の時の2007年2月、文部科学省は体罰の一部を事実上容認する通知を出した。
それから6年、安倍首相は、体罰は「断ち切らなければならない悪弊だ」「日本の伝統という考え方は間違い」と言いつつ、他方で「クラスの一体性あるいは授業を進める上に於いて、著しく進行を乱す児童がいたときの指導については様々な考えがあると思うんですよ」とし、やはり6年前と意識は変わっていないじゃないかと思うばかり。
 
体罰や暴力は、人としての尊厳を否定するものという意識を、もっともっとこの社会に根付かせていかなければいけない。
 
 
 
 
 

夫婦別姓 反対派が上回る??

(女性弁護士の法律コラムNO.131)

2013年2月17日京都新聞朝刊の見出しは「夫婦別姓 反対派が上回る」。

1996年、法制審議会が夫婦別姓制度を導入した民法改正要綱案をまとめてからもう17年になろうとしている。
2011年には、法改正を待てないと女性が提訴している。
なのに「反対派が上回る」ってホント?って思った。

内閣府が発表した「家族の法政に関する世論調査」によると、選択的夫婦別姓制度導入のための民法改正の可否について、「必要ない」とする反対派が2006年の前回調査と比べ、1.4ポイント増の36.4%で、「改めても構わない」の賛成派35.5%をわずかに上回った。
だから新聞の見出しは「反対派が上回る」

でも、よく読んでみると、60代以上は反対派が多数を占めたが、男女ともに50代までは賛成派が多数を占めている。
特に結婚でこの問題に直面する20代、30代の女性はそれぞれ53.3%、48.1%が賛成、若い世代では、反対派との差が広がっている。

また、家族の一体感に関する質問では、「名字が違っても家族の一体感には影響がない」との回答は59.8%で前回比3.8ポイント増。逆に「名字が違うと家族の一体感が弱まる」は36.1%で3.7ポイント減。
多様な家族のあり方を認める意識は着実に広がっていることがわかる。

夫婦が同姓にするか別姓にするかは、個人の自由であり、また「同姓」という形だけで家族の一体感が守られると考えている自民党議員の発想はとうてい理解できない。

民法改正を1日も早く実現したいが、今の政権ではまだまだ先かなあ・・・・

司法修習生の貸与制の保証人がオリコ!?

 
(女性弁護士の法律コラム NO.130)
 
司法試験に合格した司法修習生には、これまで給与が支給されていましたが、昨年11月から給費制が廃止され、国がお金を貸す「貸与制」となりました。
 
貸与制は、修習期間中の生活費を国(最高裁判所)から無利子で借りる制度ですが、申し込みには連帯保証人が2人必要です。
連帯保証人が立てられない修習生はどうしたらよいのでしょうか?
そのような修習生は、最高裁が選定したカードローン大手企業のオリエントコーポレーション(オリコ)に保証料を払って保証してもらうことになっています。
しかも、オリコが保証を拒否すると、修習生は貸与さえ受けられなくなります。
 
保証料は貸与額の2.1%。毎月23万円借りる修習生の場合、毎月4830円がオリコへの保証料です。
保証料は、あらかじめ給料天引きされ、1年間でオリコには約6万円が入ります。
昨年11月からの新66期修習生の利用者は297人とのことですから、オリコは毎年約1800万円の保証料を得ることになります。
貸与制で借りた金の返済は、5年の返済猶予後、10年間で返済します。返済を怠ると、オリコが代位弁済しますが、その際、オリコは年6%の遅延損害金を請求することができます。
 
でも、なぜオリコなんでしょうか?
オリコは、過払金返歌訴訟や消費者被害事件などでよく相手となる会社です。
弁護士になって自分の保証人となってもらっているオリコ相手に裁判ができるのでしょうか?
検察官や裁判官はどうでしょうか?
 
本当におかしな話です。
国会や最高裁は、一体、何を考えているのだろうかと思います。
給費制・貸与制の問題は、法曹養成制度全体の中で議論されるべき問題です。

つけてますか?家計簿

 
(女性弁護士の法律コラム NO.129)
 
「長引く不景気、政府が検討している消費税アップや社会保障制度の見直しなどを背景に、シニアの間で家計簿を付け始める人が増えているという」(2013年1月25日付け京都新聞朝刊)。
 
私は、ずっと家計簿をつけている。
 
いつからだろう・・・・中学の家庭科で「金銭出納帳」いわゆる「小遣い帳」の書き方を勉強して以来だったと思う。
子どもの頃は「小遣い帳」形式で、大人になっていつからか「家計簿」形式に変わり、現在までずっとつけてきた。
 
もともとあまり無駄遣いする性格ではないので、「生活を見直す」というような目的があるわけではなく、子どもの頃からの惰性で、つけないとなんとなく気持ちが悪い。
でも、物忘れで「あれ、払ったっけ?」と思った時、家計簿を見ればわかるし、習い事をしていた時などには、友人から「あの時の衣装代いくらだったか、調べてくれない?」と頼まれたこともあった。もちろんスーパーの商品の底値もわかる。
 
事務所のホームページ「法律コラム:離婚」の「離婚を有利に進める方法」の中でも書いたが、夫の生活費の不払いや夫から「妻の浪費」「家計能力がない」などと難癖(?)をつけられた時には、家計簿は有力な証拠となるし、また、家計簿のメモ欄に書いた短い文章が時には離婚の重要な証拠となることもある。
しかし、そういう人に限って家計簿なんかつけておらず、悔しい思いをすることがよくある。
 
また、破産を申し立てる場合や、裁判所から破産管財人に選任された場合などは、弁護士が破産者の毎月の家計をチェックしなければならない。
そういう時には、自分自身が家計簿をつけているから、各費目のおおよその適正価格はそれなりに判断できるから、家計簿をつけることは仕事にも少しは役立っている。
 
ところで、母が亡くなった後、遺品を整理していたら、家計簿が何冊も残っていた。それも市販の家計簿ではなく、普通の大学ノートに自分で使いやすいように線を引いて枠を作り、予算も立てて、毎日書いていた。その几帳面さに驚いた。
母の性格が少しは遺伝してるんかなあ。
 
 

 
(女性弁護士の法律コラム NO.128)
 
新年早々、悲しい知らせが届いた。
女性弁護士の草分け的存在のお一人、東京の坂本福子弁護士が1月12日亡くなられた。80歳。
 
坂本弁護士は、数々の男女差別の裁判に取り組まれ、女性の権利を切り開いて来られた。
結婚退職制、男女差別定年制、男女賃金差別などなど・・・・書籍などで判例紹介されている男女差別事件のほとんどを手がけて来られたと言っても過言ではない。
「女」というだけで「男」と差をもうけることが平然とまかりとおってきた時代に、当事者女性らと共に闘い、その信念は、長い弁護士人生の中で少しもゆらぐことはなかった。
体重が30キロもない痩せたその身体のどこにそんなパワーがあるのだろうと思ってしまう。
 
坂本弁護士が1982年に出版された「女性の権利」(法律文化社)は、私にとってはバイブルのような本で、女性の権利問題などの講演を依頼された時には、必ず繰り返し読み返した。
闘わないと道は開けない、そして闘えば必ず道は開ける・・・坂本弁護士はそう教えてくれた。
 
そんな坂本弁護士と、日本弁護士連合会の両性の平等委員会や自由法曹団の会議でご一緒し、議論したり、親しく話をさせていただいたことは、懐かしい思い出になっている。
 
男女雇用機会均等法ができて約30年。
社会は、あらゆる分野で男女平等が実現できているだろうか?
現在、女性を取り巻く状況は、より複雑となり、男女差別も見えにくいものとなっている。
坂本弁護士は、きっと、真の男女平等が実現するまで「闘わなきゃあダメよ」と仰っているはず。
 
ご冥福をお祈りします。
 
 
 
 
 

今年最後の仕事・・・公正証書遺言の作成

 
(女性弁護士の法律コラム NO.127)
 
Sさんの相談を受けたのは、11月初めだった。
Sさんは、自分は末期ガンなので、遺言を作りたいと語った。その時、Sさんの口から「末期ガン」という言葉が出なければ、およそガン患者には見えなかった。
 
私は、以前にも、ガン患者の方から遺言の作成の相談を受けたことがあったが、「遺言の内容を考えてきます」と帰られた後、連絡がないなあと思っていたところ、後日、遺言を作成する前に亡くなられてしまったことを知った。悔いが残った。
Sさんに、そのエピソードを話すと、「私は、まだ大丈夫です」と笑顔で帰られた。
 
ところが、12月初め、Sさんから、体調が悪いので、自宅まで来て欲しいと電話が入り、飛んで行った。
人間、元気な人でも、明日何が起きるかわからない世の中なので、とりあえずすぐに自筆で遺言を作成してもらうこととし、それと共に、公証人役場で公正証書遺言を作成することに決めた。
 
Sさんは、独身なので、自分の遺産は多くの友人知人に分けたいという希望を持っていた。しかし、弱った身体で、遺言の内容すべてを手書きで書くのは大変だったと思う。
 
公正証書遺言の作成日がなんとか12月28日に決まり、その日まで、突然倒れて意識を失ってしまうようなことがないかしらと心配したが、大丈夫だった。
そして、今日、Sさんは、雨の中、公証人役場に赴き、自筆で書いた遺言と同じ内容の公正証書遺言を作成することができた。
Sさんは、とてもホッとしておられた。
公証人さんが「公正証書遺言は、あなたが120歳になるまでここで保管しておきますからね」と言われた時、Sさんは「120歳を超えて生きたらどうしましょう?」と冗談が出るほどだった。
そして、もちろん私も、Sさんの気持ちに応えられたことが嬉しかった。
 
1日でも長く元気でいてほしい。
 
 
 

 
(女性弁護士の法律コラム NO.126)
 
日本維新の会の公約は、どれも私の考えとは相容れないものばかりだが、「最低賃金制の廃止」まで公約に掲げるとは驚いた(2012年12月1日付け朝日新聞)。
 
最低賃金制というのは、最低賃金法という法律によって定められたもので、労働者が低い賃金で働かされるのを防ぐため、一定額以下の賃金で労働者を働かせてはならないことを強制したものである。
同法1条は、「この法律は、賃金の低廉な労働者について、賃金の最低額を保障することにより、労働条件の改善を図り、もって、労働者の生活の安定、労働者の質的向上及び事業の公正な競争の確保に資するとともに、国民経済の健全な発展に寄与することを目的とする」と定める。
 
最低賃金額は、毎年、都道府県別に定められるが、決して高いものではない。
現在、最も高いのが東京都の時給850円で、京都は759円、一番低いのは島根県と高知県の652円である。
 
最低賃金制がなくなれば、賃下げに歯止めをかけるものがなくなり、労働者が際限なく低い賃金で働かされ、苦しい生活を強いられることは明らか。まさに奴隷状態である。
 
維新の会の本質がどこにあるか、しっかり見抜かなければいけない。

 
(女性弁護士の法律コラム NO.125)
 
11月29日、京都をはじめとする関西圏の住民を中心に1109人の原告が、関西電力と国を相手取り、大飯原発(福井県)1~4号機についての運転差し止めと原告1人あたり月1万円の慰謝料を求める訴訟を、京都地方裁判所に提訴しました(本日付け朝刊各紙)。
 
国や関電は、大飯原発の真下に活断層がある可能性が指摘されても、今もなお、原発の稼働を止めようとしません。
もし、大地震が起これば、福島以上の取り返しができない甚大が被害が生じることは明らかです。
住民の怒りはおさまりません。
 
1000人を超える原告による提訴は、京都地裁始まって以来ではないでしょうか。
(なお弁護団は1万人の原告を募集しています。)
とても重要な大裁判ですね。
 
 
 

パソコン遠隔操作による誤認逮捕と自白

 
(女性弁護士の法律コラム NO.124)
 
遠隔操作されたパソコンからネット上に犯罪予告された事件で、4人もの無実の人が誤認逮捕された。
そして逮捕された4人のうち、2人は逮捕直後は否定していたにもかかわらず、警察や検察の取り調べに容疑を認めていた。
 
「就職試験に落ちたので、むしゃくしゃしていた。不採用の知らせを受けた当日にやった」
「楽しそうな小学生を見て、自分にはない生き生きさがあり、困らせてやろうと思った」
 
警察や検察から、ありもしない「動機」を、いかにも「ありそうに」言わされているのである。
彼らは「犯行を認めれば罪が軽くなる」と言われたと証言している。
世間の人は、よく「やってないのに自白するはずがない」と言う。
でも、「やってないのに自白をしてしまう」のが警察や検察での取り調べの現実である。
 
取り調べの全面可視化は絶対に必要である。
 
 
 

人生相談しても、いいですか?

 
(女性弁護士の法律コラム NO.123)
 
30代前半の女性から離婚の法律相談を受けた。
彼女の母親は、私と同じ位の年齢のようだが、夫婦関係の悩みを相談できるような関係ではないと語った。
相談できる友人もいないとのこと。
離婚する道を選んだ方が良いか、これから何をしていったら良いかなど、一人で悩んでいるという。
 
彼女から「先生、次からは相談時間を延長してもらって、人生相談してもいいですか?」と尋ねられた。
 
う~ん・・・・
 
私自身は、カウンセラーの資格があるわけでもないので、彼女の人生の悩みに対し適切な対応をする自信はない。だから、法律に関わること以外の意見を求められり相談を受けたりした場合には、結局、「弁護士」としてでなく、一人の「人間」として、自分の経験や価値観・人生観から考えを述べるだけになる。
 
「それでもいいなら、時間は取るけど」と答えた。
 
離婚するかどうか、離婚後どのように生きていくのか等は、自分の人生なのだから、自身で決断しなければならないことである。
私たち弁護士は、少しだけ法的な力をお貸しするだけで、その人の人生まで責任を負うことはできない。
だから、友人に対してであれば「こうしたら、いいんじゃない?」「こう、すべきと思う」と言えることでも、相談者や依頼者の人生相談に対しては安易にそういう言い方はできないのである。
 
 
 
 
 

過労死弁護団全国総会に参加しました。

 
(女性弁護士の法律コラム NO122)
 
9月28ー29日の両日、京都で過労死弁護団全国連絡会の総会が開催されたので、当事務所からは、日野田弁護士と二人で参加しました。
私は全国総会には初めての参加でしたが、28日は、25都道府県から弁護士120名と遺族ら約10人が出席したとのことで、新聞報道によると、これは過去最多の出席者だったそうです。
 
過労死防止基本法制定を求める運動の状況報告から始まって、各地から、精神障害による過労自殺や脳・心臓疾患による過労死の労災認定例・裁判例などの報告があり、活発な討議がされました。
残業時間を把握するのにどのような工夫をしているのか、裁判官を説得するにはどのようなことを強調したら良いのか、厚生労働省の労災認定基準をどのように理解し利用すべきか、など生の報告がとても勉強になりました。
 
私は、弁護士になった当初、過労死がまだ「急性死」と呼ばれてきた時代から、過労死問題に関わってきました。
被災者が死亡されてから10年近くたって裁判でようやく労災あるいは公務災害認定を勝ち取った事件もありましたが、いまだに過労死のない社会は実現していません。
 
現在、中学校教諭の脳出血(生存)が公務災害であるとの認定を求める裁判(最高裁係属中)と企業で働いていた労働者の過労による精神障害について企業に対し損害賠償責任を求める裁判(2件。京都地裁係属中)に関わっています。
 
全国の弁護士がそれぞれ情報や経験、ノウハウを交流し、1つでも多くの労災認定や裁判での勝利を勝ち取っていくことが過労死を根絶する1歩であることを改めて痛感しました。
 
 
 

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