結婚していない男女の間の子ども(非嫡出子)の相続分を、結婚している夫婦間の子ども(嫡出子)の半分とする民法の規定(900条4号)について、大阪高裁が、2011年8月24日付けで、法の下の平等などを定めた憲法に違反するとして、非嫡出子に同等の相続を認める決定をしていたことがわかりました(2011年10月4日付け朝日新聞朝刊)。
2011年9月11日付けの当コラムで、最高裁に係属していた同種事件について当事者が訴訟外で示談してしまったため、事件がなくなってしまったことをご紹介しました。
この高裁決定についても、当事者は争わず違憲判断が確定したようで、最高裁に同種事件がないことには変わりありません。
法制審議会(法相の諮問機関)は、既に1996年に非嫡出子と嫡出子の相続分を同等にする民法改正要綱案をまとめています。最高裁の判断を待つまでもなく、1日も早い民法改正が求められていいます。
女性弁護士の法律コラム
京都市は、10月3日、配偶者や恋人からの暴力(DV)による被害者の支援拠点「市DV相談支援センター」を開設します(2011年9月20日付け京都新聞朝刊)。
24時間つながる専用ダイヤルが設けられ、相談だけでなく、身体的な安全から心のサポート、住居の確保や就職など多方面にわたる支援が予定されているとのことです。
5人が常駐し、カウンセリングの相談業務に加え、裁判所への保護命令手続にスタッフが同行したり、就職支援で職業訓練施設への紹介もするそうです。
但し、センターに加害者が押しかけることを防ぐため、看板も掲げないとのこと。
DV被害者にとって、とても心強い施設ですね。
子の利益のため必要があると認めるときは、家庭裁判所は、子の親族の請求によって親権者を他の一方に変更することができます(民法819条6項)。
離婚の時は、話し合いで親権者を決めることができますが、親権者の変更は、必ず、家裁の調停や審判によらなければなりません。
どのような場合に親権者の変更が認められるかは、家裁の裁判官の裁量にゆだねられていますが、先に親権者を決めた後に、「著しい事情の変更があったこと」が必要とされています。実際には、子どもの意思や現状の尊重などが重要な考慮の要素になっているように思われます。
過去に変更が認められた事案としては、非親権者が子どもを監護していて、子が親権者の下に戻る意思が全くない、あるいは拒絶している場合などがあります。
民法では、正式の婚姻によらないで産まれた婚外子(非嫡出子)の相続分は、嫡出子の半分となっています(民法900条4号)。
しかし、子ども自身は親を選べるわけではないので、この規定は、社会的身分による差別を禁じた憲法14条に違反するという議論があります。
最高裁は、1995年に合憲判断をしましたが、昨年7月7日、この規定の憲法違反が争点の事件を大法廷に回付したことにより、合憲判断が見直される可能性が出るのでは、ということで注目されていました(当コラム2010年7月10日)。
ところが、違憲判断どころか、この事件は、意外な形で終わってしまったようです。
実は、最高裁に抗告していた当事者が、代理人弁護士に相談することなく、相手方と直接和解交渉を行い、和解が成立してしまいました。そのことを知った最高裁判所は、抗告の利益を欠くに至ったとして却下の決定の下し、事件は終了してしまいました。(最高裁平成23年3月9日決定)
残念でなりません。
政権が、民主党であろうと、自民党であろうと、この規定に対し保守層の根強い反対意見がある今の国会で、この規定の改正を実現することはおよそ期待できません。最高裁が「違憲」という司法の機能を果たすことが求められていたのに・・・・・
現在、同種の事案で係争されている事件があれば、1日も早く最高裁に抗告してほしいと思います。
朝日新聞(8月2日・3日付け)に、面白い特集が載っていました。タイトルは、「嫁女優」。
「表面上は当たり障りなくやっています。でも、決してわかりあえてはいません。だからこそ『嫁女優』なんですよ」(嫁)
他方、姑も「姑女優を演じています。主演女優賞でもいただけたら、と一人心の内で笑っております」
嫁姑問題は古くからある問題ですが、姑との関係だけで離婚の相談に来られる方はそれほど多くはありません。
交際して結婚したのは、あくまで夫ですから、これまで全く違う生活をし、たまたま自分が結婚した男性の母親=他人とうまくいかなくても不思議ではありません。「嫁女優」という演技に大きなストレスを感じ、うつになってしまった人もいます。でも、「嫁女優」が無理でも、それだけで離婚というのは難しいかなと思います。
実は、嫁姑問題で重要なことは、間に立つ夫の姿勢です。
夫と姑は親子ですから、文句を言ったり喧嘩をしたりしても分かりあえるものだと思います。ですから、夫は基本的には妻(嫁)の立場に立って、嫁姑関係を調整することが求められます。
夫がそのような立場に立たず、むしろ妻に対し「嫁なんだから我慢せよ」と言ったり、妻の訴えに耳を貸さないような場合には、その夫の無責任さ・無理解が離婚原因となり、離婚が認められることになるでしょう。
速報です。
東日本大震災で被災した人に届けられる義援金や、震災で亡くなった人の遺族に支給される災害弔慰金などを、金融機関から借金がある場合でも差し押さえられないようにするための法律が、8月23日、成立しました。
これにより、義援金、災害弔慰金、被災者生活再建支援金、災害障害見舞金については、差し押さえができなくなりました。
自己破産をする方の生活再建にもつながるものです。
つい先頃、昨年に離婚が成立した女性依頼者の方から「結婚しました」という葉書が届きました。
親娘ほどの年齢差があったわけではありませんでしたが、とても可愛らしい方で、私は娘のように思っていました。
その彼女が再婚したという連絡をくれたので、本当に嬉しく思いました。
ところで、女性の場合は、離婚が成立しても、すぐに再婚できるわけではなく、民法は「6ヶ月」を経過しないと再婚できないと定めています(733条1項)。
この法の趣旨は、離婚後6ヶ月以内の再婚を認めると、この間に生まれた子の父親がどちらの子どもかわからなくなるということのようですが、今時、親子鑑定をすれば、かなりの確率で父親を特定できますし、そもそも子どもを生むことができない女性や生めない年齢に達した女性についても一律に適用されるという不合理もあります。
過去に、この規定が憲法14条1項の法の下の平等に違反するとして最高裁まで争われたことがありますが、最高裁は、平成7年12月、「父性の推定の重複を回避し、父子関係をめぐる紛争の予防を目的とする以上、憲法14条1項に違反しない」と判断しました。
今の時代に全くそぐわない男女差別のこの法律。是非とも改正したいものです。
世間体などを考えず、きちんと医者に行くこと。
家庭内暴力(DV)を受けて怪我などをした時、「恥ずかしいから」とか「世間体が悪いから」として、医者に行かない場合が少なくありません。
でも、医者に行っておれば、後で診断書も書いてもらえますし、カルテにもその記載が残されますので、DVを受けていたという有力な証拠になります。
また、夫婦間の不和によって自律神経に不調を来したような場合にも、神経内科あるいはカウンセリング等の専門機関の受診をお勧めします。
もちろん、ご本人の体調の回復に何らかのメリットがあることはもとより、やはりカルテにその原因などが記載されるからです。
医者には守秘義務がありますので、他人に知られたくないことを話しても、他に漏れることはありません。
なお、カルテの保存期間は5年間なので、注意しましょう。
災害弔慰金は、災害で死亡した人の配偶者・子ども・両親・祖父母・孫が支給対象で、家計を支えている人が亡くなった場合は500万円、それ以外の人の場合は250万円が支給されます。
しかし、今回の東日本大震災では、兄弟姉妹を亡くした人も少なくないことから、支給対象を広げることが求められていました。
昨日、国会で、災害弔慰金支給法が改正され、兄弟姉妹でも、死亡した人と生前同居するか、生計を同じくし、ほかに遺族がいない場合には、支給の対象となることが決まりました。
最近、借家の敷引きや更新料をめぐって、最高裁の不当判決が続いていましたが、7月21日、欠陥住宅に関し、久しぶりに評価できる判決が出ました。
事案は、オーナーとして購入した9階建てマンションの床や壁にひび割れなどの欠陥があったとして、施工業者らに計3憶5000万円の損賠賠償を求めたというものです。
2007年に最高裁は、「建物の設計・施工者等は、建物に基本的な安全性が欠けることがないように配慮すべき注意義務を負う」という初判断を示しました。
今回の最高裁判決は、その「基本的な安全性が欠ける」瑕疵(=欠陥)とは、「居住者等の生命・身体又は財産を危険にさらすような瑕疵をいい、その瑕疵が、現実的な危険をもたらしている場合に限らず、これを放置するといずれは居住者等の生命、身体又は財産に対する危険が現実化することになる場合にも該当する」との判示し、将来の危険にも賠償義務があるという被害者保護の判断を下しました。
離婚後に親権者となった者が未成年の子どもを残して死亡した場合は、親権者はどうなるのでしょうか。
民法は、未成年者に対し親権を行う者がないときは、後見が開始すると定めていますから(838条1項)、通常は、死亡した親権者の親族が後見人として選任されることが多いようです。
また、親権者が死ぬ前に遺言で未成年者の後見人を指定しておれば、それに従うことになります(民法839条1項)
ただ、離婚時に親権者にならなかった他方の親が自分を親権者と指定してほしいと家庭裁判所に申し立てることがあります。
このような場合でも、親だからと言って当然に他方の親に親権の変更が認められるわけではありません。
養育費の支払いなどの監護の実績や子どもの意思などの事情を総合評価して家庭裁判所が決定します。
東日本大震災による被災者が、将来、損害賠償を求める際の記録として利用できる記録ノート(新潟県弁護士会作成)については、5月16日の当コラムでご紹介しました。
今回、ご紹介するのは、原発事故の被害者の方々が、東京電力に対する損害賠償を求める際の記録して役立つよう、福島県弁護士会が作成した「福島県原子力災害被災者・記録ノート」です。
原発事故の被害者の皆さんの多くは、損害賠償請求の内容や方法などについての情報も少なく、不安な日々を送っておられると思います。
しかし、記憶は時間の経過とともに薄れていく可能性があり、かつ、日々の生活の中で、何をどのように記録しておいたらよいか、どのような資料を残しておいたらよいのかなどがわからないという方も多いのではないでしょうか。
この記録ノートは、原発事故による補償を受けるために必要なことを書き留めておくもので、そのほかに、弁護士会をはじめとする相談窓口の記載や賠償金支払いまでの流れの説明もあります。
福島県弁護士会のホームページからダウンロードできますので、是非、ご活用ください。
相続を放棄したい場合、民法は「自己のために相続の開始があったことを知った時から3ヶ月以内に、・・・放棄しなければならない」と定めています(915条)。
「自己のために相続の開始があったことを知った時から」というのは、通常、被相続人が死亡したということを知った日の場合が多いですが、第1順位の相続人が全員放棄したため、第2順位の人が相続人となるような場合には、自分が相続人となったことを知った日となりますので、必ずしも死亡した日とは一致しませんね。
また、この「3ヶ月」という期間は、相続するか放棄するかを考えるための期間ですので、自分が相続人となったということだけでなく、どのような相続財産があるのかを認識した、あるいは認識しうべき時から計算されるというのが判例の立場で(最高裁昭和59年4月27日)、家裁の実務でもこのように運用されています。
従って、仮に親と長年音信不通状態で離れて暮らしており、親が死亡したことは連絡を受けたが、親に借金があることまでは全く知らず、銀行から請求を受けて初めて知ったというような場合には、その銀行から請求書が届いた時が「3ヶ月」の期間の始まりとなります。
その意味で、いつから「3ヶ月」かを計算するかは重要なので、迷うようなことがあれば、弁護士にご相談ください。
昨日は、当初雨予報だった天気予報がかわり、午後からは晴れ、しかも今年一番の暑さとなった。
先日、家裁から選任された相続財産管理人としての仕事をするために、午後から担当事務局のTさんと二人で山科へ。
山科と言っても、もう滋賀県との県境に近い場所。
相続財産管理人というのは、相続人がいない、あるいは不明の場合に、利害関係人から申立てがあると、家裁から選任され、相続財産を管理し処理するなどの仕事をする(民法951条~)。
この件の相続財産でわかっているのは、今のところ自宅不動産だけ。
その自宅不動産の状況を確認するためと他に相続財産がないかの調査のため訪れた。
長らく人が住んでいないため、予想どおり、カビくさい臭いとほこりだらけの部屋には家具や衣類などがそのままの状態で放置されていた。窓を開け放ち、二人で、軍手をはめて、汗をかきながら、通帳や書類、手紙などの類がないかを探したが、結局、あまり成果はなかった。
こういうことも弁護士の仕事の1つなんです。
相続人が相続を放棄したい場合、民法は「自己のために相続の開始があったことを知った時から3ヶ月以内に」家庭裁判所に申述しなければならない、と定めています(915・938条)。
この「3ヶ月」という期間について、東日本大震災の特例措置として、震災発生3ヶ月前の平成22年12月11日以降に自己のために相続の開始があったことを知った方については、相続をするか、あるいは放棄するかを考える期間について、
平成23年11月30日まで
延長されることになりました(6月17日に国会で成立)。
従って、相続放棄をする場合には、11月30日までに家裁で手続きを行ってください。
ただし、特例の対象となるのは、災害救助法が適用されている地域のうち被災地を中心とした9県に被災時に住所を置いていた人です。被災地以外に住む相続人は対象外ですので、注意してください。
認知症の高齢者や判断能力が不十分な人を不利益から守る制度として「成年後見制度」があります(2010年9月2日付け本コラム)。
家裁は、後見開始を認めると、成年後見人を選びます。子どもや兄弟などの親族が後見人になることもあります。
後見人の主な仕事は、財産管理能力が不十分な被後見人に代わって、その財産を管理するというものです。
財産の管理とは、現状の維持だけでなく、処分する行為も含みます。例えば、印鑑・通帳の保管、介護サービス契約の締結、生活資金を捻出するための不動産の売却など多岐に及びます。
その前提として、後見人は、選任後速やかに財産を調査し目録を作成しなければなりません。
後見事務を処理するための費用は、被後見人の財産から支出することができます。
また、申立をすれば、家裁は報酬も決めてくれ、受領することができます。
震災直後の家屋倒壊や津波などの「直接死」ではないが、避難所生活など震災の環境の変化によって死亡することを、「震災関連死」と言います。
「震災関連死」と判定されると、遺族には災害弔慰金が支給されます。その金額は、生計維持者の方が死亡した場合は500万円、その他の方が死亡した場合は250万円です。
しかし、これまで「震災関連死」の基準に全国統一的なものはなく、被災地の市町村から厚生労働省に問い合わせが相次いでいました。
そこで、厚生労働省は、東日本大震災では、同省が2004年の新潟県中越地震で長岡市が作成した「震災関連死」の認定規準を各都道府県に示し、各市町村へ周知するよう求めています(京都新聞2011年6月6日付け夕刊)。
長岡市の基準によると、
・地震が発生した2004年10月23日から10月末までの死亡は関連死と「推定」
・1ヶ月以内は「可能性が高い」
・1ヶ月以上は「可能性が低い」
・6ヶ月以上経過後の死亡は「震災関連死でないと推定」
などとされています。
離婚の時に親権者にならなくても、子どもとの親子関係がなくなってしまうわけではありませんので、未成年の子どもを扶養する義務は、両親が双方で負担しなければなりません。
そして子どもを引き取らない親が、実際に子どもを育てている親に対し、養育費を払うことになります。
養育費を誰がいくら負担するかは、話し合いで決めることになります。話し合いができない場合には、家庭裁判所に調停を申し立てて、話し合い、それでもまとまらない場合には、家裁が審判で決めてくれます。
また、両親の話し合いで決めることができた場合でも、最低、その内容を合意書の形にして残しておきましょう。また、将来、支払いが遅れたり、未払いとなったりする場合にそなえ、公証人役場で公正証書を作成してもらった方が良いと思います。
養育費の具体的な算定にあたっては、両親の収入の額が判断の資料となります。家裁では一応の目安になる「算定票」を持っており、通常は、それにもとづいて調停が進められます。
20歳未満の子どもについては、父母が親権を持っている(民法818条1項)。
父母が結婚している場合は双方が親権者で、離婚の際はどちらか一方を親権者と定める。
親権者は、子どもの養育監護及び教育する権利義務を有するが、近時、児童相談所への虐待事案の通報件数は大幅に増加し、2009年は約4万4000件と、10年前の約3.8倍にも達している。
父母が、親権を濫用したような場合には、現在の民法では、家裁が、その「親権の喪失」を宣告できるという制度がある(834条)。
しかし、期限を定めずに親権を奪うため親子関係への影響が大きく、申立をためらうケースがあると指摘されていた。
このような児童虐待を防止するための民法などの改正法案が、本日、国会で成立した。
今回の制度は、親族や検察官らのほか、子ども本人や未成年後見人も家裁に申し立てることを可能とし、認められれば最長2年間親権が停止される。状況が改善されれば、親や親族は親権停止の取消請求ができるが、改善されなければ延長も可能という内容。
また児童福祉法も改正され、児童相談所長や児童養護施設の施設長らの権限を、緊急の場合は親の意向よりも優先させて、一時保護中や入所中の子どもを監護、教育できるとした。
来年4月に施行される予定。
「子どもを守る」ための最初の1歩です。
仕事が原因で過労死した場合、労働災害として労災保険の補償の対象となるのは、あくまで「労働者」です。
東京地裁は、5月19日、脳出血で死亡した執行役員の男性が「労働者」であるか否かが争われた事案で、「労働者に当たる」との判断を下しました。
執行役員というのは、会社の業務執行に対する責任と権限を持つ役員ですが、法律上の「取締役」とは異なるものです。
判決は「一般従業員時代と執行役員時代の業務実態が変わらず、一定額以上の取引では本社の決裁を仰ぐなど指揮監督を受けていた」「最終意思決定は取締役会でしており、経営会議の構成員だからといって当然経営者ということにはならない」として、労働者であると認定しました。
残業代が払われない「名ばかり管理職」が問題となっていますが、この判決によって、労働者としての権利が認められない「名ばかり役員」が少しでも減ると良いですね。