1. ノーベル物理学賞受賞の中村修二さんが裁判で開いた研究者への道
女性弁護士の法律コラム

 
(女性弁護士の法律コラム NO.182)
 
もう私たちの生活では、すっかり身近になった青色LED(発光ダイオード)。
その発明に携わった中村修二さんが、今回、ノーベル物理学賞を受賞されました。
 
今朝の各新聞でも触れられていますが、中村修二さんは、青色発光ダイオードの発明をめぐって、元雇用先の企業(日亜化学工業)に対し訴訟を起こし、職務発明の対価について、企業に雇用されている研究者へ道を開いた人としても有名です。
 
中村さんは、日亜化学に在職中に青色発光ダイオードの製造の一部にかかる発明をしました。
しかし、それに対し、会社から支払われた報酬は、たったの2万円でした。
そのため、中村さんは、2001年8月、日亜化学に対し、会社が取得した特許の持ち分の移転登録の請求と、予備的に職務発明の対価として200億円の支払を求める訴訟を起こしました。
 
2004年1月、東京地裁は、職務発明の対価を約604億円と認定し、中村さんの請求金額の200億円全額を認める判決を下しました。
最終的には、2004年12月、控訴審の東京高裁において、日亜化学が中村さんに対し、職務発明の対価として約6億円と遅延損害金約2億円を払うということで和解されたそうです。
その背景には、東京高裁では、中村さんの発明に対する貢献度を5%と低く認定していたことがあるようです。
 
訴訟の中で、対価は200億円から8億円に減ってしまいましたが、中村さんが企業内の研究者に対する正当な対価支払いへの一投石をした意義はあったと思います。
しかし、中村さん自身は、この和解を日本の技術者の敗北である、裁判所は大企業中心の判決しか下せないと怒り、日本を去ってしまいました。
 
中村さんは、受賞の会見で、「日本の研究者はサラリーマンで、良い研究をしてもボーナスが増えるだけ」とジョークを交えて語ったそうです。
そして、中村さんが研究を持続した動機は「怒り以外に何もない」とのこと。
「日本には自由がない」と研究環境を改善する必要を訴えたそうです。
 
ノーベル賞を受賞するような発明に対し、たったの2万円で済まそうとした企業。
このような日本の環境では、優秀な研究者は皆、海外に行ってしまうでしょう。
訴訟終了から10年以上経った今でも、中村さんに「日本には自由がない」と言わしめる研究環境の改善は急務です。
 

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