1. 村松いづみ
女性弁護士の法律コラム

(労働)労災の「残業時間」認定にスマホ情報

過労死や過労自殺が「労働災害」「公務災害」と認定されるには、被災労働者の残業時間がどのくらいあったのかが重要な資料となります。

そして、往々にして、労働者側と会社側とで残業時間の数字が異なります。

 

しかし、出退勤記録が杜撰、タイムカードがない、あるいは正しく打刻されないという職場も少なくなく、過去の労災認定事案では、被災した労働者の残業時間を証明するのに様々な資料が使用されてきました。

業務用パソコンの使用時間や業務に関するメールの送受信記録、夫の帰宅時間を記録していた「妻のメモ」が証拠となった事件もありました。

 

2026年4月20日付け読売新聞夕刊では、昨年7月に都内の労基署が、製造工場で働いていた会社員男性の過労自殺を認定した事案について、決め手となったのは、その男性のスマホの位置情報であったと報じています。

勤務先が提出した出退勤記録では残業はほぼなしとされていましたが、男性のスマホのアプリに記録されていた位置情報データから、連日、工場にいたことが判明。

労基署は、男性が工場にいた時には仕事に専念していたとする同僚証言も考慮して、自殺までの1ヶ月間で残業時間が173時間に達したと判断し、労災を認めました。

 

厚生労働省によると、過重な業務や仕事の強いストレスが原因で、脳や心臓の疾患、精神障害を発症して2024年度に労災認定された件数は1304件と、5年前の1.8倍に増加しています。

かし、自民党は、労働基準監督署に対し「時間外労働を月45時間以内に削減することを求める一律の指導を見直す」との提言を、4月15日、高市首相に渡しました。

また、高市首相自身も、昨秋、厚生労働相に「労働時間規制の緩和検討」を指示し、2月の施政方針演説では「裁量労働制」の見直しに意欲を示しています。

 

月45時間を超えれば過労死のリスクは高まります。

自民党の提言では、労働基準監督官が十分な指導ができなくなり、長時間労働が助長される恐れがあると言えるでしょう。

 

 

 

 

 

 

 

 

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