1. 「共謀罪」法案に反対しましょう!~あなたも「一般人」ではありません~
女性弁護士の法律コラム

 
(女性弁護士の法律コラム NO.236)
 
犯罪を計画段階で処罰する「共謀罪」の趣旨を盛り込んだ「テロ等準備罪」を新設する改正案が、2017年5月23日、自民・公明・維新などの賛成多数で、衆議院本会議で強行可決された。
 
対象犯罪は277にも及び、2人以上で犯罪を計画し、1人が下見などの「準備行為」をすれば、計画に合意した全員が処罰される。
実行後の処罰を原則とする刑法の体系が大きく変わる。
すなわち、目でとらえることができる犯罪の「着手」ではなく、目では見えない「内心」によって処罰が可能となってしまうのである。
 
日本弁護士連合会も各地の弁護士会も、会をあげて反対意見を表明し、街頭宣伝、集会、パレードなどのとりくみを行っている。
 
政府答弁では「一般人は対象にならない」としているが、他方、「捜査の対象」になれば、一般人ではなくなることも認めている。
 
2017年5月24日付け京都新聞朝刊に、作家の雨宮処凛さんが興味深い投稿をされていた。以下、簡単に紹介する。
2008年、「麻生邸ツアー」を企画した。当時の総理大臣だった麻生氏の私邸が渋谷にあり、敷地だけで62億円の豪邸だというので見に行こうということになったという。
同年9月リーマンショックが起こり、翌年1月には「年越し派遣村」が出現した時で、海外でも、格差を実感するために、このようなツアーがあることを知って企画された。
ところが、渋谷駅で待ち合わせをし、50人ほどが歩道をぞろぞろと麻生邸に向かって歩き始めて5分。突然、3人が逮捕された。
東京都公安条例の「集団示威行動」に該当するという容疑であった。
結局3人は、12日間も勾留され、自宅や関係先が家宅捜索された。
格差社会に疑問を持つ貧しい人が、総理大臣の私邸を見に行こうという意思を持っただけで「犯罪者」として逮捕される。
「共謀罪」がなくとも、このような無法がまかり通るのである。
3.11以降、この国では「声を上げる人々」が多く路上に繰り出すようになり、国会周辺には何度も10万人規模の人が集まっている。
「政権に都合の悪いことを言うやつらは徹底的に取り締まりたい」そんな政権の思惑がちらつく。
共謀罪は、この国の民主主義を破壊するものである。
 
雨宮さんが挙げるケースのように、誰もが、国や自治体などの政策などに不満を持ち、声を上げよう、行動しようとしただけで、もはや、その人は「一般人」ではなくなり、「犯罪の対象」となってしまうのである。
国や自治体への不満だけではない。大企業への不満も「対象」になりうる。例えば、岐阜県大垣市では、風力発電施設の建設に反対する市民の情報が警察によって収集されている。
 
共謀罪の審議は、参議院へ移る。
反対の声を上げましょう!
 
 

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