遺言で、自分の財産を誰にどれだけあげようと自由です。
ただ、兄弟姉妹(その代襲者も含む)以外の相続人には、その遺言をした本人の意思に反しても遺産の一定割合を請求できるという制度があります。これを遺留分減殺(いりゅうぶんげんさい)請求と言います。
 
その割合は、親など直系尊属のみが相続人であるときは、被相続人の財産の3分の1。その他の場合が相続人であるとき、被相続人の財産の2分の1です(民法1028条)。
 
遺言によって、遺留分に相当する遺産が与えられている時には、それ以上を求めることはできません。
 
遺留分が侵害されていても、遺言自体が当然に無効になったりはしませんので、侵害された相続人が請求したい場合には、きちんとその意思を表示しておく必要があります。
その方法は、必ずしも裁判による必要はありませんが、できれば証拠が残るように、内容証明郵便でされることをお勧めします。
 
 
 
女性弁護士の法律コラム
 
「親が亡くなりましたが、いつまでに遺産分割をしなければなりませんか?」というご相談を受けることがあります。
 
遺産分割そのものについては、いつまでに分割すべきというような期限の定めはありません。
でも、あまりに長く放置しておくと、相続人の中には死亡する人もいたりして、その死亡した人の相続人を更に探さねばならないということも起こり得ますので、その点は十分留意してください。
 
遺産分割には期限はありませんが、もし相続税を払わなければならないような遺産総額の場合には、相続税の申告には期限があります。
相続が発生しても、すべての人が必ず相続税を払わなければならないわけではなく、原則として遺産が一定額(基礎控除額)を超える人だけが払うことになります。
基礎控除額=5000万円+(1000万円×法定相続人数)
相続税を払わなければならない場合には、相続の開始があったことを知った日の翌日から10ヶ月以内に税務署に申告する必要があります。相続人の間で遺産分割で争っている場合でも、法定相続分で仮の申告をしておいた方が良いでしょう。
もし相続税の申告を忘れたような場合には、法定納期限から5年で時効となります。
 
2010年11月5日付け本コラムで「離婚と財産分与」について書きました。
 
財産分与というのは、結婚後夫婦で築いた財産を離婚の時に分けるというものですが、それには当然「財産」が存在することが大前提です。
でも、もし相手方が自分名義の「財産」を隠している場合、裁判所が探してくれるわけではありません。
ですから、同居している間に、相手がどこの金融機関と取引しているかを調べておく必要があります。取引金額まで把握できなくても、金融機関の支店名まではわかっていた方がよいと思います。
 
 
 
養子縁組をする理由は、様々あると思いますが、結婚と同じで、届けを役所に提出することによって成立します。
 
但し、いくつかの条件があります。
 
まず、年上の者を養子とすることはできません(民法793条)。他方、未成年者を養子とするには、原則として家庭裁判所の許可が必要となります(798条)。但し、自分や配偶者の子どもを養子とするような場合には不要です。
 
次に、配偶者のある者が未成年者を養子とする場合には、配偶者とともにしなければなりません。(795条)。
 
また、養親であっても養子であっても、配偶者のある者が縁組をするには、その配偶者の同意が必要となります(796条)。
 
養子縁組が成立すると、養親の姓を名乗ることになります(810条)。また、扶養や相続など法律的には実子と同じ立場となります。
 
そして、養子縁組を解消したい時は、これも離婚と同じく、届けを出すか、話し合いができない時には離縁の裁判を起こすことになります(814条)。
 
 
 
「借家の借り主が半年以上家賃を滞納したまま行不明になってしまいました」家主さんから、こんな相談を時々受けることがあります。
 
家主が明け渡しを求めるには、相応の理由が必要です。
 
しかし、半年以上も家賃を滞納したまま行方不明になっているということですので、支払いを督促した上で、家賃滞納を理由に賃貸借契約を解除することができます。
借り主が行方不明なので、滞納家賃の支払い請求や契約の解除は、裁判所での「公示送達」という方法ですることができます。
 
しかし、解除することができるとしても、すぐに家主側が家財道具を持ち出すことはできません。
その借り主を相手に、滞納家賃の請求や借家の明け渡しの裁判を起こす必要があります。借り主が行方不明でも、前記した「公示送達」という方法により裁判することができ、比較的簡単に明け渡しを求める判決を下してもらえます。
そして、この判決をもとに、裁判所の執行官に借家の明け渡しの執行や家財道具を差し押さえをしてもらうことになります。
 
 
 
未婚の母が増えています。愛人のように立場上結婚できない場合もあるでしょうし、最近では結婚という法的な束縛を嫌ったり、あるいは夫婦別姓を希望するため、あえて結婚届を出さないまま出産するというケースもあるようです。
 
正式な婚姻届を提出していない男女の間に産まれた子どもについて、母との関係では、出産という事実によって親子関係が当然発生します。
 
しかし、父との関係では、父が「認知」しない限り、法律上の親子関係は生じません。養育費の支払関係も相続関係も発生しません。
 
認知する場合には、父が役所に認知届を提出します。
 
男性が認知を拒む場合には、子どもまたは母親は、家庭裁判所に、調停を申し立てたり、認知の訴えを起こすことができます。
相手とすべき男性がすでに死亡している場合でも、死亡の日から3年間を経過していない間は、認知の訴えを提起することができます。
 
認知されても、姓や親権は原則として今までどおり母親ですが、家裁の許可を得て、父の姓に変えることもできます。
また、養育費請求や相続もできるようになります。
 
 
 
 
本格的なスキーシーズンになりましたが、スキーヤーあるいは最近スノボーのボーダーも加わって、衝突事故が目立ってきます。
 
スキーヤーやボーダーは常に加害者にも被害者にもなりうるわけで、この種の事故が発生した場合の双方の責任が問題となります。
 
過去の裁判例で、下の方で滑っていたAさんに上から滑ってきたBさんがぶつかった事故で、AさんがBさんに損害賠償を請求したところ、地裁も高裁も「スキーの滑走自体に危険が含まれており、Bさんの滑走に暴走などの危険な事情は認められない」として、Aさんの請求を退けました。
 
しかし、最高裁判所は、「上方から滑る者は、前方を注視し、下方を滑っている者との衝突を回避する注意義務がある」とする判断を示した上で、「Bさんには、Aさんを発見し、接触を避けるだけの時間的余裕があった」として、Bさんの損害賠償責任を認めました。
 
事故の態様は、ケース毎に異なるとは思いますが、上から滑ってくるスキーヤーの責任の比重が高く、また上手な人の責任が重くなるでしょう。またスキー場のルールに違反している方の過失が大きいとも言えるでしょう。
 
 
 
 
12月1日付けコラムに続く、離婚を有利に進める方法(その2)。
 
家計簿をつけること。
 
妻側からの離婚原因として、「夫が生活費をくれなかった」「くれても少ししかくれなかった」などと主張することがあります。
また、夫側からは「きちんと生活費を渡していたのに、妻が浪費していた」「妻には家計の管理能力がない」などと主張されることがあります。
そんな時、家計簿があれば証明は容易です。また家計簿からは、その家族の生活の実態も見えてきます。
もちろん、離婚などを考えていなくても、家計をきちんとやっていくには、家計簿をつけた方が良いでしょう。
最近は、家計簿の無料ソフトなどをダウンロードしてパソコンでもつけられますよね。
 
もうすぐ新しい年になります。今、書店には新しい家計簿がたくさん並んでいます。
さあ、2011年から家計簿をつけましょう。
 
 
 
 
 
 
離婚する時、未成年の子どもがいる場合には、必ず親権者をどちらにするかを決めなければなりません。
 
1度親権者を決めても、それが子どもの福祉にとって不適当であることが判明したり、事情が変わった結果、親権者を交替させることが適当となった時は、親権者の変更を求めることができます。
ただし親権者の変更は、父母の話し合いだけではできません。
必ず家庭裁判所の調停・審判の手続きをとらなければなりません(民法819条6項)。
親権者の変更は、あくまで子どもの利益や福祉が最優先で決められるものです。決して親の都合で決まるものではありませんので、注意してください。
 
 
 
 
 
このほど政府税制調査会は、所得税や相続税の見直し案を決定。
その見直し案の1つに、相続税の基礎控除があります。
 
「父が亡くなりましたが、相続税を払わなくてはいけないのでしょうか?」という質問が寄せられることがあります。
 
相続税を納めなければならないか否かは遺産総額によりますので、相続が発生しても必ず税金を納めなければならないわけではありません。
というのは、相続税には「基礎控除」があり、一定金額までは控除を受けられるからです。
現在、この基礎控除額は、「5000万円+(1000万円×法定相続人数)」という算式によって計算します。例えば、父が亡くなり、母と2人の子どもが相続人の場合には、遺産8000万円までは相続税はかかりません。
 
今回、政府税調は、基礎控除を「3000万円+600万円×法定相続人数」に改める案を出しています。
相続人が3人だと、遺産が4800万円超えると、相続税を払わなくてはなりません。
 
官首相は、法人税については引き下げを指示し、他方で、個人に対しては増税する。こんなこと、納得できませんね。
 
「子どもにひどい目にあわされた。親子の縁を切りたい!」
時々、そんな相談を受けることがあります。でも、現行の法律では、親子の縁を全く切ってしまう方法はありません。
 
ただ、民法は、被相続人に対し道義に反するような行いをした相続人について相続権を失う場合を定めています(891・892条)。
例えば、親を殺そうとして刑罰に処せられたり、親の遺言書を破棄・偽造した相続人は、当然に相続権を失います。これを「相続人の欠格」と言います。
 
また、欠格の場合ほどひどくはないが、手に負えない「親泣かせ」の子どもの場合には、家庭裁判所に申し立てて相続をさせないようにしてもらうことができます。
これを「相続人の廃除」と言います。
どの程度の行いがそれにあたるかは、具体的な事案を総合的に判断して最終的には裁判所が決めることになります。
この「廃除」の申立てができるのは、被相続人です。
また、被相続人は、遺言でも廃除の申立てをすることができます。
 
 
 
 
 
長年、離婚事件を扱ってきましたが、夫婦の間の出来事は、二人にしかわからないことが多く、「言った」「言わない」、こんなことが「あった」「なかった」の争いとなり、証拠がない場合、たとえ真実であっても裁判所が認めてくれないこともあり、とても悔しい思いをすることが少なくありません。
そこで、不幸にも離婚を考えるようになった時に少しでも有利に進められるためのアドバイスです。
 
日記を書くこと。
 
日記はほぼ毎日、その日の出来事や思いを書くものですから、それが継続されておれば、かなり信用性は高いと言えるでしょう。
「日記を書くのは大変」と思われる方、手帳や予定表の余白に日付けを入れて、その日の出来事や思いをたとえ2~3行でも記しておかれるのでもいいと思います。
もし家計簿をつけておられるなら、その余白やメモ欄でもかまいません。
 
言葉は(録音しない限り)消えてしまいます。少しでも記録にとどめておくことが大切ですね。
 
 
 
最近の女性ドライバーの急増ぶりには目を見張るものがあります。現在、女性の免許保有者は約3500万人。でも、それだけ、交通事故に遭う危険性も高まったと言えます。
 
ところで、家庭の主婦が交通事故でケガをし、入院のため家事ができなかった場合、どのような請求ができるでしょうか。
家事労働は家庭内ではなくてはならないもので、これを家政婦さんなどに頼めば給料を払わなくてはならないわけですから、それ自体経済的な価値があることは明らかです。
しかし、現実は、主婦に給料が支払われているわけではないので、損害を計算するには、通常、女性労働者の平均賃金を基準とします。
従って、主婦がケガによって入院したため家事が出来なかった場合には、その日数に女性の平均賃金をかけた額が休業損害となります。
また、実際に家政婦さんを雇った場合には、それが必要かつ相当で、支払った給料も特に高額でない限り、全額加害者に請求することができます。
 
 
 
小学生や中学生など幼い子どもたちの「いじめ」による自殺があとをたちません。
いつの時代でも多かれ少なかれ、いろんな形での「いじめ」は存在しました。でも、今日ほど陰湿だったことはかつてなかったのではないでしょうか。学校教育のあり方を、学校ぐるみ、地域ぐるみで真剣に問う時期に来ているような気がします。
 
「いじめ」を受けてケガなどをすることも日常茶飯事に起きているようですが、そのような場合、法的には誰に責任を問えるのでしょうか。
 
まず、ケガをさせた「いじめっ子」本人は当然です。ただ、この子が小学生のようなまだ十分な判断能力がない場合には、親の責任も考えられます。なぜなら、親は、家庭内外を問わず、子どもの生活全般にわたって保護監督すべきであり、少なくとも他人の生命・身体に危害を加えることのないよう、常日頃から教育をしなければならないからです。
 
また学校の担任教師も、学校生活の中においては、他の子どもから危害を加えられる恐れのある子どもについては、その行動にきめ細かな注意を払い、危険を未然に防止する義務があると言えるでしょう。
 
そしてまた学校自体の責任も考えられるでしょう。
 
 
 
 
きょう11月15日は「いい遺言の日」。
この場合、「ゆいごん」と読むのではなく、「いごん」と読みます。
なぜか、法律家の中には、「いごん」と呼ぶ人も少なくありません。
 
そして、きょうから11月22日「いい夫婦の日」までを「夫婦遺言週間」と言うんだそうです。
 
夫婦、特に子どものいない夫婦は、そのどちらかが亡くなると、残された配偶者と亡くなった人の親、親が死亡しておれば兄弟姉妹が法定相続人となりますから、争いが起きることも少なくなく、遺言を書いておかれた方が良いことは、このコーナーでも以前お話ししました(2010年8月4日「子どもがいない場合の相続」)。
 
また、何人かの子どもの中で特に遺産をたくさん残してあげたいと思う子どもがいる場合、正式な夫婦でない男女の間に生まれた子どもがいる場合、息子の配偶者など他人に遺産をあげたいと思う場合などは、特に遺言を書かれることをお勧めします。
 
「おひとりさまの老後」の著者上野千鶴子さんは、「遺言は、死ねためにではなく、生きている自分のために書くものだ」、「生きているかぎり人間関係も変われば、考えも変わる」、そして「人間関係が(それに男も)変わるたびにバージョンを書き換えてきた」と書かれています。
 
そう、遺言は、気楽に気軽に書きたいものです。
私たち弁護士がそのお手伝いをします。
 
 
 
 
 
京都府は、11月12日から11月25日までを「配偶者等からの暴力をなくす啓発期間」と定めています。
 
京都府では、様々な講座・シンポジュウムや相談活動を実施していますので、お問い合わせください(京都府府民生活部男女共同参画課(075-414-4291)。
配偶者(事実婚や離婚後の男女も含みます。)から暴力を受けている被害者は、一人で悩まず、京都府家庭支援総合センターや京都府警察総合相談室などに相談しましょう。
 
また、被害者は、DV法により、地方裁判所に対し、保護命令を求めることができます。
配偶者の暴力によって生命や身体に重大な危害を受けるおそれがあるとき、裁判所は、
①6ヶ月間、被害者の住居や勤務先などに近づくことを禁止
②2ヶ月間、同居している住居からの退去
を命じます。
また、面会を要求することやFAX・メール送信も禁止することができます。
この命令に違反すると、1年以下の懲役または100万円以下の罰金に処せられます。
●京都府家庭支援総合センター:DV相談専用電話075-531-9910
●京都府警察総合相談室:075-414-0110
 
 
 
 
 
 
 
夫婦が離婚をする際、相手方に財産分与の請求をすることができます。
 
財産分与というのは、結婚後に夫婦で築いた財産を分けるというもので、不動産や預貯金・生命保険など名義が夫になっていても、その対象となります。
但し、結婚前に持っていたもの、結婚時に持って来たもの、あるいは結婚後でも相続によって得たものは、原則として対象にはなりません。
 
具体的な財産分与の内容や金額は、事案毎に異なります。
夫婦の間で話し合いがまとまらなければ、家裁に調停を申し立てて請求することになります。最近の事例では、たとえ妻が専業主婦であっても、2分の1の割合で決められていることが多いようです。
 
財産分与の話し合いは、通常、離婚の条件の1つとして行われることが多いようですが、既に離婚してしまった場合でも、話し合いをすることはできます。
ただ、離婚届け出後2年を過ぎると、家裁での手続きが取れなくなりますので、十分注意してください。
 
 
 
9月29日の本コラムの続報です。
 
経営破綻した消費者金融大手の武富士は9月28日会社更生法の申立てをしましたが、10月31日、東京地方裁判所において会社更生手続きの開始決定が下されました。
 
管財人は、東京の小畑英一弁護士です。
 
武富士に過払い金があると感じている人はまず額を確認し、債権として届け出をする必要があります。同社のコールセンターに問い合わせれば、過払いの有無や金額も説明するとしています。
届け出のための「債権届出書」は、11月中旬以降に債権者に届く予定。
来年2月末までが届け出期間で、それを過ぎると、請求権を失いますので、ご注意ください。
 
 
 
 
 
 
広島県知事をはじめ何人かの自治体首長である男性が育児休暇を取得するということが話題となっています。
 
育児休暇の取得率は、2008年度調査で、女性は9割を超えるものの、男性は1.23%とほんのわずかです。
 
そこで、本年6月30日から改正育児・介護休業法がスタートし、男性も育児休暇が取りやすくなりました。
①配偶者が専業主婦でも取得可能
②夫も妻も育児休業をとる場合には、子どもが1歳2ヶ月まで延長可能(「パパ・ママ育休プラス」)
③妻の出産後8週間以内に夫が育児休暇を取ると、その後再度取ることが可能
など。
 
法律上は、取得しやすくなったとは言え、実際に男性が育休を取るのは、制度上、あるいは周囲の目もまだまだ簡単ではないと思いますが、パパもイクメンになって、子育てに積極的に関わりましょう。
 
 
身内や親しい方が亡くなり、遺言書を見つけた場合、どうすればよいでしょうか。
 
遺言書は開封してあるものも、封印してあるものも、公正証書遺言以外は、なるべく早く家庭裁判所に提出して、「検認」を受けなければなりません(民法1004条1項)。
また、封印のある遺言書は、すべての相続人またはその代理人の立ち会いの上で、家庭裁判所で開封しなければならないことになっています(1004条3項)。
「検認」というのは、遺言書がどんな用紙に何枚にわたり、何がどう書かれているのか、日付や署名、印はどうなっているかなどを記録し調書を作成することです。
つまり、提出された遺言書の偽造・変造を防ぐための手続きなのです。
しかし、検認を受けたからと言って、遺言が当然に有効と認められたわけではありません。
検認前に偽造されたような場合には、裁判所に遺言の無効確認の訴えを提起して争うことができます。