1. 雪山登山での失踪宣告(危難失踪)事件調査の旅(東北そして東京)
女性弁護士の法律コラム

 
(女性弁護士の法律コラム NO.229)
 
人が行方不明となり、その生死が7年間明らかでない時は、利害関係人の請求により、家庭裁判所は、失踪宣告をすることができる(民法30条1項)。
失踪宣告されると、その人は死亡したことになって、初めて戸籍に死亡の事実が記載されることになる。
これとは別に、戦地に行ったり、船が沈没したりなどの危難に遭遇した人の生死が、その危難が止んだ後1年間明らかでないときも、失踪宣告をすることができる(民法30条2項)。
これが「危難失踪」である。
 
Aさん(男性)は、平成27年1月に東北の冬山に単独で登ったまま帰らず、現在もその生死が明らかでない。
父親が危難失踪を申し立てたが、家裁は、危難に遭ったとは認められないとして、その請求を認めなかった。
そこで、父親は、不服申立を行い、抗告審からこの事件の依頼を受けて担当することになった。
 
調査のため、先週末から今週初めまで、東北と東京に出かけた。
東北では、実際に捜索にあたった地元の山の会の方々から話を伺うことができた。
Aさんが遭難した山は、私も過去に登ったことがある山だが、夏と冬とは状況が一変することや、この山は笹や木々が密集しているため、雪が溶けると、登山道以外の場所には侵入することもできず、捜索も困難であることなどがわかった。
また、1月に登山する人はほとんどいないとのことで、しかも、Aさんは、冬山についてはほとんど素人と同じくらいの経験しかなかった。
平成27年1月は、何年かぶりの大雪で、そのような雪の中をラッセル(道を造ること)しながら進むことは、かなり体力を消耗したであろうことが推測された。
 
そして、実際に山に登ってみた。
あいにくの梅雨の時期だったため、雨の中を歩くことになった。
晴れていれば、周辺の山々が展望できたのだが、全く視界はなく、途中で引き返したくなる気持ちを抑えて歩き、頂上に達した。
山の会の方々の言葉が実感として感じられた。
 
京都へ戻る途中、東京に立ち寄り、当時、Aさんが働いていた職場の関係者からも事情を聴くことができた。
会社の同僚にも「明日、山に行く」と話していたとのことで、遭難したことは間違いない。
 
家裁段階で、調査官による調査が若干されているが、調査官も裁判官も「山を知らない」としか言いようがない認定であった。
 
結論が覆るよう、頑張りたいと思う。
 
 

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