現在放映中のNHK朝ドラ「あんぱん」は、やなせたかしの妻暢(のぶ)が主人公。
ドラマの中では、たかしとのぶは、幼なじみという設定だが、実際は、たかしが戦後就職した高知新聞社の同僚として知りあって結婚した。
朝ドラを観ていることもあって、これまで全く知らなかった「やなせたかし」という人物のことを知りたいと思い、「やなせたかしの生涯」(梯久美子著)という文庫本を読んだ。
この本は、ノンフィクションで事実にもとづいて書かれている。
これを読んで、彼が生涯にわたって、「アンパンマン」などの作品に貫いた思いやその背景を少し理解することができたような気がする。
やなせたかし(本名:柳瀬嵩)は、1919年、高知県出身。漫画家、脚本家、美術監督、詩人。2013年94歳で永眠。
国民的キャラクターである「アンパンマン」の作者で、「手のひらを太陽に」の作詞家でもある。
実は、私は、これまで「アンパンマン」のテレビを観たことがないし、そのストーリも全く知らなかった。アンパンマンが自分の顔を食べさせておなかがすいた人を救うという特異なキャラクターであることを、朝ドラ関連の記事を読む中で知った(ちなみに、朝ドラはまだ、アンパンマン誕生まで至っていない)。
絵本「あんぱんまん」が刊行されたのが1973(昭和48)年。
アニメ放送第1回が1988(昭和63)年、もう私はすっかり大人になっており、子ども向けアニメには興味関心がなかったのだろう。観たことがなくてしかり、である。
今週の朝ドラは、たかしにも赤紙が来て召集され、軍隊や戦争場面が描かれる。実際に、やなせたかし自身も5年間戦争に行き、戦争の壮絶さ・残酷さそして悲惨さを身をもって体験した。その戦争体験がそれ以降のやなせたかしを作り上げる。
「ある日を境に逆転してしまう正義は、本当の正義ではない」「もし、ひっくり返らない正義があるとすれば、それは、おなかがすいている人に食べ物を分けることではないだろうか」
やなせたかしは、5年間戦争に行き、終戦直後に悩み抜いて出した自分なりの答えを、アンパンマンに託した。
また、おながすいた人に食べさせて顔がなくなってしまったアンパンマンがエネルギーを失速するところには、「正義を行い、人を助けようとしたら、自分も傷つくことお覚悟しなければならない」という考えがある。弱いヒーローが勇気を出した時、本当のヒーローになれるという考えがある。
ますます、これからの朝ドラが楽しみである。