1. セクハラ被害者、伊藤詩織さんの勇気に勝利判決が!
女性弁護士の法律コラム

 
(女性弁護士の法律コラム NO.250)
 
ジャーナリストの伊藤詩織さんが、元TBSワシントン支局長の山口敬之氏から2015年4月に性的暴行を受けたとして損害賠償を求めた裁判の判決言渡しが2019年12月18日にありました。
東京地裁は、伊藤さんの主張を全面的に認め、「合意のないまま性行為に及んだ」として、山口氏に対し330万円の損害賠償を命じました。
山口氏が伊藤さんに起こしていた名誉毀損の裁判は棄却されました。
 
1989年に日本で初めてセクシュアルハラスメント訴訟が福岡で提訴されました。
その後、セクハラに関する法律もできましたが、29年経った今も、セクハラによる被害は後を絶ちません。
伊藤さんは、自らの性的被害を公表し、実名で顔を見せて、被害者を取り巻く環境も含め、社会に対し問題提起を行いました。
そして、それが、同じく被害を受けた女性たちも声を上げる「#MeToo」の運動へ広がっていきました。
 
それにしても、昨日から腹立たしいのは、「私は法に触れる行為は一切していない」「(性被害者は)笑わない」「すぐに控訴する」などと述べる山口氏の会見です。
加害者男性が必ず述べる言葉が「合意があった」「合意があったと思っていた」です。
そして、性被害を受けた者は、いつも下を向いて泣いていなければならないのでしょうか。
 
更に、伊藤さんの事件で忘れていけないのは、裁判所が逮捕状を発布したにもかかわらず、それが警察の上からの圧力で取りやめになったということです。
 
2015年4月3~4日にかけて事件が発生し、伊藤さんは9日には高輪署に相談し、30日には告訴状が受理されました。
その後、東京地裁は山口氏の逮捕状を発布したため、高輪署は成田空港で帰国する山口氏を待ち構えていました。ところが、当時警視庁刑事部長だった中村格(いたる)氏(現、警察庁長官官房長)が「本件は本庁で預かる」として、急遽、逮捕が取りやめになってしまいました(週刊新潮2017年5月25日号)。
逮捕状が発行されているのに、その執行がストップとなるのは異例のことです。
この問題は、過去、国会でも取り上げられ、「『準強姦罪逮捕状執行停止問題』を検証する超党派の会」がヒアリングを行っており、その中で、中村氏はこの事件の一件記録を読まないまま執行停止を命じたことが明らかになっています。
中村氏は、警視庁刑事部長になる前、2015年3月まで菅義偉氏の秘書官を務めており、安部首相や菅官房長官、中村氏と懇意だった山口氏が官邸に助けを求めたのではないかのマスコミ報道もあるようです。
 
山口氏が裁判で争いを続け、声高に自分の言い分を言えば言うほど、自身はもっと墓穴を掘り、「#MeToo」運動は更に盛り上がっていき、日本における被害女性に対する後進性がもっと浮き彫りになるのではないでしょうか。
 
 
 
 

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