1. 業務委託も音楽家も「労働者」(最高裁判決)
女性弁護士の法律コラム

業務委託も音楽家も「労働者」(最高裁判決)

 
昨日、最高裁は、労働組合法の「労働者」にあたるかどうかで争われていた2つの訴訟について、いずれも「労働者」にあたるという画期的な判決を下しました。
 
1つは、INAXメンテナンス(会社)から「業務請負」という形で住宅機器等の修理にあたっていたカスタマーエンジニア(CE)が加入している労働組合が求めた団体交渉を会社が拒否した不当労働行為事件。
1審の東京地裁は労働者と認めましたが、2審の東京高裁は「業務の依頼を自由に断れ、いつ仕事をするかの裁量もあった」として労働者と認めませんでした。
最高裁は、会社が日常的に業務を委託していたことや、CEが業務の依頼を事実上断れなかった点を重視して、「時間、場所の拘束を受け、独自の営業活動を行う余裕もなかった」として労働者に当たると判断しました。
 
もう1つは、新国立劇場で合唱団員として働いていた女性の契約更新拒否をめぐる不当労働行為事件で、1審・2審と組合が敗訴。しかし最高裁は合唱団員を「労働者」として認定した上で、東京高裁に差し戻しました。
 
労働組合法は、憲法28条で保障されている団体交渉権などを具体化した法律です。経済的に力の弱い労働者が労働組合に加入し、労働組合として使用者と団体交渉するなどの権利を認めています。
ところが、近時、あらゆる産業で「請負」「業務委託」という形式での契約形態が増え、「労働者」として組合が団体交渉をすることなどを使用者が拒否することが続いていました。
 
今回の最高裁判決は、契約形式にとらわれず、就労実態から「労働者」と認めたもので、使用者の脱法的な就労形態を断罪したものです。

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