1. 私たちの通話・メール・ネット履歴はすべて見られている!(「スノーデンの警告」)
ブログ マチベンの日々

 
例えば、あなたは、5年前の今日7月4日に、自分がどこにいて何をしていたかを覚えているだろうか?そんな人は、ほとんどいないと思う。
だが、政府のデータには、それらがはっきり記録されているとしたら・・・
 
携帯電話やインターネットなどSNSによって、私たちの日常生活は、10年前には考えられないほど便利になった。
しかし、携帯電話は、自分がいつどこにいるかの位置情報を作り出し、誰と通話し、誰とメールしたかは、永遠に消えない記録として残る。
またパソコンやスマホの検索ボックスに入力した単語の検索記録も永遠に残る。
私たちが何に興味関心を持ち、どの政党を支持しているか、どの宗教を信じているかなどは、すべて把握されている。
 
私たちは、今、こんな社会に生きている。
 
「スノーデン 日本への警告」(エドワード・スノーデンほか著)(集英社新書)を読んだ。
 
エドワード・スノーデン氏は、アメリカのCIA(アメリカ中央情報局)やNSA(国家安全保障局)に所属して「スパイ」活動に従事していたが、2013年6月、アメリカ政府による情報の無差別監視をリークし、ロシアに亡命した。
当時、ドイツのメルケル首相の携帯電話まで狙われていたとあって世界は騒然となった。
この本は、昨年6月に東京大学で行われたシンポジュウムにロシアから映像で参加したスノーデン氏の話をまとめたもので、内容は衝撃的である。
 
アメリカ政府は、グーグル、フェイスブック、ヤフーといったインターネットサービスや通信事業者の協力を得て、電話、メール、位置情報、検索履歴などすべての情報通信にアクセスしてきたという。
治安や犯罪に無関係のすべての国内外の市民が対象とされ、その日常が、大量かつ無差別に傍受されている(それを「メタデータ」という)。
 
では、日本はどうか?
日本では強力な監視技術が秘密裏に日常的に用いられている。
警察が組織ぐるみで隠蔽してGPS捜査を行っていたことがその一例だ。
スノーデン氏は語る。
ハワイでNSAの仕事をしていた時、特定の調査対象の通信をすべて把握することができるツール(Xキースコア)を用いていたが、NSAが保管する通信の中には、日本のアドレスのものも多数あった。日米政府が情報交換していたことは十分にありうる。
 
次に、「テロの脅威」があるのだから、国民が監視されてもやむを得ないのでないか、という議論がある。
正に、先日成立した共謀罪法案について、政府は「テロ防止のため」と声高に叫んでいたし、テロ防止のためなら監視されてもやむを得ないという新聞投稿も目にした。
スノーデン氏は、日本においてテロの脅威が本当にあるのか?と疑問を呈する。
日本においては、テロは日常の脅威として存在していない。
実際の脅威の程度がどれくらいかを検証する必要があるとした上で、日本では、テロリストに殺される確率よりも風呂場で滑って死ぬ確率(厚生労働省人口動態統計)の方がはるかに高いと断言する。
 
また、普通の人々は、危険な活動に関与していないから監視されても問題ないのか?
アメリカのある官僚は「隠すことがなければ恐れる必要はありません」と述べて監視を正当化するという。
しかし、スノーデン氏は、プライバシーとは、悪いことを隠すということではないと断じる。
プライバシーとは自分が自分であるために必要な権利である。
思索する時、文章を書く時、物語を想像する時に、他人の判断や偏見から自らを守る権利である。
自分とは誰で、どのような人間になりたいのか、このことを誰に伝えるかを決めることができる権利である。
 
更に、スノーデン氏は、2013年に行ったリークが投げかけたテーマは、「監視」だけでなく、問われているのは民主主義の問題だとする。
リークは、そもそも民主主義社会で生きる市民が、十分な情報に基づいて意思決定を行えるようにすることが目的であった。
例えば、加計学園問題で、前川元文部科学省事務次官が「文書があった」と発言しようとした際、なぜか巨大メディアである読売新聞は一面トップで、彼の「出会い系バー」の記事を掲載した。
前川氏のその情報は、どこから出たのか。
そして、現職文科省職員までもが「文書はあった」と言うまでは、菅官房長官は、文書を「怪文書」と決めつけ、また前川氏の人格を否定し、そのような人物の発言などは信用できないとした。
公平公正であるべき政治が、総理のお友達を有利に扱うべくゆがめられているにもかかわらず、私たち国民は監視社会の情報操作によって、正当な判断ができなくされているのである。
 
では、このような監視社会に対し、私たちはどうしたら良いのか。
スノーデン氏は、メディアも市民も、政府への監視を強める必要を強調する。
結局、過剰な秘密主義を民主的にコントロールできるのは、主権者である国民なのだ。
 
警察によって秘密裏に行われていたGPS捜査を社会にあぶり出した訴訟のように、権力による違法な情報収集を追求する取り組みが重要であることを再認識した。
 

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