1. なぜ急ぐ?ハーグ条約加盟
ブログ マチベンの日々

なぜ急ぐ?ハーグ条約加盟

 
「政府は、5月19日、ハーグ条約に関する関係閣僚会議を開き、同条約に加盟する方針を決めた。20日に閣議了解し、早ければ次の臨時国会で承認を得たい考えだ」(日本経済新聞2011年5月19日付け夕刊)。
 
「ハーグ条約」とは耳慣れない条約かもしれないが、正式名称は「国際的な子の奪取の民事面に関する条約」。
国際結婚が破綻して、片方の親が無断で国外に連れだした子ども(16歳未満)を、元の居住国に戻した上で親権の争いを決着させる手続きを定めたもの。
 
震災後の復興はどうなるのか、原発はどうなるのか、など焦眉な課題が山積みであるにもかかわらず、こんな時期に、なぜか「加盟の方針」が決められてしまった。
もともと欧米各国が早期加盟を迫っているとは聞いていたが、よりによって、この時期になぜ?何か裏取引があるの?と疑いたくなる。
というのは、このハーグ条約は、子を養育する権利に関する手続きは移動前の国で行われるべきとの考えに立つ。
1983年の条約発効当時に想定されていたのは、母に養育されていた子を、父が国外に連れ去るケースだったが、実際には、連れ去りの7割が母親で(2003年)、DVや子への虐待が原因と考えられている。
条約には、「元の国に戻った場合に重大な危険があるときは、裁判所は返還を命じないことができる」という例外規定もあるが、DVや虐待の立証は容易ではない。
また、迅速審理を優先するため、例外の適用範囲は非常に狭いと言われている。その意味で、本当に「子の福祉」に叶う条約なのか疑問が残る。
加盟しないよう求めて活動する母親たちもいる。
弁護士の中でも意見は分かれている。政府は、なぜ議論も尽くさず、結論を急ぐのだろうか。
 
実際に条約に加盟するには、国内法の制定が不可欠である。今後、私たちは、関心を持って、大いに検討、議論していかなければならないと思う。
 
 

月別アーカイブ

弁護士紹介TOP