1. 「暴力」を容認してきた日本社会
女性弁護士の法律コラム

「暴力」を容認してきた日本社会

 
(女性弁護士の法律コラム NO.132)
 
大阪の高校のバスケット部で起きた体罰による生徒の自殺や柔道女子の五輪代表選手らによる指導者に対するパワハラの告発をきっかけに、学校やスポーツ界における「体罰」や「暴力」などが社会問題となっている。
 
でも、これは、学校やスポーツ界だけの問題なのだろうか。
 
私たち弁護士が日常的に扱う「暴力」問題には、夫婦間の家庭内暴力(DV)、親の子どもに対する虐待、セクシュアルハラスメントあるいはパワーハラスメントなどがある。
 
例えばDV法が施行されたのは2001年だが、これらの問題は決してその頃から始まったものではなく、古くから日本社会で起こってきたのが、表面化・社会問題化したものにすぎない。
家庭内で言えば、夫が妻に暴力をふるうのは「仕方がない」、父親や母親が子どもに暴力をふるうのは「しつけ」だとして、ずっと容認されてきた。
法ができた現在でさえ、「多少の暴力ならいいじゃないか」という風潮が法の世界でもあるのが許し難い。
以前扱ったDVによる離婚事件で、婚姻中、夫は妻や子に暴力をふるっていたが、実は、その夫は自分の親から幼い頃から暴力をふるわれていた。
まさに暴力の連鎖である。
 
学校での体罰やスポーツ界での暴力も根は同じ。
 
ところで、第1次安倍内閣の時の2007年2月、文部科学省は体罰の一部を事実上容認する通知を出した。
それから6年、安倍首相は、体罰は「断ち切らなければならない悪弊だ」「日本の伝統という考え方は間違い」と言いつつ、他方で「クラスの一体性あるいは授業を進める上に於いて、著しく進行を乱す児童がいたときの指導については様々な考えがあると思うんですよ」とし、やはり6年前と意識は変わっていないじゃないかと思うばかり。
 
体罰や暴力は、人としての尊厳を否定するものという意識を、もっともっとこの社会に根付かせていかなければいけない。
 
 
 
 
 

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