1. ポニョの舞台、景観保全される(鞆の浦)
女性弁護士の法律コラム

ポニョの舞台、景観保全される(鞆の浦)

 
(女性弁護士の法律コラム NO.115)
 
広島県福山市にある鞆(とも)の浦。
風光明媚で歴史のある港町である。
 
万葉集にも詠まれ、宮崎駿監督のアニメ映画「崖の上のポニョ」の舞台ともなった鞆の浦では、約30年前から鞆の浦の埋め立て・架橋事業が計画策定されてきたが、6月25日、広島県知事は、計画中止を正式に決めた(2012年6月25日付け読売新聞)。
 
景観を重視した事業計画の変更は異例。
 
その背景には、景観を守ろうとする地元住民らの長いたたかいの歴史があり、2009年10月1日には、広島地裁は原告住民に対し画期的な勝訴判決を下している。
地裁判決は、県と市の埋め立て・架橋計画をめぐり、地元住民が県を相手取り、知事が埋め立てを許可しないよう求めたことに対し、住民側の請求を全面的に認め、知事に埋め立て免許の交付をしないよう命じた。
歴史的景観を保護するために大型公共工事の許認可を差し止めることができるかどうかが争われた初めての訴訟だった。
判決は、まず、鞆の浦の景観は住民らの利益にとどまらず、瀬戸内海の美観を構成し、文化的・歴史的価値を持つ「国民の財産ともいうべき公益」と指摘した上、行政側の必要性や公共性は認めつつも、景観保全を犠牲にしてまでの必要性があるかどうかについては大きな疑問が残るとし差し止めを認めた。
 
これまで司法の場で「環境権」や「景観権」などが認められることは非常に困難と考えられてきたが、この判決を読んで、「環境権」や「景観権」を真正面からとらえた画期的なもので、これも世の中の変化・前進であると感じた。
 
私は、地裁判決後、どうしても鞆の浦に行ってみたくなり、一審判決直後の2009年11月に訪れた。
あいにくの雨だったが、江戸時代からの名残が残る港や街並みは趣があり、また、福禅寺の座敷から望む湾や島々は、まるで絵のように美しかった。
 
広島県は控訴したが、一審判決から3年が経過しての今回の知事の決定は、住民の勝利であり、日本のすばらしい景観が1つ守られて本当に良かったと思う。
 
 
 
 
 
 
 
 
 

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