1. 村松いづみ
ブログ マチベンの日々

2024年4月から始まったNHK朝ドラ「虎に翼」は、日本初の女性弁護士の一人である三淵嘉子さん(1914~1984年)をモデルにしている。

昨年秋の日本弁護士連合会の人権シンポジュウムでも紹介され、普段、朝ドラはあまり観ないという弁護士も、今回は観ている人が多いようだ。

私もビデオに録画したりして毎日観ている。そこで、弁護士という仕事に携わっている者として、ドラマをより楽しんでいただくため、ドラマの場面で気がついたことについてこのブログで少し補足していこうかなと思っている。

 

「あまちゃん」の「じぇじぇじぇ」のように、主人公の猪爪寅子(いのつめともこ)が頻繁に発する言葉は「はて?」。その言葉に象徴されるとおり、当時は女性の1番の幸せが結婚であり、女性が法的には「無能力者」として扱われていた時代であった。

 

ドラマ第2週の中で、大学女子部法科の学生となった寅子や同級生らが裁判を傍聴しに行った場面があった。

別訴で離婚裁判が係属中の妻が、夫に対し、母の形見の着物等の引渡を求めた裁判。当時の法律では妻の財産も夫が管理するとなっており、夫側は離婚がまだ成立していないのだから返還しないと主張した。

判決は、妻の勝訴。夫が妻の財産を管理することを規定しているのは、夫婦生活の平和の維持や妻の財産の保護が目的であると説明。その上で、夫婦が破綻している状況で、妻の形見の品や日常生活に必要な品の返還請求を夫が拒絶することは「権利の濫用」であると判断した。

 

この「権利の濫用」については、現在では、民法1条3項に「権利の濫用は、これを許さない」と定めがある。

 

実は、旧民法下、わが国では、既に明治34年に大審院(今の最高裁判所にあたる)が「権利の濫用」を認めた判決を下している。

事案は、家の長である「戸主」が家族に対し居所を指定し、家族がその命令に従わなければ離籍することができるという法律(旧民法749条)の下で、戸主が、子どもと一緒に都会に住む未亡人の嫁に対し、田舎の自分と一緒に住めと言う。嫁が従わないと離籍され、子の親権を失い、遺族扶助料ももらえなくなる。

これに対し、大審院は、戸主権の濫用であって離籍は効果を生じないと判示したのであった。

しかし、その後も同様の事例が多かったので、昭和16年に民法が改正され、戸主が離籍するのはあらかじめ裁判所の許可が必要とされたようである。

 

このように、法律というのは、現在もそうですが、単に書かれた言葉をそのままあてはめるのではなく、立法理由や法の趣旨あるいは時代の変化などによって解釈が変わることもあるのです。

 

 

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