1. 日野町事件 再審公判に向けて
岡根弁護士のぼやき論壇

日野町事件 再審公判に向けて

9月7日、大津地裁で再審公判に向けた3者(弁護団、裁判官、検察官)による協議(4回目)が行われました。再審が開始されるということは、かつて確定してしまった判決(有罪の無期懲役)をもう一度やり直すということなので、その判決はなかったことになります。とはいえ、そこまで進められてきた審理はあるわけで、取り調べられてきた証拠(これが有罪の認定に使われた)はあります。それがなくなるわけではありません。多くの再審が認められた事件では、続審説という考え方を取っていてかつて行われた裁判の手続を引き継いでいることになります。(これに対し、復審説では、一からやり直すというイメージになります)

例えば、被害金庫の発見現場に阪原さんが、あたかも任意で案内をするようにしてたどり着けた、という根拠となった実況見分調書ものこっています。しかし、この証拠は、再審請求を求める中で、案内し終わった帰り道で回れ右をするようにして撮られた写真が使われていたことが明らかになっています。任意に案内出来たかどうかは、行き道が重要であって、帰り道は「案内をしている」ことにはなりません。まさに、捜査官による証拠の捏造といってもいいような代物で、それが、当時の裁判官をして、阪原さんは犯人しか知り得ない現場を知っていた、という誤った評価を導くことになったものです。ですので、このような証拠は、また再び再審公判においても誤判を導きかねない危険を孕んでいます。

そこで、続審とは言え、このような証拠は排除すべきです。そこで、裁判官が交代した際に行われる「公判手続の更新」に倣って、本来はもう一度取調をしなければならない証拠でも裁判所は取り調べない決定をすることになります(規則213条の2第3項但書準用)。

この手続きに倣い、阪原さんを犯人であるとの根拠になったような証拠は、取調べないように求めたところ、検察官は理由については「違法」を認めたくないので抵抗をしていますが、結論的には、証拠から排除することに異議を述べないことの意思を表明しました。裁判所の判断は、再開される再審公判の場で明らかにされることになるでしょうから、現時点では明言はしないでしょうが、証拠が大幅に削られることになるのではないかと期待をしています(弁護団の中ではそんなに安易に考えてはならぬとの対立意見もあります)。

そうすると、阪原さんを有罪とする根拠となった証拠の多くがなくなるのですから、無罪という結論はより確実になるはずです。しかし、私たちが求めているのは、証拠が不十分だから無罪、という灰色無罪ではありません。阪原さんは犯人ではないという真っ白な無罪です。そのためには、阪原さんが亡くなるまで拘っていたアリバイを証明したいと思っています。犯行が行われたであろう同時刻に阪原さんが犯行とは無関係の場所にいたことが明らかになれば、真犯人は阪原さんではあり得ません。

そのためにも、検察官が未だに隠し続けている無罪に繋がる(無罪を証明する)証拠を開示させる必要があります。ところが、有罪の主張立証をしないと言っている検察官は、証拠の開示には抵抗をしています。問題なければ出せばいいだけのことですから、検察官にとってまずい証拠が手元あることを強く推測させます。今後の国賠などを念頭に、検察の行ってきた違法を示す証拠は、何が何でも隠し通したい、ということなのでしょう。しかし、そのような態度は公益の代表とは相容れません。税金で集めた証拠は、検察官の独占物ではあり得ません。根本的に発想を改めさせる必要がありそうです。

そのようなこともあり、公判がいつ開かれるのかは、まだ決まっていない状況です。

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