1. 保釈保証金は還ってくるか
岡根弁護士のぼやき論壇

保釈保証金は還ってくるか

犯罪を犯したと疑われて、裁判を起こされてしまった被告人は、保釈が認められると、保釈保証金を納めて社会復帰することができます。ところが、逃亡などをして保釈が取り消されたりすると、保証金の全部又は一部が没取されてしまいます(刑訴法96条1、2項)。ですので、没取されなければ戻ってきます。
最高裁判所で、こんな判決が出ています。判決確定前に、呼出に応じず、逃亡していたとしても、保釈保証金の没取はできない(2010年12月20日 最高裁判所第二小法廷 決定)、というものです。
そのケースは、地裁で実刑判決が出され、控訴をし、保釈の許可が下りたので、釈放されていた被告人が、控訴棄却の判決を受けました。上告をした上で(ですので刑は確定していない)、再度保釈の請求をしたのですが、それは認められませんでした。そうすると、被告人は勾留されている状態に戻らないと行けないことになります。ところが、その被告人は、勾留のための呼出に応じず、数ヶ月の間、逃亡を図っていたようです。しかし、ついに見つかってしまって、身柄を拘束されると、観念したのか翌日には上告を取り下げたので、判決は確定し、その後は、刑に服すことになりました。
 そこで、検察が、逃亡を図っていたことでもあるので、保釈保証金の没取を請求したのですが、これが認められなかったというのです。
 逃亡しているんだから、当然保証金は没取されるのでは? と思うのですが、そうではないようです。
刑訴法96条3項では、「保釈された者が、刑の言い渡しを受けその判決が確定した後、執行のため呼出を受け正当な理由なく出頭しないとき、又は逃亡したときは、検察官の請求により、決定で保証金の全部又は一部を没取しなければならない」とあります。
 これは、保釈保証金を担保に刑の執行を確実にするためのものですから、判決が確定前に逃亡していた事実があっても、保証金の没取はできない、ということのようです。たしかに、身柄を拘束されてから、上告を取り下げて刑が確定していますから、確定してからの逃亡ではないですね。
意外な感じもしますが、たしかに、3項では、「刑が確定した後」となっていますから、条文通りの判断をしたということでしょう。
ただ、検察官が、被告人が逃亡している間に、保釈の取消を請求し、それを裁判所が認めて、保釈が取り消されると、2項によって没取されてしまうという事態があったかもしれません。
最初に認められた保釈と、公訴棄却後の保釈請求(認められなかった)との関係がイマイチよくわかりませんが、保証金没取との関係でもやっぱり逃げるのは危険でしょう。

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