1. 財産分与と税金
岡根弁護士のぼやき論壇

財産分与と税金

財産分与。 離婚の時には大体問題になり、争いの種になったりします。 慰謝料とともに、離婚給付の一つです。

財産分与は、マジックワードのようなところもあって、基本は結婚中に築いた財産の清算ですが、今後の扶養や慰謝料的な意味合いも含めることもあります(最判昭和46年)。 気分的に「慰謝料」と言われると抵抗があることが多いので、「財産分与」の中に含めてしまおうというものです。 「解決金」というような言い方をするのも同じような発想でしょう。
ところで、この財産分与、金銭で支払われるような場合には、給付する者に課税は生じません。 ところが、家などの資産でもって行うと譲渡所得の「資産の譲渡」に当たってしまいます。 
これについて、実質的に夫婦共有財産だから、分かれるんだったら、それを分けるだけなのに、なんで「資産の譲渡」に当たるんだ、と言う強い反対の意見もあります。 私も、これはおかしいと思っています。 ですが、裁判上は、確定していると言われており、当分変わりそうにありません。
仕方がないので、この対策を考えないといけません。
婚姻期間が20年以上であれば、夫婦間の土地建物の分与には、贈与税の配偶者控除の特例を受けられる道があります(相続税法21条の6)。 この控除を受けるためには、離婚をする前に贈与をしましょう。 控除されるのは2000万円まで。
20年に満たない場合、相続税法の配偶者特別控除は受けられません。
さてどうしたものか。
この場合には、給付する側が、居住していた建物(土地も含む)を譲渡する場合には、居住用財産の特別控除が受けられる可能性を追及してみましょう(租税特別措置法)。 注意がいるのは、この場合、譲渡を受ける相手が、配偶者や身内のような関係にある場合には、適用されないことです。
そこで、まず離婚を成立させ、当事者間は赤の他人になった後に(事実婚関係があるとまずいので、完全に別れる必要があります)贈与をすれば、この適用の可能性があります。 控除は3000万円まで。
離婚届を出す前にするか、後にするか、これは結構影響が大きいので、慎重に対処する必要があります。 
もともと、実質的共有財産を分ける財産分与に課税をすることが根本的におかしいとは思いますが、一般人から税金を取ることには目の色を変えるお役所相手では通じないようです。

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