1. 岡根竜介

相続放棄

最近、ちょっと変わった相続放棄の事案をの依頼を受けた。役所から、放置されている空き家の対処を求める通知が来て、自身の持分があることがわかったという事案。

直接の相続である被相続人は、母であるが、その物件の名義は、叔父さんのままで、その子どもたちは相続放棄をしていたようだが、兄弟姉妹である母は、第3順位の相続人として相続したことも知らないまま亡くなっていた。そんな相続をしたこと自体知らないから、相続人としても母の相続の手続は既に済ませている。母が亡くなってから、既に3~4年は経つ。相続放棄の期間は、知ったときから3ヶ月だし、プラスの遺産を受け取ったり処分していたりしたら、単純承認となり、マイナスの遺産があってもそれだけを放棄をするわけにはいかない。しかも、実際には売却困難な物件で、管理に手間暇だけがかかるものでも、マイナスと評価すべきなのかどうか、むつかしいところである。また、相続人が1人の場合であれば、受け取りたくない不動産であっても、相続放棄をして無関係となることはそんなに簡単なことではない。(多分認められない。)

とはいえ、そのような放置物件の管理を強いられるのも堪ったものではない。このような場合、まず相続放棄が認められるのか。期間について、3ヶ月という問題がある。相続すべきかどうかを熟慮する期間といわれている。なので、検討するような相続が問題となっているということを知らない限り、「熟慮」もできない。

本件では、母が、その「熟慮」すべき事情を知ることのないまま亡くなり、相続が発生しているのであるから、その母の熟慮を要する事情をそのまま相続により継承したと考えるのが筋であろう。なので、母がその期間を徒過してしまっていたのなら諦めてもらうこともあり得るけれど、知らなかったのなら、相続人自身が役所からの通知を受けたときはじめて「熟慮」すべき事情を知ったのであり、そこから3ヶ月の間は相続放棄が認められても、制度趣旨には反しないし、むしろ合致する。判例でも、同様の判断を示したものがある(最高裁第二小法廷令和元年8月9日判決)。

どこの相続放棄を認めるのか、という問題はあるが、今回、遺産分割をした後ではあったけれど、放棄が認められた。

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