1. 実況見分調書の落とし穴
岡根弁護士のぼやき論壇

実況見分調書の落とし穴

交通事故が起こると、多くの場合、どのような事故だったのかを明らかにするために、実況見分調書が作成される。 よくあるのが、「最初に相手の車を発見したのが①の位置で、そのとき相手の車はAの位置にいました。」「私が危険を感じたのは②、そのときの相手はB」「ブレーキをかけたのが③」・・・・・

というように続くパターンのもの。
 このような場合、発見してブレーキを踏んだのは、ほぼ同じ地点となっていることが多い。 しかも、それが、ブレーキ痕の着いている場所辺りであることが多かったりする。
運転免許を持っている人なら、免許講習などでよくわかっていると思うが、ブレーキを踏もうとして実際にブレーキがきき出す(そこからしかブレーキ痕は着かない)のは、数メートル先となる。 空走距離といわれる危険を察知しブレーキペダルを踏み込むまでの時間があるからだ。 時速50キロメートルでは、約14メートルの空走距離があるといわれる。
 しかし、実際の実況見分調書を見ると、この空走距離を無視したものがかなりある。 まぁ、そもそも、最初に相手を派遣した位置は? なんて聞かれた、正確にその場所を指示できるような人はまずいない。 急ブレーキなんて必死になっているんだから、ブレーキを踏んだ位置なんて覚えている方が不思議なくらいだろう。
 ところが、これが一旦調書としてできあがってしまうと、かなりいい加減な図面でも裁判の場ではそれがそのまま通用してしまう。 物理的にあり得ないんじゃないか、というような車の傾きになっていたとしても、それがそのまま事実認定の前提となってしまう。
なので、実況見分調書に立ち会わざるを得なくなったような場合には、たとえ実際とは相当異なっていても一旦できた調書の内容が「真実」として扱われるということを覚悟しなくてはならない。
 少しでも、そんな思いをしないためにも、また無駄な争いを避けるためにも、車の標準装備としてドライブレコーダーの設置を検討するような時期にきているように思われる。 

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