1. 福山弁護士の「飲み法題」

福山弁護士の「飲み法題」

 一人暮らしの高齢者が亡くなったときなどに、葬儀を行う義務を負うのは誰か?、葬儀費用や埋葬費用は誰が負担すべきか?、香典は誰が受け取れるのか?、等が問題になることがあります。
1 葬儀を行うべき義務者
 まず、葬儀を行う義務を誰が負うかについては、法律に規定はありません。単に配偶者や長男というだけで、当然に故人の葬儀を行う法的義務を負うわけではありません。従って、その地方の慣習や条理を考慮しつつ、当事者間で話し合いで決めるほかありません。
2 葬儀費用の負担者・香典の取得権者
 次に、葬儀費用を誰が負担すべきかについても、法律に規定はありません。従って、これについても単に配偶者や長男というだけで、葬儀費用を負担すべき義務を負うわけではありません。
 学説としては、①葬儀の実質的主宰者(喪主)が支払うべきもの、②相続財産から支払われるべきもの、③共同相続人がその相続分に応じて負担すべきもの、④まず香典で賄い、不足分は相続財産の中から支払い、さらに不足するときは相続人が相続分に応じて負担すべきもの等の見解があり、定まった見解はありません。ただ、近時の高裁判決(名古屋高裁平成24年3月29日判決)は、①の喪主負担説に立っています。その理由は、「亡くなった者が予め自らの葬儀に関する契約を締結するなどしておらず,かつ,亡くなった者の相続人や関係者の間で葬儀費用の負担についての合意がない場合においては,追悼儀式を行うか否か,同儀式を行うにしても,同儀式の規模をどの程度にし,どれだけの費用をかけるかについては,もっぱら同儀式の主宰者がその責任において決定し,実施するものであるから,同儀式を主宰する者が同費用を負担するのが相当というものです。確かに分不相応に過大な葬儀を行って葬儀費用が多額に嵩んだような場合は、それを執り行った者が負担するというなら肯けますが、皆が嫌がって葬儀を行う者がいない場合に仕方なく喪主として分相応の葬儀を挙げたような場合に、喪主にだけ費用を負担させるというのは、妥当性を欠くと思われます。
 ただ一般に、香典は葬儀費用に充てるために喪主に対してなされる贈与と解されているので、香典が葬儀費用を賄える程度にある場合は、①の喪主負担説をとっても不当とは言えません。また、相当な葬儀費用については、民法306条3号、309条1項により、「債務者の総財産」に対する先取特権が認められています。この「債務者の総財産」とは死者の遺産のことと解されているので、葬儀費用を上回る遺産がある場合は、そこから支払ってもらうことができます。そうした香典や遺産がない場合には、葬儀の方法や費用負担について、事前に関係者で話し合って決めておくことが望ましいといえます。
3 埋葬費用の負担者
 これについては、前述の名古屋高裁平成24年3月29日判決は、「遺骸又は遺骨の所有権は,民法897条に従って慣習上,死者の祭祀を主宰すべき者に帰属するものと解される(最高裁平成元年7月18日第三小法廷判決・家裁月報41巻10号128頁参照)ので,その管理,処分に要する費用も祭祀を主宰すべき者が負担すべきものと解するのが相当」と判示し、故人の祭祀承継者が負担すべきとの立場をとりました。
 祭祀承継者とは、祖先のまつりごとを主宰する者を言い、喪主とは限りません。これは、故人が事前に指定していた場合はその指定された人がなり、指定がない場合は地域の慣習に従って決めることになっています(民法897条1項)。慣習が明らかでないときは家庭裁判所が決めることになります(同条2項)。
 ちなみに上記の名古屋高裁の裁判例は、故人の兄弟が支出した埋葬費用を、故人の子2人に請求したという事案ですが、裁判所は故人と2人の子の親子の交流が20年以上も途絶えていた一方、埋葬費用を支出した兄弟は故人と比較的密な交流があったこと等から、子らを祭祀承継者とみることはできないと判断しました。
 これについても故人の遺志や故人との関係、地域の慣習等を考慮して、関係者間の話し合いで決することが望ましいといえます。

京都弁護士会が安保法制反対の市民集会を開催!

7月22日、京都弁護士会が安保法制反対の市民集会を開催し、550人の市民が参加されました。元自民党総裁の河野洋平氏がビデオ出演されたほか、立命館大学の小松浩教授が講演されました。民主党の前原衆院議員がメッセージを寄せられたほか、共産党の穀田衆院議員が出席されました。また、民主、共産、社民、新社会の各党から多数の地方議員、役員の皆さんが出席されました。集会後は、あいにくの雨の中、京都弁護士会の白浜会長を先頭に、250人の市民、弁護士が安保法制の廃案を求めてパレードを行いました。

京都弁護士会の副会長に就任しました!

 今年4月から1年の任期で京都弁護士会の副会長を務めています。
 弁護士会は、各種の法律相談活動を行っているほか、地方自治体などの無料法律相談への弁護士の派遣、市民の皆さんを対象にした各種の法律セミナー等の開催、地方自治体等への各種の委員等の派遣、法律事件の処理に関する裁判所や検察庁との協議、人権問題についての意見表明など、多様な活動を行っています。

 これまで弁護士として仕事はしてきましたが、弁護士会の業務については分からないことも多く、右往左往しながら悪戦苦闘する日々です。事務所を不在にすることも多いので、依頼者・相談者の皆様には、ご不便をおかけすることがあるかもしれませんが、これまで以上に合理的な業務遂行を心がけてサービス向上に努めて参りたいと思います。どうかよろしくお願い致します。

 京都弁護士会には40以上の委員会等があり、4人の副会長が分担して委員会活動をサポートしています。私が担当する委員会の一つに憲法問題委員会があります。今、国会では集団的自衛権の行使を認める安保法制が審議されていますが、京都弁護士会はこれが憲法9条に反するとして反対の立場を取っており、憲法問題委員会では街頭宣伝や署名活動、集会等の取り組みを強めています。

 弁護士にも右から左まで様々な考え方の方がいますが、この問題に関しては弁護士会としては一致して反対の立場を鮮明にしています。それは閣議決定による集団的自衛権容認が立憲主義に反するからです。憲法は法律と違って、国民が権力者を縛るルールです。憲法によって縛られている権力者が、勝手に解釈を変更してそれまで違憲とされてきた集団的自衛権を合憲とするのは、いわばならず者がこれからは人を殺してもよいと自分勝手にルールを変えるようなもので有り得ない話です。国会の憲法審査会で、3人の憲法学者がいずれも違憲と述べたことはある意味当然のことでした。

 情勢は予断を許しませんが、日本が平和国家であり続けるために、多くの弁護士会員、そして市民のみなさんと連携して頑張っていきたいと思います。

堂々と育休取れる社会に

 朝日新聞2015年3月7日付け35面「第2京都」面の「司法Voice」コーナーに拙稿が掲載されました。

 

 ご一読いただければ幸いです。

 

                    弁護士 福山和人

 

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  本件は、S大学(滋賀県大津市)に20年以上、正職員として勤務していた事務職員の解雇事件です。原告のAさんは、大学の事務部門のエキスパートで勤続20年表彰も受けた優秀な職員でしたが、2009年頃から上司に暴言を吐かれるなどのハラスメントを受けるようになり、2011年4月から2013年12月まで,前例のない守衛室での受付勤務、幼稚園勤務を命じられて晒し者にされ、2014年1月には大学の事務局長付きに戻されたもの、仕事も机も与えないという嫌がらせを受けた挙げ句、執拗な退職強要を受けて、2014年4月末日をもって解雇されました。被告は、原告を賞罰委員会も開かずに懲戒解雇(諭旨解雇)しておきながら、原告の抗議を受けて、「諭旨解雇」は書き間違いで「普通解雇」の意味であるとお粗末な弁明を行いました。また解雇前に原告が申し立てた労働局のあっせんで、被告はあっせん委員から退職勧奨を止めるよう注意されたのに対し、退職勧奨は止めるが解雇を考えるという信じがたい回答を行いました。被告は、その後の団交の席上でも、争うなら懲戒解雇して退職金もカットすると脅しをかけ、解雇後に実際に賞罰委員会への呼出状を送りつけるという報復的脅しまで行ったのです。
 このように、本件は、違法なパワハラ、退職強要、違法解雇、報復的脅し等々、違法行為のオンパレードともいうべき極めて悪質な事案でした。私も多くの労働事件を手がけてきましたが、これほど悪質な事案は希有です。

 

 Aさんが、このような仕打ちを受けるようになったのは、近年新たに常務理事に就任したB理事の存在が大きかったと思われます。自分の意見をはっきりと述べるAさんの存在が煙たかったのでしょう。しかし、大学のベテラン事務職員を受付や幼稚園に配置するなど、通常は考えられません。バンク・オブ・アメリカ・イリノイ事件の東京地裁平成7年12月4日判決では,銀行の管理職を受付に配転したことが、原告の人格権を侵害し,職場内・外で孤立させ,勤労意欲を失わせ,やがて退職に追いやる意図をもってなされたものであるとして、明白に違法と認定されました。本件の配転もその裁判例に照らせば違法性は明らかでした。

 

 また、Aさんははっきりと退職しないと答えているにもかかわらず、被告は繰り返し退職を強要し、それどころか仕事を与えない、机も与えないなどの嫌がらせまで行いました。退職するか否かは労働者の自由なので、退職しないと明確に意思表明した後に退職を求める行為は、下関商業高校事件の山口地裁下関支部昭和49年9月28日判決、日本航空事件東京地判平成23年10月31日等の裁判例に照らして、明らかに違法な退職強要です。そこで、Aさんは京都労働局にあっせんを申請したのですが、被告は、あっせんの席上、このまま退職勧奨を続けていると違法な退職強要になりかねない労働局に指摘されて、勧奨は止めるが解雇を考えるという信じられない回答を行い、その後間もなく解雇が強行されました。ちなみに被告は、懲戒解雇の一種である諭旨解雇を通告しましたが、合理的な懲戒理由を示さず賞罰委員会も開かずに懲戒解雇するのは違法という原告の抗議を受けて、「諭旨解雇」は書き間違いで「普通解雇」の意味であるとお粗末な弁明を行う有様でした。

 

 Aさんは、労働組合(きょうとユニオン)に加入し、解雇撤回を求めて団体交渉を行いました。しかし、被告は解雇を撤回しなかっただけでなく、団交の席上、理事(しかも弁護士!)が、解雇の効力を争うなら懲戒解雇に切り替えて退職金もカットするという報復的発言まで行い、その後Aさんには、賞罰委員会を行うので出席せよという呼出状が届くというとんでもない展開になりました。解雇して既に労働契約関係から離れている者に対して、懲戒手続を進めるなど無茶苦茶というほかありません。

 

 私たちは2014年5月7日に解雇無効を理由とする労働者としての地位確認、解雇後の賃金全額の支払、謝罪広告の掲示、慰謝料の支払いを求めて労働審判の申立を行いましたが、その直後に被告がAさんを賞罰委員会に呼び出すという非常事態を受けて、急遽5月12日に、労働審判法29条が準用する民事調停法12条に基づき、「賞罰委員会の開催その他の懲戒手続きをしてはならない」という審判前の措置申立を行いました。
 労働審判における審判前の措置とは、あらかじめ現状の変更を禁止しておかなければ労働審判が出てもその内容を実現できなくなるおそれのある場合に、審判を言い渡す前に現状の変更禁止を命ずる制度であり(例えば、配転命令の無効を労働審判で争っているときに、審判の結論が出るまで配転手続を止める等)、いわば労働審判を本訴とした場合の仮処分的な制度です。
 裁判所は、私たちの申立を無審尋で認めて、5月19日(賞罰委員会の2日前)に「懲戒手続きを進めてはならない」という決定を出してくれました。このスピーディな審理は画期的なことだったと思いますが、余りに無法な被告のやり方に裁判所もきっぱりとNO!のメッセージを発してくれたのだと思います。また全国的に見ても、審判前の措置申立の制度はあまり活用されていないようで、今後の活用が期待されるところです。

 

 労働審判は、6月20日、7月3日、8月19日の3回行われました。そこでは、被告は、Sさんの「問題行動」なるものを後付けであれこれ並べ立てて、解雇は合理的だったと弁明しました。しかし、審判の席上、そうした「問題行動」なるものについて「指導」や「教育」をしたのかと裁判所に問われ、被告代理人が改めて主張立証したいと述べたのに対し、裁判所から「今の時点で出ていないのならば、今後意味のある主張立証が出るとは思えないから、今さらそういった主張立証は不要である」と釘を刺され、逆に何の「指導」も「教育」もしていないこと、翻ってそもそも解雇事由など存在しないことが明白となりました。そうしたやりとりの結果、裁判所は当事者双方に対し、①解雇撤回、②解雇日に遡っての合意退職、③解決金3300万円の支払等を内容とする調停案を示しました。この金額は退職金と約4年分の賃金に相当する額で、定年まであと7年だったAさんにとって実質的な勝利的和解といえるものでした。

 しかし、被告がこの裁判所案の受諾を拒否したため、結局3回目の労働審判期日において、即日、同内容の審判が申し渡されました。被告はこの審判に対しても性懲りもなく異議申立を行ったため、本件は訴訟に移行しました。これほどまでに違法行為のオンパレードという事案はなかなかありません。このような理不尽な解雇を許さないという決意で、勝利目指して最後まで頑張っていきたいと思います(弁護団は当事務所の津島理恵、大江智子、福山和人の3名です)。

~男性の育休取得を理由とする昇格昇給差別を違法とした判決~

                                              弁護士 福 山 和 人

 

【育休取得に朗報】

  育児・介護休業法10条は、育児休業を取得したことを理由として、解雇その他の不利益な取扱いをしてはならないと定めています。

 しかし現実には、育児休業を取得できないケースが多いのではないでしょうか。

 特に男性となればなおさらでしょう。

 そんな中、育児休業の取得を考えておられる男性に、朗報となる判決をかちとることができました。

【事案の概略】

 本件は、京都市内の岩倉病院に勤務していた男性看護師三尾雅信さんが、2010年度に3か月間、育児休業を取得したことを理由に、2011年度に職能給(要するに能力給)の昇給が認められず、かつ昇格試験を受ける機会を与えられなかったという事案です。

 三尾さんは、これらの措置が育児介護休業法10条に違反するとして、京都労働局に援助の申し立てを行い、労働局は病院に対し是正勧告を行いました。

 しかし、病院がこれに従わなかったため、やむなく三尾さんは昇給・昇格された場合との差額分の損害賠償と慰謝料を求めて京都地裁に提訴しました。

【1審の京都地裁判決(2013年9月24日)】

 1審判決は、昇給については、1年のうち4分の1に過ぎない3ヶ月間の育休取得によって、能力の向上がないと判断し、一律に昇給を否定する点の合理性には疑問が残るとしつつも、年齢給の昇給は行われたこと、職能給の昇給が行われなかったことによる不利益が月2800円、年間4万2000円にとどまること等の理由を挙げて、昇給を認めなかったことは育児介護休業法10条の不利益取扱の禁止に反しないと判断しました。

 他方、昇格に関しては、昇格試験を受けさせなかったのは違法として、昇格試験を受験させなかったことにについての慰謝料15万円の支払いを命じました。

【大阪高裁判決(2014年7月18日)】

 三尾さんは、1審判決を不服として、大阪高裁に控訴しました。

 高裁は、昇給について、病院が、遅刻・早退・年次有給休暇・生理休暇・慶弔休暇等により3ヶ月以上の欠勤が生じても職能給の昇給を認める扱いにしていたことに着目して、それに比して育児休業により3ヶ月欠勤した場合に昇給を認めないのは合理性がないという理由で、昇給を認めなかったのは違法と判断し、昇給していた場合の賃金との差額分の損害賠償請求を認めました。

 また高裁は,昇格については1審判決を維持し、慰謝料請求を認めました。

【高裁判決の意義】

① 不昇給と不利益突扱い

 育児介護休業法10条の不利益取扱いに関する裁判例としては、これまで賞与の不支給(東朋学園事件)や育休取得後の職務変更・成果報酬の減額(コナミデジタルエンタテインメント事件)などの事例がありますが、育休取得による昇給の停止が正面から争われた事例で、同条違反を認めたのは本件が初めてと思われます。育休取得を理由に賃金を支給しなかったり減額したというのではなく、昇給させなかったというだけでも違法となることを明らかにしたという意味で、本判決が実務に与える影響は大きいといえます。

② 成績主義・能力主義を仮装した不利益取扱いを断罪

 本件で不昇給となったのは、能力評価に基づいて昇給される職能給部分でした。

 病院は、育児休業中は実務経験を積むことができない以上、能力向上がないと評価して不昇給としたのであって、育休取得を理由に不昇給したのではないから、育児休業法10条には反しないと弁明しました。

 しかし、病院は能力評価といいながら、実際には三尾さんの能力を真正面から評価したわけではなく、要するに3ヶ月育休を取ったから能力が向上しなかったと決めつけて昇給を拒否しただけです。

 このような論法が成り立つとすれば、法的に保障された休業を取得した場合でも、休業した以上、能力が向上しなかったとこじつけることで何でも合理化されることになりかねません。

 高裁判決は成績主義や能力主義を仮装した不利益取扱いを断罪したという意味で大きな意義を有するものです。

 

 本判決については、病院側の上告及び上告受理申立に対して、2015年12月16日、最高裁は上告を却下するとともに、上告受理申立についても受理しない旨決定したため、大阪高裁判決が確定しました。なお、本件は、当事務所の吉田美喜夫弁護士(立命館大学元総長・同大名誉教授)と私の2人が担当しました。

【参考文献

労働判例1104号71頁
労働法律旬報1829号46~47頁、59~71頁

成年後見制度とは?

 最近、ご高齢の方のご親族から、「一人暮らしの母親が認知症になったようで、高額の健康食品などをたくさん購入していることがわかった。どうしたらよいか,悩んでいる」といった御相談をよくお聞きします。こういうときに活用できるのが成年後見制度です。

 成年後見制度とは、精神上の障害により判断能力の不十分な方々(認知症の方、知的障害のある方、精神障害のある方など)について、①契約の締結等を代わりに行う代理人などの援助者を選任したり、②援助者による事前の同意なしに契約等ができないようにしたり、③勝手に契約等をした場合にはそれを取り消すことができるようにする等により、本人を保護し支援する制度です。

 成年後見制度には、任意後見制度と法定後見制度があります。
 任意後見制度とは、現在、判断能力がある方が対象で、将来判断能力が不十分になったときに備えて、あらかじめご本人と任意後見人が契約(任意後見契約)を締結しておき、将来判断能力が失われたときに任意後見人が本人を保護する制度です。

 法定後見制度とは、現に判断能力が失われたか低下している方が対象で、親族などの申立により、家庭裁判所が本人の援助者を選任し、その援助者に代理権や契約の取消権等を与えることにより本人を保護する制度です。法定後見制度には、ご本人の判断能力のレベルにより、①後見(判断能力が全くない場合)、②保佐(判断能力が著しく不十分な場合)、③補助(判断能力が不十分な場合)の3種類があります。

 成年後見(法定後見)の申し立ては、本人・配偶者と4親等内の親族が行うことができます。身寄りのない方については、市区町村長が申し立てを行うこともできます。 申し立てには、①申立書、②手数料800円、③登記印紙2600円、④切手(額は各地の裁判所で違うが、おおむね3000~5000円程度)、⑤申立人の戸籍謄本(本人以外が申し立てるとき)、⑥本人の戸籍謄本と戸籍の附票、住民票、⑦診断書、⑧登記事項証明書(東京法務局が発行する書類で、本人がすでに後見開始の審判等を受けているか否かに関する証明書)⑨成年後見人候補者がいる場合は、候補者の戸籍謄本、住民票、身分証明書(本籍地の役所が発行する破産宣告を受けていない旨の証明書)、登記事項証明書などです。申立書は定型のものを家庭裁判所で配布しています。

 申し立てにかかる費用は、自分で申し立てる場合は、手数料800円と登記印紙代2600円、切手代3000~5000円などと、後見・補佐の場合は医師の鑑定料がかかります。鑑定料は,5万円以下が全体の約68.9%、5万円超~10万円以下が29.7%で、全体の約98.6%の事件で10万円以下となっています(「成年後見関係事件の概況-平成24年1月~12月-」最高裁判所事務総局家庭局)。補助の場合は鑑定は不要なので、もっと安くすみます。また法定後見申立を弁護士に委任した場合の弁護士費用は、各事務所によって異なりますが、おおむね10~20万円位です。

 申し立てをしてから、審判までの期間は、2か月以内が約80.5%、3か月以内が90.8%と、約9割が3か月以内に終わっています(上記「概況」より)。申し立ての後は、家庭裁判所が申立人や関係者に対し聴き取り調査や、本人の面接、医師による鑑定などを行います。
   
  法定後見申立事件(後見・補佐・補助)のうち、申立が認められて成年後見人(後見人・補佐人・補助人)が選任された割合は、H24年度の場合、約91.9%で(上記「概況」より)、おおむね9割で申立が認められています。
 
 高齢者の財産を保全するための制度(サービス)としては、法定後見制度や任意後見制度以外にも、①弁護士と任意の財産管理契約を締結する方法、②金融機関と信託契約を締結して金融機関に管理してもらう方法、③銀行の貸金庫を利用する方法、④社会福祉協議会の地域福祉権利擁護事業等もあります。
 詳細は弁護士に御相談下さい。

弁護士の昼御飯②  ~塩ラーメンの向日葵~

 ラーメンが好きだ。おそらく週に3~4回はラーメンを食べているだろう。京都伝統の鶏ガラ醤油ラーメンはもとより、とんこつラーメンやみそラーメン、最近流行の魚介系なども旨いが、最近はまっているのは塩ラーメンである。
 百万遍から銀閣寺に向かって今出川通りの登り坂を上っていくと、「向日葵」という小さな店がある。ここの塩ラーメンを初めて食べたときは衝撃を受けた。こんに旨い塩ラーメンがあるとは!!! 澄み切った白湯スープ、コクの効いた塩味、コシの入った細めん、チャーシューはトロトロの柔らかさ、トッピングはシンプルに白髪ネギと海苔、旨いだけでなく見た目にも美しい。たまたま近くに寄ったときに何気なく寄ったのだが、思わず偶然の僥倖に感謝した。
 最近は塩だけでなく、醤油ラーメンも始めたようだが、とにかく塩がオススメだ。以前、高野にあった「小昼」のタンメンを愛した僕としては、「小昼」が閉店になって以来、寂しい思いを抱いていたのだが、これから「向日葵」通いが始まりそうである。

12.6を忘れまい~秘密保護法を廃止しよう~

 12月6日に秘密保護法が成立した。世論の半数以上が反対、慎重審議を求める意見は8割を超え、廃案を求める叫びが国会を包む中、安倍首相は取り憑かれたように採決強行に突入した。

 国民主権の下では、政府の保有する情報は全て国民の財産である。権力者が都合の悪い情報を隠し、国民の判断を誤らせるような仕組みは国民主権に反する。福島原発の汚染水が「完全にコントロールされている」という安倍氏のオリンピック招致演説は、8割の国民が嘘だと思っている。しかし、嘘を暴こうとすると処罰されるのがこの法律だ。戦前の大本営発表と同じである。
 デモをテロに例えた石破幹事長、国家の安全より知る権利が優先するという考えは間違いと言う町村元官房長官、弁護士なのに法解釈が迷走しまくった森大臣など、推進した人々の知的レベルはお粗末だった。

 法案審議はわずか68時間、維新、みんなの党と合意した修正案に至ってはたった2時間。拙速を通り越して、もはや名ばかり国会だ。第1次安倍政権下で、教育基本法が改悪されたときでさえ、189時間の審議が行われた。なぜそんなに急ぐ必要があったのか、賛否の立場を超えた国民多数の疑問である。巷間言われているように、消費税増税による支持率低下の前に成立させたいということであれば、党利党略以外の何物でもない。秘密指定についてチェックする情報保全監察室などの4機関の提案は採決の2日前、NHKのキャスターですら何がどう違うのか分からないと言うほど生煮えの代物である。怒号の中、強行された参院特別委の採決は、速記録に「発言する者多く聴取不能」と記されたほどで、採決がされたかも疑わしい。10月15日に臨時国会が開会したときには法案は上程すらされていなかったし、参院選でも争点にはなっていなかった。自公に投票した人もこんなことは想定していなかっただろう。

 
 秘密保護法は内容も制定手続もお粗末極まりない稀代の悪法である。小手先の修正ではなく、廃止を目指すべきだ。安倍氏は、「成立させてしまえば国民は忘れる」と思っているのかもしれない。しかし我々は忘れまい、12月6日という日を。誰が賛成し、誰が反対したかを胸に刻んで、悪法廃止のたたかいを始めよう。

弁護士の昼ご飯

 弁護士さんは普段どういうところで昼ご飯を食べてるんですかと聞かれることがあります。私の場合は、ほとんどが事務所近くのお弁当屋さんかパン屋さんで買ってきて、PCを見ながら10分くらいでパパッと食べることが多いです。回りの弁護士を見ても、弁護士は全体的に「早飯」、「ながら飯」が多いようです。
 でもたまに気分転換をしたいときには外に出ることがあります。最近、事務所の近くに、かつやという和食ダイニングの店がオープンしました。昼時にふらっと寄って唐揚げ定食を注文したのですが、これが旨かった! 衣はカラッと、中はジューシー、サラダもついてボリューム満点。煮物などの小鉢が2つに漬け物と赤だしまでついて780円は安い。ご飯も旨かったし、本格的に修行しはったやなということが分かる味でした。店員さんも元気よくて、ちょっと幸せな気分になりました。

和食ダイニングかつやhttp://loco.yahoo.co.jp/place/4995172e9196af756bd9ffc624987ae30d02f7db/

和解で遺言無効を確認して遺産分割をやり直した事案

  被相続人(親)の遺言に基づいて共同相続人ABCのうち、Aが遺産である不動産2件(自宅と賃貸マンション)を単独相続したという事案で、Bが遺言の無効確認を求めていた訴訟で、先頃、裁判上の和解が成立しました。和解の内容は、遺言の無効を確認した上で、自宅についてはAが単独相続し、賃貸マンションについては売却した上で代金をBCで2分するという内容で、ほぼ法定相続分に近い解決を得ることができました。

 本件では、被相続人が遺言の1年以上前から認知症を患っており、遺言のちょうど1年前の時点で、長谷川式認知症スケールで14点という結果でした。長谷川式認知症スケールは30点満点で、20点以下は認知症の可能性が高いと言われています。また認知症の重症度別の平均点は、非認知症が24.3点、軽度認知症が19.1点、中等度認知症が15.4点、やや高度認知症が10.7点、高度認知症が4.0点とされており、本件の場合は遺言1年前の時点で中等度以上に進行していました。
  また遺言の約半年前に作成された介護保険専用主治医意見書によると、長谷川式スケール16点、「痴ほう性老人の日常生活自立度」は「Ⅲa」(日常生活に支障を来たすような症状・行動や意思疎通の困難さが見られ介護を必要とする状態が、日中を中心として見られるレベル)、「理解および記憶」については、「短期記憶」が「問題あり」、「日常の意思決定を行うための認知能力」は「判断できない」となっていました。また遺言の約1ヶ月後のカルテによると長谷川式9点とされていました。

   遺言無効確認請求訴訟において、和解で遺言の無効を確認することは珍しいと思いますが、本件では、診療記録を受任直後に取り寄せて詳細に分析して遺言能力の欠如を明らかにしたことが、上記のような解決に結びつきました。

 相続に関する事件は、財産的な面のみならず、故人に対する思いや故人との関係も含めた心情が紛争の核心にあることが多いと言えます。その意味で、本件では、Bさんの故人に対する思いが守られたことが最も大切な成果だったような気がします。
                                                           以上

旧社会保険庁職員3名に対する免職処分が取消し!

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(2013.10.24 処分取消し後の記者会見、前列右端が筆者、京都地裁司法記者クラブにて)

 

 09年12月末に社会保険庁が解体され、翌年1月4日から日本年金機構が発足しました。このとき525名もの社保庁職員が免職処分(要するに解雇)を受けました。

 京都では免職処分を受けた15名の職員が、国の機関である人事院に対して、免職処分の取り消しを求めて審査請求を行っていましたが、2013年10月24日、人事院は15名のうち3名の職員の免職処分を取り消す決定を行いました。処分が取り消されたのは、京都南社会保険事務所業務課長であった北久保和夫さん、上京社会保険事務所業務課長中本邦彦さんと、京都社会保険事務局の主任であった女性です。

 全国的にも審査請求を行っていた70名中24名の免職処分が取り消されており、取消率は実に34.3%と、国家公務員の免職事件では類をみない高い割合です。

 旧社会保険庁の解体をめぐっては、年金記録問題等をめぐって厳しい社保庁バッシングがあったことは記憶に新しいところですが、それは末端の職員に責任があったわけではありません。一連のバッシングの中で、少なくない職員が年金記録の業務外閲覧(いわゆる「チラ見」)や組合の無許可専従等の疑惑をかけられ、無実の罪や軽微な行為で懲戒処分を受け、それを口実に日本年金機構への採用名簿から除外され、免職処分を余儀なくされました。

  しかし、年金記録問題等について、真に責任を負うべきなのは、政治家や高級官僚です。免職処分にあった元職員らは、政治の責任を糊塗するためのスケープゴートにされたといっても過言ではありません。政府が国策として行った免職処分を、政府の一機関である人事院が3割以上も取り消したということ自体、いかに無茶な処分であったかを物語るものです。 

 今回、免職が取り消された3名の方を含めて、15名全員が現在大阪地方裁判所で免職の取消と慰謝料支払を求める裁判をたたかっています。今後は司法の場で、社保庁問題の真相を明らかにし、全員の救済をかちとるまでがんばりたいと思います(当事務所からは福山が弁護団に参加しています)。
                                         弁護士 福山和人

 

遺産相続と法定相続分

Q 

 最近、父が亡くなりました。遺産としては、自宅の土地・建物(いずれも父の単独所有、合計時価  5000万円)と父名義の預貯金(5000万円)があるほか、父が契約者・被保険者で母が受取人になっている生命保険が2000万円あります。借金は特にありません。遺言はありませんでした。残された家族は母と私と姉です。また、父には兄弟が3人いて、うち2人は存命ですが、長兄はだいぶん前に亡くなっています。長兄には子が2人います。この場合、誰がどれくらい相続できるのでしょうか。

A 

相続の対象となる遺産
  このケースの場合、相続の対象となる遺産は、自宅の土地・建物と父親名義の預貯金で、遺産の合計額は1億円となります。生命保険については、被相続人(父親)自身が受取人になっていない限り、遺産とはならず、受取人の固有財産と扱われるので、本件の2000万円の生命保険は妻の財産となります。

誰が相続人になるか
  特に遺言がなければ、相続人の資格は、以下のように法律で定められています。
  ①配偶者は常に相続人となります(民法890条)。
    ②それ以外の親族については、第1順位の相続人が子、子がいない場合の第2順位の相続人が親、子も親もいない場合の第3順位の相続人が兄弟となります(民法887条、889条)。
    このケースでは、妻と二人の子が相続人となります。父親の兄弟は、第1順位の相続人(子)がいるため、相続人とはなりません。

 各相続人の相続分は?
    各相続人の相続分は、以下のように定められています(民法900条)。
 (ⅰ)相続人が配偶者と被相続人の子供の場合⇒配偶者2分の1、子供2分の1
  (ⅱ)相続人が配偶者と被相続人の父母の場合⇒配偶者3分の2、父母3分の1
  (ⅲ)相続人が配偶者と被相続人の兄弟の場合⇒配偶者4分の3、兄弟4分の1
   なお、子供、父母、兄弟がそれぞれ2人以上いるときは、原則として頭数によって均等に分けます。
  このケースでは、相続人は配偶者(妻)と子供2人ですので、相続分は妻が2分の1(5000万円)、相談者と姉が4分の1(各2500万円)となります。

遺産分割の方法
  遺言がなければ、分割方法について法律の定めはありません。特に不動産については、共有にするのか、誰かの単独名義にするのか、売却して代金を分けるのか等が問題となりますが、それは話合いで決めるしかありません。話合いがつかない場合は、家庭裁判所へ遺産分割調停を申し立てることになります。
  詳しくは、弁護士にご相談下さい。  

大飯原発差止訴訟の審理が始まりました


 
 


 
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 7月2日、関西電力大飯原子力発電所の運転差止を求める訴訟の第1回弁論が、京都地方裁判所で始まりました。

 午前11時過ぎから裁判所周辺で約70人が参加して、大飯原発差止めを求める市民パレードを元気よく行いました。12時過ぎからは、何と!御所の中で傍聴券の発行が行われ、84席の傍聴券を求めて110人の方が列に並びました。
 午後2時からの弁論では、原告側は、代理人弁護士16人、原告36人、傍聴者84人、合計136人が法廷に入り、国と関電の代理人が居並ぶ前で、弁論を行いました。法廷に入りきれなかった96人の方は、弁護士会館のホールで、同時進行で行われた模擬法廷に参加しました(写真はパレードと

模擬法廷の様子)。

 弁論では、竹本修三原告団長(地球物理学、測地学、京大名誉教授)が、パワーポイント駆使して、地震国ニッポンで原発稼働は無理だという意見を述べられ、法廷はさながら竹本教室と化したそうです。福島からの避難者である二人の女性原告の意見陳述は、原告弁護団や原告の多くからすすり泣きがもれるほど感動的な内容で、裁判官も何度もうなづき、最後に思わず傍聴席から拍手がなされるほどだったそうです(私は模擬法廷担当だったので、いずれも見られなかったのが残念)。

 

 原告数1107名という大型訴訟とあって、裁判所は多数の職員、警備員を動員して厳戒体制でしたが、「No Nukus」と書いたTシャツを着た原告の入構を阻止したのには、呆れてしまいました。Tシャツにまでいちゃもんをつけるとは・・・そんなことただの一度もなかったのに。

 大飯原発は唯一稼働中の原発です。福島第一原発の事故以来、原発の安全神話は完全に崩壊しました。事故原因の解明もなされておらず、新たな安全基準もない中での見切り発車的な再稼働は許されません。

 次回の弁論期日は、12月3日午後2時です。おそらく、今回同様、12時過ぎころから傍聴券が発行されると思います。多くの原告、市民のみなさんの参加を呼びかけたいと思います。

1 事案の概要

  本件は、被害者が国道をバイクで走行中、加害者が安全確認を怠ったまま、普通乗用自動車で左方の脇道から右折進入しようとしたために、先に交差点に進入していた被害者のバイクに衝突し、被害者が左膝前十字靱帯損傷、内側半月板損傷の傷害を負った事案です。
 原告は、事故後3年8ヶ月後で症状固定し(固定時47歳)、後遺障害等級12級13号と認定されました。

 

2 争点

  主な争点は、①後遺症逸失利益、②慰謝料(入通院分、後遺症分)③過失相殺の可否でした。特に逸失利益については、左膝前十字靱帯損傷、内側半月板損傷による膝の痛み等は機能障害ではなく神経症状だから、労働能力喪失期間は67歳までは認められないというのが保険会社の主張でした。

 

3 当方の請求

  こちらは、後遺症逸失利益(12級13号)は就労可能年齢67歳までの20年分で671万0213円、入通院慰謝料200万円(入院48日、通院54日、通院期間3年6ヶ月)、後遺症慰謝料(12級13号)300万円、その他治療費等を含め、既払金を除き総額1374万円余りを請求しました。

 

4  任意保険会社の対応
  任意保険株式会社の回答額は、後遺症逸失利益が5年分233万0967円、後遺症慰謝料93万円、入通院慰謝料83万1400円、過失相殺20%、既払金を除き総額338万円余りを支払うというものでした。

 

5   解決水準
   余りにも開きがあったので、当方としては交渉を早々に打ち切って訴訟を提起しました。提訴から5ヶ月経った時点で、裁判所が和解案を提案し、その内容で和解解決を図ることができました。
  裁判所の和解案では、入通院慰謝料はこちらの請求額に近い170万円、逸失利益はこちらの主張通り671万0213円、後遺症慰謝料もほぼこちらの請求額に近い280万円が認められ、10%の過失相殺がされたものの、既払金を除き総額1152万円の請求が認められました。

 

6 振り返ってみて
  本件は、左膝前十字靱帯損傷、内側半月板損傷の傷害による左膝痛等の症状が、12級13号の「局部に頑固な神経症状を残すもの」に該当すると判断された事案です。被害者は、学生時代、剣道部に所属するスポーツマンでしたが、事故後は走れなくなり、正座や階段の昇降にも不自由を来すようになってしまいました。
  保険会社は、上記の通り、神経症状だから改善が期待できるとして5年分でよいと主張しました。
  しかし、本件では、左大腿の顕著な筋萎縮が見られたこと、膝蓋大腿関節に軋轢音があったこと、膝の屈伸が困難になったこと、抜釘時に軟骨についてデブリドマン(壊死組織などの切除)を行ったが、膝蓋大腿関節部に受傷後に生じた深い軟骨障害が認められたこと、後遺症診断書にも「不変のみこみ」と記載されていること等から、気質障害であって改善の見込みがないことを丁寧に主張立証しました。それが功を奏して、こちらの主張に沿った和解案を引き出すことができたと思います。また、提訴から和解案提案まで5ヶ月というスピード解決を図れたのも良かったと思います。

 

大飯原発差止訴訟を提訴!

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原発訴訟記者会見20121129 F Tu.jpgのサムネール画像

 
  2012年11月29日、関西電力と国を被告として、現在、全国で唯一稼働している関西電力大飯原子力発電所1号機から4号機までの運転差し止めと損害賠償を求める訴訟を、京都地方裁判所に提訴しました。この裁判には、京都の市民ら1109名が原告として参加しています。これほど多くの市民によって原告団が構成されていること自体、脱原発を求める大きな世論の現れでしょう。今後、大飯のみならず我が国の原発全てを廃炉にさせる取り組みにつなげていきたいと思います。多くの皆さんの御支援を是非とも御願い致します。

大飯原発差止訴訟を提訴!

 2012年11月29日、関西電力と国を被告として、現在、全国で唯一稼働している関西電力大飯原子力発電所1号機から4号機までの運転差し止めと損害賠償を求める訴訟を、京都地方裁判所に提訴しました。この裁判には、京都の市民ら1109名が原告として参加しています。これほど多くの市民によって原告団が構成されていること自体、脱原発を求める大きな世論の現れでしょう。今後、大飯のみならず我が国の原発全てを廃炉にさせる取り組みにつなげていきたいと思います。多くの皆さんの御支援を是非とも御願い致します。

交通事故による鎖骨変形障害についての示談解決例

 交通事故により右鎖骨骨折等の傷害を負った事案について、示談交渉を受任しました。被害者(事故時7歳)は、事故後、PTSD症状もあったため、実通院日数こそ32日でしたが、症状固定までに約2年1ヵ月を要しました。被害者の右鎖骨には、骨折治癒後も、視診上明らかに分かる程度の変形が残りましたが、当初の主治医は、子供の骨変形を後遺症と認めないという特異な立場を取っていました。そこで依頼者と協議した上で、別の大学病院に転院し、後遺症診断書を作成してもらい、12級5号という後遺症認定を受けることができました(症状固定時9歳)。
  加害者は事実関係を全て認めて不起訴処分となっていましたが、その後、死亡してしまいました。加害者は韓国籍だったため戸籍の取り寄せができず、相続人への訴訟提起が困難だったので、任意保険会社との交渉を粘り強く行うことにしました。想定された争点は、①過失相殺の有無、②後遺症逸失利益の有無・金額でした。
 保険会社の当初提案は、過失相殺こそ0%でしたが、通院慰謝料73万円(修正通院期間3.5ヵ月の青本中間値)、後遺症慰謝料224万円、後遺症逸失利益はなし、既払金約270万円を除き50万円余りを支払うという低額提案でした。鎖骨変形の後遺症について、後遺症診断書に「自覚症状なし」との記載があったことから、労働能力の喪失なしと判断されたことが最大の問題でした。
 しかし、鎖骨の変形は、仮に自覚症状がなかったとしても、性質上、外貌醜状と類似の後遺障害であり、12級の醜状障害については、外貌、服装によって就労機会が制限されるとして、後遺症逸失利益を認めた裁判例があること等を主張して、逸失利益として、4,860,600円(賃金センサスによる平成20年産業計・企業規模計・男女計平均賃金)×14%(12級の労働能力喪失率)×11.7117(9歳に適用するライプニッツ係数)=7,969,624円を請求しました。また通院慰謝料は、修正通院期間3.7ヵ月の最大値98万7000円、後遺症慰謝料も12級の最高額300万円、総額で約1200万円(既払分を除き約950万円)を請求しました。
 保険会社の2回目の提案は、後遺症慰謝料を約50万円増額して275万円とした以外は、前回と同じで、後遺症逸失利益はやはりなしでした。さらに交渉を行いましたが、保険会社の回答は、逸失利益を認めるとしても最大5年分(約190万円)までで、それ以上は無理というものでした。それでも諦めずに、裁判例を多数示し、訴訟になった場合の想定損害額も挙げて、繰り返し電話交渉を行いました。その結果、最終的に保険会社から、後遺症逸失利益と後遺症慰謝料、通院慰謝料の合計で730万円、総額で約1000万円(既払分を除き730万円)という回答を引き出すことができたため、その時点で示談に応じることにしました。この額は、後遺症慰謝料を300万円、通院慰謝料を100万円とした場合、後遺症逸失利益は330万円と10年分の逸失利益にほぼ等しい額です。
 不十分な部分は残りますが、裁判に持ち込むこと自体の困難さがあったことや、鎖骨の変形について、必ずしも労働能力喪失を認めない裁判例もある中で、交渉による解決としては、一定の水準をかちとることができたのではないかと思います。
                                                                    以 上

雇い止め事件で勝利的解決! 

  

 京都市内の某医療機関に勤務していた職員の方が、契約を10回以上更新され10年以上勤務していたのに突然雇い止めされた事案について、雇い止めの無効を理由に雇用契約上の地位の確認を求めて、労働審判を申し立てていましたが、この度、医療機関側が雇い止めについて謝罪した上、相当額の解決金を支払う内容の調停が成立し、勝利的解決をかちとることができました。
 労働審判では、労働契約か否か、解雇権濫用法理が類推適用されるか否か等が争点となりました。当方としては依頼人が、勤務の時間や場所等について拘束されていたこと、業務遂行について指揮命令を受けていたこと、社会保険料や所得税が源泉徴収されていたこと等から、労働契約という外なく、また長期間にわたって契約が反覆継続されていたこと等から、解雇権濫用法理の適用があり、雇い止めは無効だと主張しました。
 3回目の審判期日で調停が成立しましたが、雇い止めについての謝罪をかちとったという意味で、基本的に当方の主張が認められたものと考えています。有期雇用の使い捨てが横行する中で、微力ながら一定の歯止めをかけることができたと思います(2012.7.24)。

ボクが建設アスベスト訴訟に取り組む理由

 アスベスト(石綿)と聞いて、何を思い浮かべますか? 僕は小学校の理科の授業で、アルコールランプでお湯を沸かすとき、石綿付きの金網をビーカーの下に敷いていたことを思い出します。
 今、大工や左官など、建設現場で働く人たちの中で、アスベストが原因の肺ガン、中皮腫などの病気が増えています。
 アスベストは、耐熱性、耐火性等に優れており、安価であったことから、高度成長期やバブル期の建設ラッシュの時期に大量に輸入され、多くは建材に使われました。その結果、建設現場で建材を切断・加工したり、解体する際に、大量の石綿粉じんが発生し、建設業従事者がそれを吸い込みました。アスベスト輸入のピークは1974年と1988年です。アスベストは「静かな時限爆弾」と言われ、長期の潜伏期間を経て発病するため、今ごろになって患者が増加しているのです。
 本当は、国や企業はアスベストが危険なことを知っていました。戦前から、外国での報告や国内の調査で、石綿の危険性の報告がされていたのです。1972年には、肺ガンや中皮腫を発症しないという安全値はないこと、つまり低濃度でもガンになるということも明確になりました。ところが、企業は危険と知りながら、大量の石綿含有建材を製造・流通させ、政府も2006年まで使用禁止せず、流通を促進し続けました。これは人災です。
 経済のために、人の命が軽んじられる構造は、イタイイタイ病や水俣病、四日市公害訴訟をはじめ、エイズ、ヤコブ、肝炎等の薬害事件でも繰り返されてきました。これ以上繰り返されてはならない。そう思います。
 2011年6月3日、私たちは、関西建設アスベスト京都訴訟の提訴を行いました。同年12月には2時提訴、今年7月には3時提訴を行い、現在、原告は20名となっています。被告は国と企業43社です。
 今年5月には、横浜地裁で同種事件について、原告敗訴の判決が言い渡されました。
人の命より産業の方が大事という不当判決です。今、東日本大震災などで、震災がれきの処理が問題となっていますが、原告たちは、ボランティアの人たちがアスベスト粉じんを浴びるのではないかと心配しています。自分のことより人の心配をする、それが職人の心意気です。格好いいと思いませんか? それがボクがアスベスト訴訟に取り組んでいる理由です。(2012.7.24)