1. 2012年7月

2012年7月アーカイブ

雇い止め事件で勝利的解決! 

  

 京都市内の某医療機関に勤務していた職員の方が、契約を10回以上更新され10年以上勤務していたのに突然雇い止めされた事案について、雇い止めの無効を理由に雇用契約上の地位の確認を求めて、労働審判を申し立てていましたが、この度、医療機関側が雇い止めについて謝罪した上、相当額の解決金を支払う内容の調停が成立し、勝利的解決をかちとることができました。
 労働審判では、労働契約か否か、解雇権濫用法理が類推適用されるか否か等が争点となりました。当方としては依頼人が、勤務の時間や場所等について拘束されていたこと、業務遂行について指揮命令を受けていたこと、社会保険料や所得税が源泉徴収されていたこと等から、労働契約という外なく、また長期間にわたって契約が反覆継続されていたこと等から、解雇権濫用法理の適用があり、雇い止めは無効だと主張しました。
 3回目の審判期日で調停が成立しましたが、雇い止めについての謝罪をかちとったという意味で、基本的に当方の主張が認められたものと考えています。有期雇用の使い捨てが横行する中で、微力ながら一定の歯止めをかけることができたと思います(2012.7.24)。

ボクが建設アスベスト訴訟に取り組む理由

 アスベスト(石綿)と聞いて、何を思い浮かべますか? 僕は小学校の理科の授業で、アルコールランプでお湯を沸かすとき、石綿付きの金網をビーカーの下に敷いていたことを思い出します。
 今、大工や左官など、建設現場で働く人たちの中で、アスベストが原因の肺ガン、中皮腫などの病気が増えています。
 アスベストは、耐熱性、耐火性等に優れており、安価であったことから、高度成長期やバブル期の建設ラッシュの時期に大量に輸入され、多くは建材に使われました。その結果、建設現場で建材を切断・加工したり、解体する際に、大量の石綿粉じんが発生し、建設業従事者がそれを吸い込みました。アスベスト輸入のピークは1974年と1988年です。アスベストは「静かな時限爆弾」と言われ、長期の潜伏期間を経て発病するため、今ごろになって患者が増加しているのです。
 本当は、国や企業はアスベストが危険なことを知っていました。戦前から、外国での報告や国内の調査で、石綿の危険性の報告がされていたのです。1972年には、肺ガンや中皮腫を発症しないという安全値はないこと、つまり低濃度でもガンになるということも明確になりました。ところが、企業は危険と知りながら、大量の石綿含有建材を製造・流通させ、政府も2006年まで使用禁止せず、流通を促進し続けました。これは人災です。
 経済のために、人の命が軽んじられる構造は、イタイイタイ病や水俣病、四日市公害訴訟をはじめ、エイズ、ヤコブ、肝炎等の薬害事件でも繰り返されてきました。これ以上繰り返されてはならない。そう思います。
 2011年6月3日、私たちは、関西建設アスベスト京都訴訟の提訴を行いました。同年12月には2時提訴、今年7月には3時提訴を行い、現在、原告は20名となっています。被告は国と企業43社です。
 今年5月には、横浜地裁で同種事件について、原告敗訴の判決が言い渡されました。
人の命より産業の方が大事という不当判決です。今、東日本大震災などで、震災がれきの処理が問題となっていますが、原告たちは、ボランティアの人たちがアスベスト粉じんを浴びるのではないかと心配しています。自分のことより人の心配をする、それが職人の心意気です。格好いいと思いませんか? それがボクがアスベスト訴訟に取り組んでいる理由です。(2012.7.24)