1. 建設アスベスト京都(1陣)訴訟の最高裁決定を受けての声明
アスベスト訴訟
当事務所が事務局事務所を務める建設アスベスト京都(1陣)訴訟に関して、1月28日に最高裁第1小法廷が国と建材メーカーの上告の大部分を退ける決定を行いました。これを受けて以下の声明を発表しました。
    声 明
          2021年1月29日
                                         関西建設アスベスト京都訴訟原告団
                                         関西建設アスベスト京都訴訟弁護団
                                         全京都建築労働組合
                                         関西建設アスベスト訴訟統一本部
                                
1 2021年1月28日、最高裁判所第1小法廷(深山卓也裁判長)は、関西建設アスベスト京都1陣訴訟(被災者25名、一審原告27名)において、一審被告国の上告受理申立について、被災者1名(屋外工)に対する関係を除いて不受理とするとともに、一審被告企業のうち原審で責任が認められた10社の上告及び上告受理申立については、2社(クボタ、ケイミュー)を除き、8社(A&A、太平洋セメント、ニチアス、日鉄ケミカル、大建、ノザワ、MMK、日本バルカー)につき上告棄却・不受理と決定した。
   これにより、一審被告国の責任について、原審の大阪高等裁判所第4民事部(田川直之裁判長)判決が、被災者25名中24名に対する関係で確定した(国の確定賠償額は総額1億7933万円余り)。また建材企業の責任については、被災者25名中21名との関係で、8社の責任が確定した(確定賠償額は総額1億0360万円余り)。
   今後、上告が受理された点に関して、本年3月22日午後1時30分から上告審の弁論が行われる予定である。
2 国の責任について
  首都圏建設アスベスト東京1陣訴訟における最高裁の2020年12月14日付上告不受理決定により、本件における国の規制権限不行使の責任が確定したが、それに続く本決定により、そのことはより一層明確となった。また建築労働者と等しく現場で働き,等しく被害を受けた一人親方や零細事業主に対する関係でも、国の規制権限不行使の責任がより明確となった。さらに京都1陣訴訟の被災者25名中ほぼ全員の24名の救済を認めたことも積極的に評価できる。
    違法期間や違法事由の範囲等に関する最高裁の具体的判断は、現時点では不明であるが、最高裁には救済範囲をできる限り拡大する方向での積極的判断を求めたい。
3 建材メーカーらの責任について
  本決定により、主要なアスベスト建材企業である8社について、石綿の危険性を知りながら利益のために適切な警告を尽くさずに、製造・販売を続けたことの共同不法行為責任を認めた大阪高裁判決が確定した。責任が確定した8社は、シェア上位企業であり、その責任が確定したことは、今後の被害者救済にとって大きな意義がある。上告が受理された2社はいずれも高裁判決において、屋外工に対する賠償責任が認められた企業であり、その意味では、屋外工に対する関係を除いて、建材企業の警告義務違反に基づく共同不法行為責任はこれで決着した。建材企業の共同不法行為責任が最高裁で確定したのは初めてであり、今後の被害救済につながる大きな成果と言える。
4 屋外作業について
  最高裁は、屋外工(屋根工)1名との関係で、平成14年1月1日以降の国と企業の責任を認めた大阪高裁判決を見直す可能性がある。しかし建設現場における石綿粉じん曝露の危険性は屋内外で本質的に異なるところはない。その点は海外の規制を見ても明らかであり、屋外作業を規制対象から除外することはできない。この点は、今後上告審において最高裁に強く訴えていきたい。
5 全ての被害者への謝罪と償い、早期解決を
  2008年5月16日に首都圏建設アスベスト訴訟が東京地裁に提訴されてからすでに12年8ヶ月、2011年6月3日に京都1陣訴訟が京都地裁に提訴されてから9年7ヶ月が経過した。その間に、多くの被害者が解決を見ることなく亡くなっている。国も企業も責任が確定した今、これ以上の解決の引き延ばしは許されない。早期全面解決に踏み出すべきである。
   私たちは、国と企業に対し、第1に京都訴訟の原告ら被害者に真摯に謝罪するよう求める。第2に全ての建設アスベスト訴訟の早期全面解決と被害者への公正な償いを求める。第3に、建設アスベスト被害者補償基金の創設等の抜本対策を講ずるよう強く求める。
   私たちは、建設アスベスト被害者の完全救済とアスベスト被害の根絶のため、全国の被災者、労働者、市民と連帯して、引き続き奮闘する決意である。
                                  以上