1. 法律アラカルト

法律アラカルト

婚姻・離婚-戸籍の訂正

 婚姻届・離婚届の不受理申出の手続きが完了する前に、本人の意思に基づかない婚姻届・離婚届が勝手に提出され、役所に受理され、戸籍に記載されてしまった場合は戸籍の訂正をすることができます。
 まず、家庭裁判所に婚姻無効・離婚無効の調停を申し立てます。調停での協議の結果無効であることについて双方が納得をすれば、裁判所は婚姻無効・離婚無効の審判を行います。これを役所に提出して訂正してもらうことができます。調停不成立となった場合は、婚姻無効・離婚無効の訴訟を提起し、判決で無効を確認した上で訂正することになります。(戸籍法116条1項)

 なお、訂正すべき事項が軽微であって訂正の結果が身分法上重大な影響を及ぼすおそれがない場合等には、家庭裁判所の許可を受ければ戸籍を訂正することができます。(戸籍法114条)

婚姻・離婚-不受理申出制度

 婚姻も離婚も当事者双方の意思に基づいて行うものです。
 

  しかし、本人にその意思がないのに、知らないうちに勝手に婚姻届や離婚届が出され、戸籍上に記載されてしまうことが起こり得ます。

  そのような心配がある場合は、役所に対して不受理申出をしておけば、婚姻届や離婚届が提出されたとしても受理されることはありません。また、不受理申出をしておけば、誰かが婚姻届や離婚届を役所に提出した場合に、提出があった旨を役所から知らせてもらえます。
(戸籍法第27条の2第3項~第5項)
 

離婚-離婚したいが相手が応じない場合

 離婚を望んでいるけれど相手が応じてくれない場合は、まずは家庭裁判所に離婚調停を申し立てます。

  調停では調停委員を交えて協議することができるので、夫婦が改めて冷静に話し合うことも可能になるかもしれません。ただし、調停はあくまでも話し合いと合意によって離婚を成立させるものです。夫婦の一方が欠席して話し合いができない場合や話し合いをしても最終的に合意できなかった場合には調停は不成立となります。

 そうなると、離婚訴訟を提起することができます。民法で定められた離婚原因が存在することを裁判所が認めれば、判決で離婚することができます。

 離婚原因:民法770条1項
「夫婦の一方は、次に掲げる場合に限り、離婚の訴えを提起することができる。
一  配偶者に不貞な行為があったとき。
二  配偶者から悪意で遺棄されたとき。
三  配偶者の生死が三年以上明らかでないとき。
四  配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがないとき。
五  その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき。」

離婚-調停の活用

 離婚調停の申し立て費用は、収入印紙代1200円(平成24年3月現在)と切手代です。弁護士に依頼せずに申し立てることも可能です。
 離婚調停は、1回の調停期日で終わるのではなく、2回、3回と期日を重ねて協議を継続することができます。月に1回ぐらいのペースで期日が定められることが多いため、成立するまでに時間がかかります。その分、当事者双方が納得のいくまでじっくり話し合えるともいえます。
 調停が成立した場合は、裁判所が調停調書を作成し、当事者が合意した離婚条件が記載されます。

 養育費の支払いが滞った場合には、調停調書をもとに強制執行を行うことができます。この点は公正証書の効力と同じです。

婚姻-同居義務

  民法第752条に次のように定められています。  
  「夫婦は同居し、互いに協力し扶助しなければならない。」
 
  夫婦間においては同居義務があるとされています。しかし、正当な理由があれば同居を拒否することができます。
 例えば、婚姻を継続しがたい重大な事由が認められる場合は、夫婦の一方は、相手方から同居するよう求められても拒否することができます。
 また、同居請求が信義則に反するような場合は、権利の濫用となるので、このような場合も同居を拒否することができます。
  

親権停止-民法改正

 民法等の一部を改正する法律(法律第61号)が平成24年4月1日より施行されました。
 児童虐待の防止等を図り、児童の権利利益を擁護する観点から、親権停止の制度が新設されました。
 父または母による親権の行使が困難または不適当であることにより子の利益を害するときは、家庭裁判所は、2年以内の期限を定めて親権停止の審判を行うことができるようになりました。(民法834条の2)

 従来は親権喪失の制度しかありませんでしたが、親権停止の制度が新設されたことにより、より柔軟な対応が可能になったといえます。
  

未成年後見人-民法改正

 民法等の一部を改正する法律(法律第61号)が平成24年4月1日より施行されました。今回の改正は子どもに関する部分です。

 未成年後見人については、複数の者を選任することができるようになりました。

  また、法人が未成年後見人になることも可能になりました。(民法840条2項、3項)

離婚-公正証書の活用

離婚-公正証書の活用

 協議離婚する際、合意した離婚条件を公正証書にすることができます。

  公正証書には、「支払が滞った場合に強制執行をされてもかまいません」という趣旨の文言を記載します。こうすることで、例えば養育費の支払いが滞った場合に、公正証書をもとに強制執行を行い相手方の財産を差し押さえることが可能になります。

 もし、公正証書を作成していなければ、養育費が不払いになっても、いきなり強制執行はできず、訴訟を行い判決を得なければなりません。

 公正証書は公証人役場で作成できます。公正証書作成の費用等については公証人役場にてご確認ください。

離婚-早く離婚したい場合

離婚には、協議離婚、調停離婚、審判離婚、裁判離婚があります。

スピーディなのは協議離婚です。

離婚条件について夫婦間で話し合いを行い合意することができる場合は、協議離婚が可能です。離婚届を役所に提出するだけで離婚が成立しますが、離婚条件について合意書を作成したり、合意内容を公正証書にしておくことも検討する方がよいかもしれません。

離婚-何を話し合えばよいか

 離婚協議では、離婚をするかしないかについて話し合うとともに、離婚条件についても協議することになると思います。
 離婚の際に協議しておくべきことは主に次の事項です。

 ■親権者
 ■養育費
 ■財産分与
 ■慰謝料
 ■年金分割

 また、離婚成立までの間の生活費(婚姻費用)をどうするかについても話し合っておく必要があるでしょう。

離婚-手続き

 離婚には、次のような方法があります。

■協議離婚

  離婚条件等について夫婦で話し合い、合意し、役所に離婚届を提出します。

■調停離婚

  家庭裁判所で調停委員を交えて離婚条件等について話し合い、夫婦が納得すれば調停離婚が成立します。夫婦だけでの話し合いが困難な場合や離婚条件について調停調書できちんと定めておきたい場合などに利用されます。

■審判離婚

  調停を経ても離婚条件等について合意ができなかった場合等に裁判所の判断で離婚を成立させることができます。ただし、2週間以内に異議が出れば審判の効力が失われるため、あまり利用されていないようです。

■裁判離婚

  夫婦の話し合いや調停・審判によって離婚が成立しない場合に、夫婦の一方が離婚訴訟を提起し、裁判所の判決によって離婚するものです。離婚判決のためには、民法に定められた「離婚原因」が必要です。

 

(さらに…)

建物賃貸借-行方不明者に明け渡しを求めるには?

 アパートの賃借人が何の連絡もなく行方不明になり、家賃の不払いが続いた場合、家主はアパートの賃貸借契約を解除して明け渡しを求めることができます。

 ただし、その方法はやや複雑です。

 まず、賃借人に対して、賃貸借契約解除の意思表示を行う必要がありますが、行方不明になっていてどうしても賃貸人に連絡がつかないことがあります。

 

 そこで、建物の明け渡しを求める訴訟を提起します。

 訴訟では、「公示送達」という制度を使うことができるでしょう。

 これは、努力しても相手方が分からない場合や相手方の住所・居所が分からない場合に、裁判所に一定期間文書が掲示されること等により、法的に相手方のもとに送り届けられた扱いとするものです。
 

 建物明渡請求訴訟で勝訴判決を得た後は、裁判所に強制執行の申し立てを行います。

 そして、執行官により強制的にアパート内の荷物を外に出すことができます。
 

 気をつけなければならないのは、上記のような裁判所の手続きを経ることなく、家主が賃貸人の荷物を勝手に運び出したり処分したりしてはならないということです。

 たとえ、賃貸借契約書に「家賃が○回未払いとなったときは、家主は無断で賃借人の荷物を処分できる」といった文言が記載されていたとしても許されません。

 

 家主が裁判所の手続きを経ることなく賃借人に無断で荷物を処分したりする自力救済行為は違法とされており、後に賃貸人から損害賠償請求をされることもあります。

 

親権者の変更

  離婚時に未成年の子どもがいる場合、父母のうちどちらか1人を離婚後の親権者と定めることになっています。
 婚姻中は父母の共同親権ですが、離婚後は単独親権となるのです。

 離婚の際、親権について落ち着いて考える余裕がなく、親権者となることができなかったので後悔しているという話を聞いたことがあります。
 このような場合は、親権者の変更を求めるという方法があります(民法819条6項)。

 手続きとしては、家庭裁判所に親権者変更の調停(または審判)を申し立てます。

 親権者の変更が認められるためには、認められるだけの理由が必要です。
 特に、子どもへの影響が重視されるようです。
 それまでの養育状況、学校環境など様々な事情を踏まえて、話し合いにより合意がなされ、また、場合によっては、裁判所が結論を出すことになります。

 

 A(夫)、B(妻)、C(子)、D(夫の父親)がいるケースで考えてみましょう。

  A(被相続人)が亡くなると、BとCが法定相続人となります。

 相続人は、各人の相続分に応じて、被相続人のプラスの財産もマイナスの財産も引き継ぐことになります。
 マイナスの財産が多いなどの理由で相続をしたくないときは、相続放棄を行うことができます。

 CがAの財産について相続放棄した場合は、BとDが法定相続人となります。
 
 もし、DもAの財産を相続したくないなら、Dも相続放棄の手続きをする必要があります。
 相続放棄ができる期間は、「自己のために相続の開始があったことを知った時から三箇月以内」(民法915条1項)です。

 Dは、Cが相続放棄をしたために法定相続人になりました。
 たとえば、Dが、Cが相続放棄をしたことに気づき自分が相続人になったことを知ったのが、Aが亡くなってから1年後だったとしても、D自らが相続人となったことを知った時点から3か月以内であれば相続放棄をすることができます。

 なお、相続放棄は家庭裁判所で行います。

逮捕・勾留-いつ帰宅できるか

刑事事件を起こして逮捕・勾留された場合、いつ帰宅できるのでしょうか。

 

●捜査段階(起訴される前の段階)

逮捕は最大72時間です。その後、勾留されると10日間、さらに勾留が更新されると10日間拘束されることになりますので、勾留は一般事件の場合、最大20日間です。

 捜査が終了した場合や帰宅を認めても捜査上支障が少ない場合など一定の場合には、逮捕・勾留段階で帰宅できることがあります。

 また、勾留中に裁判所に不服申立(準抗告)を行い、これが認められると帰宅できます。

 

●起訴後の段階

勾留されたままの状態で裁判所に起訴されたときは、保釈という手続をとることができます。一般に保釈されるためには、身元引受人になってくれる人と保釈金が必要です。

まず、身元引受人になる人の誓約書などの書類を用意して、裁判所に保釈請求を行います。裁判所は、罪証隠滅のおそれがないか、逃亡のおそれがないかといった観点から審査を行い、帰宅を認めても刑事裁判に支障が生じないと判断すると、保釈を認めるという決定を出します。その後、保釈金を裁判所に納付すると保釈されます。

なお、被告人が刑事裁判の期日に裁判所にきちんと出頭して裁判を受ければ、判決言い渡し後に保釈金が返還されます。

 

弁護士会では、当番弁護士制度を設けており、当番弁護士が逮捕・勾留された人の所へ無料で面会に行きアドバイスを行っています。その後、刑事弁護を依頼するには弁護士費用が必要となりますが、費用負担が困難な方のために弁護士費用を援助する制度があります。詳しくは京都弁護士会のホームページなどをご覧ください。

釈放や保釈については、それぞれの事件の弁護人にご相談ください。

(さらに…)

協議離婚-古い離婚届は有効か

協議離婚は、夫婦が離婚に合意し、離婚届に署名捺印のうえ役所に提出するというものです。
離婚に夫婦で合意し離婚届に署名捺印したけれど、離婚の条件(財産分与や親権など)でなかなか話がまとまらず、話し合いをしているうちに日にちが経ってしまった場合、その離婚届による離婚は有効でしょうか。

東京高裁平成21年7月16日判決の事案は、夫婦が離婚に合意し離婚届に署名捺印して、妻が離婚届を預かり、それから9ヶ月後に妻が離婚届を提出したところ、夫が離婚は無効だと主張して争ったというものでした。
この事案では、夫が離婚届を書いた時点で離婚意思を有し、離婚届の提出を妻に委ねており、届出までの9ヶ月間に夫が離婚を阻止しようとした事実はなかったとのことです。また、妻は、夫が定職に就いて生活状況が好転するかもしれないと思い、離婚届の提出を留保していたけれど、生活が改善しなかったため別居し、離婚届を提出したとのことです。
このような諸々の事情を考慮した上で、裁判所は離婚が有効であると判断しました。

離婚届の提出時点において妻も夫も離婚意思を有すると認められる場合には、離婚届提出が多少遅れたとしても離婚は有効となります。逆に、離婚届の提出までの間に、妻または夫が離婚の意思を喪失したという事情があるときは、届出時点で離婚意思を有しないということになりますから、離婚は無効となります。

(さらに…)

離婚-離婚後の住まい(財産分与)

結婚生活の中で形成された財産は、離婚の際に基本的には夫と妻それぞれが1/2の割合で取得できます。例えば、不動産(土地や建物)、預貯金、証券、退職金などが分割の対象となります。これを、「財産分与」といいます。

夫の収入で購入した家があり、その所有名義人が夫であっても、結婚生活の中で形成された財産ならば、基本的には妻にも1/2取得する権利があります。
会社員の夫と専業主婦の妻が離婚する場合、妻が離婚後も引き続き家(結婚生活の中で形成された財産)に住み続ける方法としては次のものがあります。

家(時価500万円)のほかに預貯金(600万円)がある場合、1/2の割合で財産分与するならば、夫が預貯金550万円分、妻が家と預貯金50万円分を取得するという方法が考えられます。
夫が家を取得する場合は、夫と妻との間で建物賃貸借契約や使用貸借契約を結び、夫所有の家を借りて妻が住み続けるということも考えられます。子どもが成人するまでの間、貸借契約を結ぶことで、妻が子どもの親権者となって住み慣れた環境で子どもを養育することも可能となるでしょう。
 この他にも夫婦の事情によって様々な方法が考えられます。

 

(さらに…)

面接交渉 祖父母・兄弟姉妹との交流

 夫婦が別居しているとき、あるいは、離婚したときに、別居親と子どもが会ったり、手紙や電話で交流したりすることがあります。このような権利を「面接交渉権」「面会交流の権利」といいます。親子間の面接交渉について、家庭裁判所に調停や審判を申し立てることができます。

 では、例えば、夫婦が離婚し、子どもが母親のもとで養育される場合、父方の祖父母と孫が交流する権利はあるのでしょうか。
 また、夫婦が離婚し、姉が母親、弟が父親のもとで養育される場合、姉と弟が交流する権利はあるのでしょうか。
 この問題は、まださほど話題になっていないように思います。

 祖父母や兄弟姉妹との交流が、子どもの成長にとって好ましい場合もあります。特別な事情があったようですが、裁判所が祖父母と孫との面接交渉を認めた事例もあります。

 面接交渉を行うのが適切かどうか、誰とどのような方法で交流するのかについては、夫婦や家族によって様々です。家庭裁判所では、子どもの福祉の視点を中心に判断されています。

(さらに…)