仕事上のミスを上司に報告したところ、「翌月から減給」と言われ、弁解も聞いてもらえないままに給料が引き下げられたというケースがありました。
会社の言い分は懲戒処分としての減給だということです。
しかし、よくよく事情を確認すると、ミスといっても日常的に起こるごく些細なもの。その日のうちにフォローできており会社に特に損害は生じていませんでした。
労働者の同意がないのに、会社が理由なく一方的に給料を引き下げることはできません。
懲戒処分としての減給が許されるためには、就業規則に懲戒処分の定めがあり、その上で懲戒処分をすることについて客観的に合理的な理由があり、社会通念上相当であると認められなければなりません。
そうでない懲戒処分は、懲戒権の濫用であり違法・無効です(労働契約法15条)。
上記のケースでは、ミスがあったにしても、ごく些細なもので、しかも会社に損害が生じていませんので、減給という懲戒処分をするに値する客観的に合理的な理由があるとはいえません。
また、減給は労働者の生活に直結する重大な処分ですから慎重になされる必要がありますが、上記のケースでは、ミスがごく些細なものなのに減給されていますので明らかに重すぎます。
しかも、労働者に弁明の機会も与えられていないという手続面での問題もあります。
したがって、社会通念上相当な処分とはいえません。
上記のケースで労働審判を申し立てたところ、会社側から解決金が支払われて解決しました。
弁護士 津島 理恵