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2013年5月アーカイブ

被相続人の生前中に書かせた相続放棄の書面の効力

Q : 親兄弟に散々迷惑をかけてきた三男が、「自分は迷惑をかけてきたから、父の相続が発生したときは、相続権を放棄します」という念書を作成すると言い出したので、念書を書いてもらい、実印を押してもらいました。有効でしょうか?

 

A : 無効です。このような念書を書いてもらっていても、また推定相続人全員の合意の形を取っていても無効です。

 相続放棄は、被相続人の死亡後の家庭裁判所への申述と審判によってのみ効力が発生するからです。

 このようなケースでは被相続人が遺産のすべてを三男以外のものに相続させる旨の遺言書を作成することが考えられます。

 しかし、そのような遺言書が存在していても三男(子ども)には「遺留分」といって、一定期間内に法律で定められた遺留分割合を請求する権利が認められていますので、上記のような遺言書を作成しても、後日三男が心変わりすれば、親兄弟の意向に沿わない結果になる可能性があります(この場合、「相続人の廃除・欠格」という制度も存在しますが、要件がかなり厳しく定められています)。

 もっとも、もし真意に三男がまったく相続はしないという意向を有しているのであれば、三男が自ら相続開始前に「遺留分の放棄」をすることは可能です(民法1043条)。

 ただし、「遺留分の放棄」は必ず家庭裁判所の許可を得ておかなければなりません。

 家庭裁判所としては、①申立が三男の真意に基づいてなされているか、②放棄の理由に合理性・必要性が認められるか、③放棄と引き換えに贈与等の代償給付がなされたかどうかといったことを考慮して、許可をするか否かを判断することになります。

 ただ、こうして考えると、三男が真意に相続したくないとの意向を有しているのであれば、心変わりのリスクはありますが、相続開始後に相続放棄をするか(家庭裁判所への申述は必要ですが、放棄の理由や合理性・必要性等は問われません)、相続開始後に三男の取得分をゼロとして遺産分割協議を成立させる(家庭裁判所への申述も不要です)ことが現実的な方策と思われます。

               弁護士 黒澤 誠司

略歴
大阪府出身
洛北中学校卒業
立命館高校卒業

1985年
立命館大学法学部入学 薬師寺ゼミ(国際公法)

1996年
司法試験合格(50期)

1998年
弁護士登録 京都法律事務所入所

2011年
京都弁護士会 副会長

2013年
京都弁護士会 高齢者障害者支援センター運営委員会 副委員長・京都弁護士会 紛争解決センター運営委員会 副委員長

2014年
京都弁護士会人権擁護委員会委員長
日弁連人権擁護委員会
近畿弁護士連合会人権擁護委員会
日栄・商工ローン被害対策京都弁護団 事務局長
中国残留孤児国家賠償訴訟京都弁護団 事務局
シベリア抑留国賠訴訟弁護団 事務局長
青年法律家協会京都支部 事務局長
NPO法人 患者の権利オンブズマン関西常任委員などを歴任

趣味等
学生時代は中高大とソフトテニス部に所属していました。最近は小ネタ手品に興味があります。

ココ山岡事件
日栄不当利得金返還請求訴訟その他消費者事件
薬害ヤコブ病事件
中国残留孤児国家賠償訴訟
城山共同作業所事件
医療過誤事件
今西税金裁判
シベリア抑留国家賠償訴訟
新生存権裁判

弁護士として最初にかかわった事件が医療事故であったので、医療事故に関心があります。
また、最近は、裁判所から遺産分割、遺留分減殺請求や破産管財事件、成年後見事件を引き受けることが多くなっています。
法律事務所に来られる方は、精神的に追い詰められた方が多いので、ご相談をお聞きするときは、話しやすい雰囲気を作るように心がけています。また、事件のご依頼を受けた場合は、事務所のモットーである「敷居は低く、志は高く」を意識しつつ、できるだけ難解な法律用語を使わないようにして事件の進行について理解をしていただきながら、一緒に事件解決を目指すようにしたいと考えています。