1. 2013年4月

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お腹の赤ちゃんに相続権は認められるか?

 妊娠中に夫が死亡した場合、妻のお腹の赤ちゃんに相続権が認められるでしょうか。
 相続権が認められるか否かで結論が大きく異なってきますので、知っておく必要があります。
 
 人は、生まれてはじめて権利を有し、義務を負担する能力を取得するというのが大原則です。
 しかし、それでは将来生まれることが予想される胎児にとっては不利益となることから、相続に関しては、例外的に「胎児は、相続については、すでに生まれたものとみなす」と定められています。

 ただ、現実には、流産等の可能性も否定できないため、判例では、胎児の段階では、まだ相続権はなく、将来生まれてきた時点で、相続開始の時にさかのぼって相続権を有していたものとして扱われることになります。

 少しややこしいので例をあげると、妊娠中に夫が死亡した場合、赤ちゃんが生まれる前に赤ちゃんを除いて遺産分割協議をすると、その後赤ちゃんが生まれた時点で、赤ちゃんも相続人に加えた形で遺産分割協議をやり直さなければならないということになります(相続回復請求権を行使)。
 これは、手続としては非常に面倒ですので、妊娠中である場合、赤ちゃんが実際に生まれてから遺産分割協議を行ったほうがよいと思われます。

 なお、赤ちゃんは意思表示ができませんから、赤ちゃんを相続人に加えた形で遺産分割協議をする場合、家庭裁判所に対して特別代理人を選任してもらい、その特別代理人に加わってもらって遺産分割協議を行うことになります。
 母親は赤ちゃんとともに相続人となるため、特別代理人になることはできませんので注意が必要です。

                       弁護士 黒澤 誠司