1. 囲繞地(いにょうち)通行権の対価
黒澤弁護士の“知ってますか”

囲繞地(いにょうち)通行権の対価

 京都でも比較的多く見られるのですが、ある土地が他の所有者の土地に囲まれて、公路に出るためには他人所有の土地を通らなければならないような土地が存在します。これを「袋地」と言います。

 「袋地」の周りの土地所有者全員が自己の所有土地を通らせないと言い出すと、当該「袋地」は利用価値のない土地となってしまい、これは社会経済的に見てよろしくないということで、「袋地」については、法律上当然に「囲繞地(いにょうち)通行権」というものが認められています。

 「囲繞地通行権」というのは、難しい言葉ですが、簡単に言うと「ある所有者の土地が、他の所有者の土地等に囲まれて(この状態を囲繞という)、公路に接していない場合に、囲まれている土地(袋地)の所有者が公路まで他の土地を通行することができる権利」です。

 このような土地の位置関係にある場合に、囲んでいる側の土地を「囲繞地」といいます。

 「囲繞地通行権」は「袋地」所有者に法律上当然に認められる権利ですが、反面、囲繞地に損害を与えるものですから、囲繞地通行権者は、囲繞地の所有者に対して、償金(対価)を支払わなければならないのが原則です。

 ただ、例外として、共有土地を分割して袋地を生じさせた場合や、一筆の土地を分筆して袋地を生じさせた場合は、そのような分割ないし分筆をすると「袋地」が生じることを承知の上で、分割ないし分筆をしているので、「袋地」所有者は、分割後の残地または分筆前に一筆の土地であった土地を無償で通行することが認められます。

        2012年10月25日  弁護士 黒澤 誠司