1. 黒澤弁護士の“知ってますか”

黒澤弁護士の“知ってますか”

死亡退職金は相続財産か ?

 生前に支給された退職金、並びに退職後で退職金の支給を受ける前に死亡した場合の退職金はいずれも相続財産となります。

 

 ただ、本人の死亡後、遺族等に支払われる死亡退職金が相続財産に含まれるか否かについては、昔から争いがありました。

 

1.死亡退職金の支給について受給権者が規定されている場合

 

 就業規則等で受給権者が被相続人と定められている場合は、相続財産となります。

 

 他方、遺族等と定められている場合、考え方が分かれますが、最高裁を含めた多くの判例は、死亡退職金について遺族の生活保障が目的であると考えて、相続財産ではないと判断しています。

 

2.死亡退職金の支給について受給権者の規定がない場合

 

 例えば、死亡退職金についての定めが勤務先会社に存在していなかったが、本人の死亡後、勤務先会社の決議で死亡退職金を支給する旨の決議を行って遺族に支払いをした場合などについては、判例でも考え方が分かれていました。

 

 ただ、最高裁判所昭和62年3月3日判決では、退職金支給規定を有しない財団法人の理事長が死亡した後に、理事会が亡理事長の妻に対して死亡退職金を支給する旨の決議を行い支払った事案について、死亡退職金は相続財産として相続人の代表者としての妻に支給されたのではなく、相続という関係を離れて亡理事長の妻個人に支給されたものであると判示して相続財産ではないとの立場に立ちました。

 

 死亡退職金が相続財産となるのか否かは、被相続人が他に多額の負債を抱えており、相続放棄を検討しなければならないケースなどでは、重要な問題となりますので、慎重な事前の検討が必要です。

 

 

2013年1月7日  弁護士 黒澤 誠司

囲繞地(いにょうち)通行権の対価

 京都でも比較的多く見られるのですが、ある土地が他の所有者の土地に囲まれて、公路に出るためには他人所有の土地を通らなければならないような土地が存在します。これを「袋地」と言います。

 「袋地」の周りの土地所有者全員が自己の所有土地を通らせないと言い出すと、当該「袋地」は利用価値のない土地となってしまい、これは社会経済的に見てよろしくないということで、「袋地」については、法律上当然に「囲繞地(いにょうち)通行権」というものが認められています。

 「囲繞地通行権」というのは、難しい言葉ですが、簡単に言うと「ある所有者の土地が、他の所有者の土地等に囲まれて(この状態を囲繞という)、公路に接していない場合に、囲まれている土地(袋地)の所有者が公路まで他の土地を通行することができる権利」です。

 このような土地の位置関係にある場合に、囲んでいる側の土地を「囲繞地」といいます。

 「囲繞地通行権」は「袋地」所有者に法律上当然に認められる権利ですが、反面、囲繞地に損害を与えるものですから、囲繞地通行権者は、囲繞地の所有者に対して、償金(対価)を支払わなければならないのが原則です。

 ただ、例外として、共有土地を分割して袋地を生じさせた場合や、一筆の土地を分筆して袋地を生じさせた場合は、そのような分割ないし分筆をすると「袋地」が生じることを承知の上で、分割ないし分筆をしているので、「袋地」所有者は、分割後の残地または分筆前に一筆の土地であった土地を無償で通行することが認められます。

        2012年10月25日  弁護士 黒澤 誠司

医療事故の調査

 最近では、医療事故に取り組まれる弁護士も増えてきましたが、医療事故の場合、いわゆる一般民事といわれる事件とは少し異なる面があります。

 一般民事事件の典型例としては、貸金請求事件や交通事故事件などがありますが、これらの事件については、最初の相談をお聞きした時点で、ある程度、勝訴の見込みやその後の回収可能性の見通しを立てることができるため、2回ほどの打ち合わせで調停や訴訟などで受任をすることが可能です。

 ところが、医療事故の場合、医療行為の内容が問題となるため、最初に相談をお聞きしただけで、医療機関側に過失が認められるか否かの見通しを立てることは困難です。
 そのため医療事故の場合、一般民事事件とは異なり、最初医療機関側の過失が認められる可能性があるか否かについての見通しを立てるための「調査」が必要になり、最初は医療事故の「調査」として受任することになります。

 「調査」の内容としては、具体的にはカルテの取り寄せ(ケースによれば証拠保全)、翻訳、医学文献の調査、判例調査、協力医の意見聴取などです。
 こうした「調査」の依頼からスタートすることが、医療事故と一般民事事件との大きく異なる点の一つだと思います。

 もちろん、「調査」の結果、勝訴が見込まれないとの判断に至ることもありますので、その場合、費用だけかかって何にもならなかったということになりかねず(私はそうは思いませんが…)、弁護士に依頼することへの一つの大きなハードルになっていると思います。
 医療事故は難しい、費用がかかるあるいは時間が掛かるといわれていることの一つの原因はここにあると思われます。

 ただ、この「調査」がしっかりと行われていないと、その後の訴訟等で医療機関側から思わぬ反論を受けて訴訟を維持できなくなるなどの事態も生じうるため、医療事故ではこの調査が非常に重要であると考えています。

        2012年6月8日  弁護士 黒澤誠司

刑の一部執行猶予制度

  昨日、刑の一部執行猶予制度についての講演を聞いてきました。

 同制度の法案は、すでに参議院を通って、現在衆議院で審理中です。

 もともと刑務所が過剰収容状況になっている状況をふまえ、被収容人員適正化方策を検討する中で出てきた法案ということです。

 いろいろ問題点も指摘されており京都弁護士会では今年度反対の意見書を出しております。
 
 そもそもこれまで実刑であったケースが一部執行猶予となるのであれば、たしかに刑務所の収容人数の減少につながるかもしれませんが、これまで全部執行猶予であったケースが一部執行猶予となるのであれば、かえって収容人数が増えることになります。

 当初の検討目的とは異なる結果となる可能性があります。
 
 また、一部執行猶予の場合、保護観察を付けるケースがかなり増えることになることが想定されていますが、現実にこれに対応できる保護司の確保ができるのか、きわめて疑問に思われます。

 重要な改正であるにも関わらず、ほとんど話題にもならず十分な検討がなされていないように思われ気になります…。

           2012年4月25日  弁護士 黒澤誠司

死刑制度について

  昨日開かれた京都弁護士会の総会で「死刑制度の廃止を求める決議」が議論されました。

 結果としては否決されましたが、提案をさせていただくにあたって様々なご意見を聞き、悩みながらの提案でした。

 いくつか問題提起をされた中で、大きな争点となったのは、「死刑制度の廃止を求める決議」というものを弁護士会が出すことが、この決議に反対の意見を有する個々の会員の思想良心の自由を侵害することになるのではないかという点です。

 この点については、決議となれば、その賛否を表明せざるを得なくなるため、そうした制度についての自己の考えを明らかにしたくないと考える方にとっては、決議が審議の対象となること自体が苦痛であるし、強制加入団体である弁護士会が自己の考えと異なる意見を表明するということが苦痛であるというご意見がありました。

 私個人の考えですが、死刑はひとつの刑罰制度の在り方であって、その制度が望ましいものであるか否かについては、司法の一翼を担う弁護士会がその責任として意見を述べなければならないものと思います。

 また、弁護士会という団体としての意見表明と個々の会員の考えは別物です。
 人それぞれ考え方が様々であることは当然であって、個々の会員が特定の考え方を押しつけられるという性質のものではありません。
 
 もし、全員の意見が一致しなければ弁護士会としての意見を述べることができないということになれば、様々な意見を持つ人で構成される弁護士会はほとんどすべての事柄について意見を述べることができなくなってしまいます。

 今回の総会ではいろいろなことを考えさせられました。
 折りに触れて少しずつ考えを整理していきたいと思います。

                                                     2012年3月9日  弁護士 黒澤誠司

京都弁護士会 副会長就任のごあいさつ

 このたびの未曾有の大震災によって甚大な被害に遭われたみなさまに、心よりお見舞い申し上げます。

  私は、2011年4月1日から2011(平成23)年度京都弁護士会副会長に就任させていただくことになりました。この1年は会務活動が増えるため事務所に所在する時間が少なくなるなど関係者の皆様方にご迷惑をおかけすると思いますが、ご容赦いただきたいと思います。

  ところで、一般に弁護士は、「どんなことをしているのかよく分からない」、「敷居が高い」等のイメージを持たれていることがあるかと思います。
 時々お医者さんと比較されることもあるのですが、お医者さんには日常的にお世話になることがあるものの、人によっては弁護士と接することなく一生を過ごされる方もいらっしゃいます。
 そのためか、これまで弁護士の活動については、あまり一般に知られてきませんでした。

  あまり知られておりませんが、弁護士の業務に関しては弁護士法という法律が存在し、その中で「弁護士は、基本的人権を擁護し、社会正義を実現することを使命とする」と定められています。
 そして、その具体化として、弁護士会は、消費者被害の救済、犯罪被害者・DV被害者支援、各種シンポジウムの企画等様々な活動を日常的に行ってきました。
 
 たとえば、今回の東北関東大震災についても、法律家としてできることとして、災害対策本部を設置し、義援金の募集や被災者を対象とした無料相談の企画検討等を行っております。

  最近は、司法改革の一環としての裁判員制度の実施や司法修習生の給費制問題などを通じて、弁護士の活動等に対する関心も高まってきていると思いますが、マスコミ関係者等からお話を聞かせていただくと弁護士会は、一般の人にとっては、まだまだ敷居の高い存在だと言われております。

  1年間という短い任期ではありますが、様々な活動・機会を通じて、弁護士会の活動をよく知っていただき、より一層身近で利用しやすい弁護士会の実現のため、微力ながら尽力していきたいと考えております。今後とも引き続き、関係者皆様方のご指導・ご鞭撻のほど宜しくお願い申し上げます。

シベリア抑留国賠訴訟 控訴審結審

本日、シベリア抑留国賠訴訟の控訴審が大阪高裁で結審いたしました。弁護団の事務局長をお引き受けさせていただいてからすでに3年あまりが経過をしました。この間15名の弁護団の先生方、67名の原告の皆様、多数の支援者の皆様に支えていただきました。来年1月18日が判決予定日として指定されましたが、抑留被害者・ご遺族の皆様の救済に繋がる判決となることを祈念するばかりです。

耳って何?

  耳は、音の情報をキャッチして大脳に伝える感覚器官です。
 音は耳介(いわゆる耳)で集められて鼓膜に届けられますが、鼓膜は音の大小や高低にあわせて振動します。

 うまくできているもので、中耳にある人体で最も小さい3つの骨が鼓膜から伝えられた振動を大きすぎるものは小さく、小さすぎるものは大きく調整します。
 そして、振動は電気信号に変換されて大脳に伝えられることになります。

 また、耳のもう一つの機能として身体のバランスを保つ働きが内耳に存在しています。
 めまいや乗り物酔いといった現象には、こうした内耳に存在する三半規管等が影響しているといわれています。

協力医との面談

今日は朝から協力医に面談に行ってきました。

協力医というのは、医療事故等医学分野が問題になっているときに、弁護士が意見を伺ったりすることに協力をしてくれる医師のことです。

多忙な医師が多いため短時間でこちらが聞きたいことをうまくまとめて伝えないとすぐに面談時間が過ぎてしまうため、事前の準備を頑張らないといけません。

ちなみに患者側弁護士に面談をして下さる医師はそれほど多くはいらっしゃらないので、本日面談をさせていただいた先生のところにも、他の弁護士からの相談案件のカルテが山積みになっていました。

協力医の皆さんは多忙な中ほとんどボランティア的に引き受けて下さっているのですが、今後協力医が増えていかないと特定の医師に負担が集中することになってしまいます。

弁護士が協力医まかせにすることを戒めないといけないことはもちろんですが、協力医を引き受けて下さる医師が増えるといいなぁと改めて思いました。

目ってなに?

 目は、物を見たり、光を感じたりする感覚器官です。
 目で捉えられた光や映像の情報は網膜で集約され大脳へ伝えられます。
 よく耳にする疾患として、白内障というものがあります。目のしくみはカメラと同じと理解しても良いと思いますが、目の中のレンズが濁ることにより、視力が低下するなどの症状が現れる病気です。
 もっとも多い白内障は老人性白内障で60歳代で70%の方に白内障による視力低下が認められるといわれています。
 白内障が進行した場合は手術による視力回復が検討されます。水晶体の濁りを取り除き、人工の水晶体(眼内レンズ)を移植する方法です。
 最近は日帰り手術も可能なほど技術が進歩していますが、他の基礎疾患をお持ちの方などの場合は、一定の入院が必要とされることもあるようです。
 手術の内容を聞くと日帰りというのはちょっと信じがたいようにも感じますが、医学技術の進歩はすごいものがあります。