1. 集団的自衛権についての権力者の”嘘” ~ その5
小笠原弁護士の“知っ得”

集団的自衛権についての権力者の”嘘” ~ その5

  わかりやすくなるかどうかはわかりませんが、たとえ話をします。

  1972年政府見解は、卑近な例でいうと、自動二輪車の運転(自衛の措置)は禁止していない、しかし、これまでの暴走経験(平和主義を基本原則とする憲法)から無制限には認められない、あなたには原動機付き自転車のみの運転(3要件を満たす自衛の措置)が認められる、だから1200ccのバイクの運転(集団的自衛権)は認められない、ということです。

 

  これに対し、高村試案は、自動二輪車の運転(自衛の措置)は認められている、変化する公共交通環境を踏まえると、原動機付き自転車だけではなく、500ccのバイクも、1200ccのバイクも運転できるとすべきである、ということです。

 そして、500ccであれ、1200ccであれ、自動二輪車であるから、その運転を禁止していないとする従来の政府見解の論理の枠内である、交通環境の変化に応じて解釈を再整理しただけである、というわけですね。

 
 論理的整合性を求めようとするのであれば、これまでの暴走経験から運転できる自動二輪車を原動機付き自転車に制限した、という論拠に立ち戻る必要があります。

 どうして暴走したのか、どうして制限されたのか、省みるということです。

 しかし、そうした暴走経験に立ち戻るのではなく、公共交通環境が変化したことを理由に、運転できる自動二輪車の範囲を拡大するわけです。

 そして、同じ自動二輪車じゃないか、これまで自動二輪車はよいと言ってたじゃないか、交通環境が変化し、原付だけでは不便になったんだ、これまでの見解の枠内だ、というわけですね。

  暴走経験によって制限されたことへの反省のないことがよくわかります。

    弁護士 小笠原 伸児