1. 集団的自衛権についての権力者の”嘘” ~ その13
小笠原弁護士の“知っ得”

集団的自衛権についての権力者の”嘘” ~ その13

 権力者が、憲法9条の重大な解釈変更であるにもかかわらず、基本的な考え方は変わっていない、解釈の整理に過ぎない、憲法の改正も必要ではない、というあからさまな嘘を吐いていることは何回も書きました。

 もうひとつ、権力者にとって重大な嘘は、新しい3要件が憲法上の明確な歯止めになっている、限定的である、国会によるチェックの仕組みもある、という嘘です。

 新しくなった三要件のうちの、集団的自衛権に関する部分は

 ①わが国と密接な関係にある他国に対する武力攻撃が発生し、これによりわが国の存立が脅かされ、国民の生命、自由および幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険があること

  ②これを排除し、わが国の存立を全うし、国民を守るために他に適当な手段がないこと

  ③必要最小限度の実力行使にとどまるべきこと

です。

  権力者は、集団的自衛権の行使を限定するために、「おそれがあること」から「明白な危険があること」へと縛りをかけたのだといいます。

  しかし、他国に対する武力攻撃によりわが国の存立が脅かされ、国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険があると認められるのかどうかは政府の総合的な判断によるとするのが、政府の説明です。

  存立が脅かされるとか、権利が根底から覆されるとか、明白な危険があるとか、厳格で限定的な要件だといいますが、要するに、その時々の政府の裁量で判断するというわけですから、フリーハンドを与えていると同じです。

  権力者は、自分の手足が縛られるのを嫌がるわけですね。

 

            弁護士 小笠原 伸児