1. 集団的自衛権についての権力者の”嘘” ~ その3
小笠原弁護士の“知っ得”

集団的自衛権についての権力者の”嘘” ~ その3

 1972年政府見解は、わが国も集団的自衛権を有しているとした上で、憲法上、その行使は許されないという、従来の政府の一貫した考え方を解説しました。

 

  では、どういう論理で集団的自衛権の行使は許されないとしたのか、ですね。

  まず、9条の戦争放棄、戦力の保持禁止を指摘した上で、平和的生存権や幸福追求権を論拠、わが国の平和と安全を維持し、わが国の存立を全うするために必要な自衛の措置をとることは禁止されていないと解釈します。
    わが国の存立を全うするために必要な自衛の措置は許されるというわけですね。

  その上で、しかしながらと展開し、平和主義を基本原則とする憲法が、自衛のための措置を無制限に認めているとは解されないとして、わが国の存立を全うするために必要な自衛の措置は限定されると解釈します。

 

  ここが大事な論理です。わが国の存立に必要な自衛の措置なら何でもできるというわけではない、平和主義の基本原則から自衛の措置も制限されるというわけです。

 そこから、次の3つの要件を満たす自衛の措置のみ憲法上許されると解します。

  第1は、外国の武力攻撃によって、国民の幸福追求権が根底から覆されるという、急迫、不正の事態への対処であること

  第2は、国民の幸福追求権を守るためのやむを得ない措置であること

 第3は、第1の急迫、不正の事態を排除するためとられるべき必要最小限度の範囲にとどまるべきこと

 

  もうおわかりですね。

 集団的自衛権は、他国に加えられた武力攻撃を阻止することをその内容にしていますから、第1の要件を満たさないので憲法上許されないという結論になるわけです。

 

    弁護士 小笠原 伸児