1. 盗難車に接触されケガをしたが、治療費、慰謝料は誰に請求できるのか
交通事故の相談

盗難車に接触されケガをしたが、治療費、慰謝料は誰に請求できるのか

Q.先日、交差点を横断中、盗難車に接触されて転んでケガをしました。
 治療費や慰謝料は誰に請求できるのでしょうか。
 
 
A.盗難車の自賠責保険に治療費や傷害についての慰謝料を請求できることは明らかです。
  
  また、盗難車を運転していた加害者本人に対しても、不法行為を行った本人として請求できます。
 
  問題は、盗難車の所有名義人に対して治療費などの損害を請求できるかです。
  被った損害が自賠責保険から支払われる金額を超えたり、盗難車を運転していた加害者本人に賠償に応じる資力がない場合、盗難車の所有名義人に請求できれば、被害の救済・損害の填補に役立ちます。
 
  理論的には、この問題は、盗難にあった車の所有者が自賠法3条の運行供用者といえるか、所有者が車を盗まれたことについて民法709条の過失があるといえるかという二つの面で検討することが必要です。
 
  裁判所の裁判例では、所有者が車のドアに鍵をかけていた場合には所有者の責任は原則として否定されています。
  他方、車の鍵をかけていなかった場合でも、それだけでは所有者の責任を認めていません。
  盗難時に車が置かれていた場所、管理の状況、盗難後事故までの時間・距離、被害届出の有無などが総合的に考慮されています。
 
  たとえば、国道に接した営業所の空き地に、キーを差したまま施錠せず2時間30分放置した車が盗まれ、10分ないし20分後に事故が発生したケースでは所有者の責任が認められています。
  一定の場合、所有者の責任も追及できる例です。