1. 悪徳商法⑨~敷金返還について
悪徳商法撃退10のケース

悪徳商法⑨~敷金返還について

Q.9
 マンションを引っ越した際、敷金15万円は返金されず、さらに畳、ふすま、壁クロス、床フローリングの全面張り替え代金として30万円を追加請求されました。特別に壊したり、汚したりしたところはないのですが、契約書には自然損耗分についても、賃借人が原状回復費用を負担するという特約が付されています。やはり、支払わないといけないのでしょうか。

      1 30万円を払わなければならない。

      2 30万円を払う必要はないが、15万円の返金は無理。

      3 30万円を払う必要はないし、15万円の返金も請求できる。

A.3

 解説 ・借り主が退去する時に建物をもとの状態に戻す義務を原状回復義務という。

    ・原状回復義務には、通常の使用をした場合の損耗(自然損耗)や年月が経つことによる劣化(経年劣化)などは含まれない。例えば、畳の日焼け、フローリングの色落ち、家具の設置による床やカーペットのへこみ等の修繕・取り替えの費用は貸主が負担することになる。

    ・一方、借り主の不注意や故意などによって損耗が発生した部分については、借り主が修繕費用を負担しなければならない。例えば、たばこで畳をこがした場合や、壁に棚等を取り付けた場合、住居の一部を不注意で壊した場合など。

    ・本件では、自然損耗分について借主負担とする特約が付されているが、そのような特約は「消費者の義務を加重する条項であって、消費者の利益を一方的に害するもの(消費者契約法10条)」にあたるので、無効とするのが最近の裁判例の到達点(京都地裁平成16年6月11日判決)。

   cf 更新料の支払義務について
       法定更新の場合に更新料の支払義務を否定(京都地判平16年5月18日)
         ・借家契約の更新には、合意更新と法定更新がある。
         ・法定更新とは賃借期間満了の1年前から6月前までの間に、更新しない旨の通知をしない限り、従前の契約と同一条件で更新したもの
          とみなす制度(借地借家26条)。
         ・この場合、期間の定めなき契約となり(同条但書)、家主はいつでも解約申し入れ可(民法617条)。但し、正当事由は必要(借地借家 法28条)。上記判決はこの点に着目したもの。
         ・更新料特約が消費者契約法違反か否かの争点は残った課題。