1. 賃貸住宅の敷金について
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賃貸住宅の敷金について

Q.家主は、敷金からどんな経費を差し引けるのでしょうか。

A.敷金は、家賃の滞納があったり、借家人が建物の一部を壊すなどして損害賠償責任がある場合に、家主が敷金をもってこれにあてるためのものです。特段の事情がない限り、全額返還すべきものです。

  ところが、家主の中に、新しく賃貸するための改装費・クリーニング代などを差し引いたり、さらに悪質な場合は、口実としか思えない金額を差し引くケースが目立ちます。
  家主が、別の人に貸すために必要な改装費は、賃借人に負担義務がないものであり、その費用は敷金から差し引くことはできません。

  一番問題になるのは、汚損にもとづく改装・クリーニング代です。
  常識を越えた汚損があった場合には、クリーニング代を差し引かれてもやむを得ません。壁や畳を殊更に汚したり、窓や襖を破ったりしたケースです。
 
  しかし、どんな部屋でも日時を経ると自然に古くなり、一定の汚損は発生します。したがって、通常の使用をして、自然に古くなって汚損したとしても、借家人に責任はなく、敷金から差し引くことはできません。

  現実には、敷金の大部分を改装費・原状回復費として差し引くケースが目立ちますが、特段の事情がない限り、新しく貸すための改装・クリーニング代は差し引くことはできません。

  金額が比較的少額で、裁判にまで訴えることなく、泣き寝入りする人が多いのにつけこんで、敷金を全額返還しない例が多く見られますが、最近、全額に近い金額の返還を認めた裁判例も増えてきています。
 
  少額訴訟手続など比較的簡易な裁判もありますので、泣き寝入りしないようにしましょう。