1. 借家の明渡し
相続関係の相談

借家の明渡し

Q. 私は父の代からの借家に妻と住んでいます。これまで自分の費用で何度か屋根や壁などを修繕しており、住むのには支障はありませんでした。ところが、家主さんは建物が老朽化したので明け渡してほしいと言っています。明け渡さないといけないのでしょうか。 

 
A. 結論から先に言えば明渡す必要はないと思われます。       
     父の代からの借家ということであれば、現在の借地借家法の前の旧借家法の適用があります。
   この旧借家法は現在の借地借家法と同様、賃借人の居住権を保護しており、貸主の解約申し入れには、正当事由が必要です。
   
    そして、建物の老朽化を理由とする場合、正当事由があると言えるためには、建物の傷み具合があまりにもひどく、人が居住して使用することができない程度に至っているか、その時期が迫っており、そのために大修繕をする必要があり、賃借人の明渡しに伴う不利益も大きくないことが必要であるとされています。

     本問の場合、これまでに、何度か屋根や壁などを修繕しており、住むのに支障はないとのことですので、老朽化していると言っても、人が居住し、使用することができない程ではないことは明らかでしょう。

    ただし、近年、建物の高度利用をはかりたい貸主が立退料を提供して、明渡しを求める場合があります。
   その場合、裁判所は、貸主、借主双方の事情、周囲の状況、老朽化の程度等を総合的に判断して、立退料の支払いと引き換えに明渡しを求める例があります。