1. 近隣トラブル〈住まいのはなし〉
住まいのはなし

近隣トラブル〈住まいのはなし〉

 簡単に転居することのできない、生活の本拠地である自宅で生じるご近所とのトラブルは、大変頭の痛い問題です。一人で抱えず、第三者に相談することも必要です。類型別に、いくつか見てみましょう。

 

〇騒音

 近隣トラブルで多いのが騒音の問題です。カラオケ騒音やテレビの音など、騒音が毎日のことであれば、大変苦痛なことになります。他方で、特に集合住宅など隣室や上階の生活音がある程度聞こえることはやむを得ないことです。

 そのため、法律上は騒音のレベルが、「社会生活において受忍することが一般的に相当であるとされる限度(受忍限度)を超えているか否か」という基準で違法か否かの判断がなされます。

 具体的には、環境基本法という法律の規定により、維持されることが望ましい基準が定められています。ここで定められている基準を大きく超える場合は、受忍限度を超える騒音として違法であると判断される可能性が高くなります。

 ただ、騒音の発生する時間帯、継続時間、住宅地なのか 工場地域なのか等の様々な要素により受忍限度は変わります。また、騒音の程度、頻度についても騒音の差し止めを求める側で証明していかなければなりません。この立証は非常に困難なので、話し合いでの解決が現実的であることが多いです。

 話し合いを行う前提として、騒音が起こる時間帯や、継続時間、どの程度の騒音なのかといった記録を付けておくことは大切です。また、騒音を客観的に計測する騒音測定器を貸し出ししている役所も多くあります。費用は掛かりますが、測定のための専門業者を入れて計測してもらうことも検討しましょう。

 最初は当事者間の話し合いとなりますが、市区町村の環境部等の騒音担当部署に相談をしてみるのも一つの方法です。騒音を客観的に計測する騒音測定器を貸し出ししている役所も多くあります。それでも解決が難しければ第三者を 入れての話し合いということで、簡易裁判所に民事調停を申し立てることが考えられます。その際には、前述の記録や騒音測定の数値が活用できるでしょう。

 

〇樹木

 近隣トラブルとして意外と多いのが、隣の家の庭の木の枝が自宅の敷地内に伸びてくる事例です。

 落ち葉の掃除も面倒ですし、切ってしまいたいと思うのもわかります。しかし、法律上は「隣地の竹木の枝が境界線を越えるときは、その竹木の所有者に、その枝を切除させることができる。」となっているため、越境部分のみであっても、こちらで勝手に切ってしまうことはできません。

 他方で、隣地の木の根が自宅の敷地内に進入してきた場合は、法律上は「隣地の竹木の根が境界線を越えるときは、その根を切り取ることができる。」と定められており、 自己の判断で切ることができます。

 

〇空き家問題

 相続人がいない、全国に散らばっているなど、管理する人がおらず長期間空き家となっている住宅も問題となっています。そのため、2015(平成27)年には空家等対策の推進に関する特別措置法が施行されました。

 隣家の空家等でお困りの場合は、市町村の所轄部署(市町村によって異なります)にまずは相談してみてください。市町村が、そのまま放置すれば著しく保安上・衛生上危険・有害となる特定空家等と判断した場合などには、立入調査や所有者等の特定、所有者等への助言、勧告などを行ってくれる可能性があります。

 ただし、市町村が調査した所有者等の情報は、通報した人には当然には知らされません。まだそれほど建物の朽廃が進んでいない場合や、市町村の勧告等にも応じず放置されたときには、こちらから調停や訴訟等の法的手続きを取っていく必要があります。その場合は、弁護士にご相談ください。

 

〇互いの立場に立って

 こうした問題以外にも、日照、景観、プライバシー等、所謂近隣トラブルと言われる事象は少なくありません。

 近隣トラブルは、互いの関係がその後も続いていくこと、立証が難しい問題が多いこと等から解決が難しい問題と言われています。どうしても解決しないときは、自衛策を講じるなどの手段を採った方が時間的・費用的に早期解決となることもあります。いずれにしても、お隣同士のことなので、互いの立場に立って、感情的なやりとりに発展しないように注意することが大切です。