1. 物損事故の場合〈交通事故のはなし〉
交通事故のはなし

物損事故の場合〈交通事故のはなし〉

物損は任意保険のみ

 車に乗る場合に加入が義務づけられている自賠責保険は、人身事故による損害の補填を目的とするものですので、対物事故による損害は対象外です。対物事故による損害も対象としようとすると、任意保険に入るしかありません。その保険は、対物賠償責任保険と車両保険があります。事故を起こしてしまい他人の財物を傷つけた場合の損害を補填するのが対物賠償保険で、自分の車(被保険自動車)が傷ついた場合の損害を補填するのが車両保険です。

 

対物賠償保険・賠償の範囲

 対物賠償保険では、「他人の財物」を「滅失、破損又は汚損」した場合の損害が対象ですので、盗難や遺失の場合は含まれません。賠償の範囲は、相手の車を傷つけた場合、その事故により修理を必要とすることとなった修理代が対象となります。

 ただし、気をつけておかないといけないことは、修理方法の相当性が認められない場合には修理代全額が損害とは認められないこともあります。また、修理代が事故に遭った車の価値を超えてしまう場合には、いわゆる全損として、事故直前の車の価値相当分の賠償が上限になります。つまり、通常であれば、同レベルの新車購入費用までの賠償を受けることはできません。ただ、特殊な車両で市場性が無い場合や一定のプレミアがついている場合には損害の算定が難しくなり、中古だからといって購入価格より安くなるばかりとは限りません。なお、全損のため買替えを行った場合、買替えのための必要な登録費用、車両証明手数料、納車費用、廃車費用の内の法定手数料や一定のディーラー報酬部分、同程度の中古車取得に必要な自動車取得税、被害車両の未経過期間の重量税は損害と認められますが、買替後の自賠責保険料や重量税などは認められません。

 他方、修理が相当な場合でも、完全には修復しきらない場合や事故車扱いとなることから、以後評価される価格の低下が生じることがありますので、修理代以外にも評価損が賠償の範囲となることもあります。

 また、修理のために使用ができない場合には、その間他の車両を調達して使用することになりますので、代車費用が損害となります。ただし、事故にあった車と同レベルの車両の代車費用が認められるわけではありませんし、修理に必要な期間分しか認められません。

 

車両保険・免責事由に要注意

 車両保険の場合には、対物賠償保険以上に免責事由に注意が必要です。故意に傷つけた場合や無免許、酒酔い、麻薬等吸引の場合には、自招事故であり反社会的な行為でもあるので保険金の支払を受けることができません。保険によっても免責事由が異なりますので、よく調べることが必要でしょう。